佐藤俊樹「ウェーバーの社会学方法論の生成1——社会科学は何をする?」補遺

内容的に興味深かったので、個人の備忘にまとめました。
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佐藤俊樹 @toshisato6010

『書斎の窓』に載せた論考に関して、個人的に質問されたのでお答えしておきます。 M.Weberの因果同定手続きが反事実条件法を使ったもので、それが明確に述べられたのは(「客観性」論文ではなく)マイヤー批判論文であることは、過去に何回も(再)発見されています。

2016-07-09 04:59:25
佐藤俊樹 @toshisato6010

私が追跡できた範囲内では、英語ではJon ElsterのLogic and Society(1975年、John Wiley & Sons)、日本語では市井三郎「社会分析の基礎的諸問題」(『哲学的分析』第三章、1963年、岩波書店)が一番旧いものでした。

2016-07-09 05:00:42
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佐藤俊樹 @toshisato6010

こうした専門的な学説史については、文中にあげた佐藤俊樹「『社会学の方法的立場』をめぐる方法論的考察」『理論と方法』29巻2号、同「一九世紀/二○世紀の転換と社会の科学」内田隆三編著『現代社会と人間への問い』(せりか書房)の方で、簡単にですが、述べてあります。

2016-07-09 05:01:21
佐藤俊樹 @toshisato6010

あと、このアカウントでも呟いたような気が……。時期は2014年の8月ごろ。どこかにまとめている奇特な方がおられたら、そちらで確認できるかもしれません。当人の記憶はすでにあやふやで、もしかしたら呟き忘れたかもしれませんが(^^;;。

2016-07-09 05:02:05
まとめ J・フォン・クリースとマックス・ウェーバー補遺(因果分析の方法論を中心に) 以前もまとめられていた「J・フォン・クリースとマックス・ウェーバー」(http://togetter.com/li/668538)や「toshisato6010氏による「ウェーバーを挟むかたちでの実証性/実定性の転換」という仮説の彫啄過程」(http://togetter.com/li/679576)に関連する一連の書き込みを、個人的な備忘としてまとめました。 冒頭で言及されている書評については、まだ書誌情報が確認できませんでした。 2595 pv 2
佐藤俊樹 @toshisato6010

なお、この追跡の最初の手がかりは北田暁大さんに教えてもらいました。こういう作業は最初の手がかりの良し悪しで全く効率がちがってくるので、助かりました。上の論考ではそういう謝辞までは書けなかったので、ここであらためて感謝いたします。

2016-07-09 05:02:51
佐藤俊樹 @toshisato6010

例えば市井三郎さんは「「客観的可能性」(objektive Moeglichkeit)という用語で歴史における「反事実的条件命題」の成立根拠と重要性とを、最初に論じたのはマックス・ウェーバーである」とはっきり述べています(前掲、注1、85-86頁)。

2016-07-09 05:03:43
佐藤俊樹 @toshisato6010

こうした先駆的な業績が適切に評価され記憶されていれば、私がぐちゃぐちゃ書く手間も省けたし、Weber自身が参照指示したRickertやvon Kriesの論考を調べずに、Weberのテキストだけから術語の意味を類推していく、という奇妙な学説研究もさけられたのではないか、

2016-07-09 05:05:08
佐藤俊樹 @toshisato6010

と思います。これらの学説研究史に興味があれば、やはり上記の二論考を参照ください。 なお、市井さんの論考は『岩波講座現代5』の赤上裕幸「学問としての「歴史のIF」」でも紹介されています。赤上さんはウェーバーについてはふれておられませんが、市井さんの再評価は私も嬉しく読みました。

2016-07-09 05:05:51
佐藤俊樹 @toshisato6010

他に旧いものでは、杉森滉一「『客観的可能性』としての確率」『岡山大学経済学会雑誌』5巻1号(1973年)も参考になりました。その他、最小限の参照すべき文献リストと関連注記は、先ほどの二つの論考にあります。専門家の方はぜひこちらも参照してくださいませ。

2016-07-09 05:06:52
佐藤俊樹 @toshisato6010

ただし、法学および法学史に関しては、Radbruchの最初の論文以外は手が回りませんでした。なので、その方面での重要な文献はドイツ語・日本語ともに完全に抜け落ちております。あらかじめ、あやまっておきますm(__)m。

2016-07-09 05:07:37
佐藤俊樹 @toshisato6010

(大越先生が退任される前だったら、こっそり教えてもらうことができたかもしれないと思うと、残念……) 法学系については今後も連載ではほとんどふれられないので、簡単にコメントしておくと。

2016-07-09 05:08:14
佐藤俊樹 @toshisato6010

von Kriesの適合的因果論(法学でいう「相当因果関係説」)が法学で特に記憶されたのは、責任帰属という形で因果を決定論的に取り扱わざるをえず、それゆえ、頻度や確率の形でしか観察されないデータと因果との間の接続を主題化せざるをえなかったからではないだろうか。

2016-07-09 05:18:07
佐藤俊樹 @toshisato6010

Weberもその方向で考えていたわけだが、(法学以外の)社会科学では、因果というとらえ方自体を排除するという解決策がしばしば図られた(これについては次回で少しふれる予定)。計量分析では特にそうで、2×2クロス表の検定に関してはこの間ここで呟いた。

2016-07-09 05:22:18
佐藤俊樹 @toshisato6010

Judea Pearlの『統計的因果推論』(黒木学訳、共立出版)はまさにこの、統計的な観察データと因果の決定論的な取扱いとの接続を主題としており、法学の専門家で興味のある方は、こちら(原著題名はずばりCausality!)を直接読まれることをお奨めします(^^。

2016-07-09 05:24:54