不知火に落ち度はない ５１（不知火&嵐）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「不知火。用意いいか」 「はい、既に準備済みです。運転よろしくお願いします、司令」 朝。俺は私服姿の不知火を車に乗っけた。 こいつは今日は休暇。俺はというと、野暮用で都市部に用意があるんだ。 既に司令部には早霜と、北上様を配備済みである。 #不知火に落ち度はない

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陽炎でも良かったんだが、こないだの一件もあるしな。 それに変に特徴的な奴なので、動じない人物である必要がある。 長門でもいいんだが、あいにく今日外で哨戒だ。 たまのお楽しみを邪魔したら、後が怖い。 と、いうわけで新作ゲームに飽きた北上様の出番なのだ。 #不知火に落ち度はない

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「今日は黒潮とか一緒じゃねえのな」 「一人です。たまには単独の時間も必要かと」 恰好は夏向けワンピの服装。 そう、以前デートで着込んでたやつだ。 1年経過したら実用に変わるんだな、その手の服。 女子の考えとは概ねそんなものらしい。 #不知火に落ち度はない

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「それで、お前はショッピングでもすんの？」 「気になりますか？」 髪の毛下ろしてるし、そりゃ気になるわ。 だが、口にしてやぶへびるのもあれだしな。 「いんや。俺はクソ会議だから、合流は夕方ぐらいになるぞ」 「そうですか。では夜はレストランでも」 #不知火に落ち度はない

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「え。お前と？」 「不知火以外の誰かが乗っていますか？」 念のためミラーを見るが、早霜が映ったりはしてない。 屋根の上をこづくが、ニンジャの気配もない。 「お前と俺だけだな」 「つまりそういうことです。選定はお任せ下さい」 あれ？行動決められてる？ #不知火に落ち度はない

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「二人っきりってやつ？」 「他に誰かと予定でもありますか？」 うん。なんか速攻で作りたくなってきた。 「そいやカレーが食いたいな」 「それは要請ですか？」 おう。要請。 スープカレーとか相当食いたい。 そんな夏だし相当食いたい。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「では、候補に数えておきます」 「おう、任せた。元秘書艦殿」 白ワンピにカレー。これで会話の間が持たなくなることはない。 「ちなみに司令」 「おう。何かしら」 「不知火の服装を見て、カレーが食べたいと言ったなら、後で高く付きます」 「えっ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「服装への嫌がらせで食事を決めるなどというくだらない思いつきで、不知火の時間を浪費させたならば対価がもれなく」 「わーわかったわかった、チェンジチェンジ。好きにしていい！」 その言葉に、にこっと笑う不知火。 あ、久々にすっごい良い笑顔だこれ。 #不知火に落ち度はない

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「それでは司令のおごりで」 「マジですか」 うわー、うわー。 どこ？ どこに連れてけっつーの？ 「この間の二見提督の件」 「どこへなりとも連れてってやる。安心して予約入れろ」 くっそ。王手打たれたぞ。 あーそーだよ！ フレンチだったな！ #不知火に落ち度はない

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楽しげに、予約を入れ出す不知火を横目に俺は車を進める。 すると横から手が伸びて、ラジオのスイッチを入れた。 珍しいこともあるもんだ。 「司令はいつもラジオが必要でしょう」 「まあな」 お前は雑音嫌いなのにな。 相当機嫌がいいらしい。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

これなら一服も許される。 そう判断した俺は、煙草に手を伸ばし。 「ぬいチョップ」 ぱしこん。 煙草が一発でたたき落とされた。 前よりも角度、鋭さ共にアップしている。 どうやら相当鍛えコミ度が上昇している。 そいや去年より体つきが──おっといかん。 #不知火に落ち度はない

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「車内禁煙です。毎度司令の脳味噌はフラッシュRAM並ですね」 「天気がいいと、煙草が美味いんだ」 「理屈に合いません。却下します」 流れるBGMは「波乗りジョニー」 今すぐクソ会議を投げ捨てて、不知火とデートしたくなるような一曲であった。 #不知火に落ち度はない

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都市部の一角、丁度いい感じに昭和の香り漂うカフェに俺は居る。 向かいの席には不知火が座り、モーニングトーストとサラダのセットがある。 ドリンクはミックスジュースでキメたあたり、味覚は相変わらずお子様らしい。 俺？ 炭焼きコーヒーと玉子サンド。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「司令の会議はだいたいいつ頃終わると思って良いでしょうか」 「わからん。ギンブチが講師だしな」 「講師？」 あ、そこ突っ込まれた？ パンに薄くバターを塗る作業はもういいのか？ 結構堂に入ってて、見てて楽しいんだけどさ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「俺にとっちゃつるし上げの会議っつーか、講義なんだよ。今日はな」 それで、貴重な任務時間を切り上げて、俺は参加しなきゃならんのだ。 なお、これは有資格者だけの強制参加ミッション。 俺は資格を喪失気味だがお構いなしにギンブチが呼びやがった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「作戦指揮の問題でしょうか。現状呼び出されるほどでは無いと思いますが」 「俺も指揮でヘマって呼ばれたわけじゃない」 玉子サンドを口に運びつつ、言葉を返す。 おっほ。厚焼き玉子サンド、これ超うまい。 甘めの卵焼きにマスタードマヨがいい仕事してる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それでは、何の関係なのでしょうか」 「お前の頭悩ます問題じゃない。俺の問題」 トーストをかじりながら言う不知火に、そう返す。 「不知火は確かに既に秘書艦ではありません。が──」 「なんだ？」 「司令のサポートをしないと言った覚えもありません」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「お前は今日ショッピングなんだろう？ 非番は大事に使えよ」 「そうですね。非番をショッピングなどに費やすより、司令に貸しを作る方が有用です」 わー。ホント歯に衣きせねえな不知火。 いいから街を女子力で満たして来いよ。 俺はギンブチにつつかれてるから。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それで、今なら有能な元秘書艦が、このレシート一枚で司令への追求をシャットアウトしますが」 「不知火。お前ね」 チラっと見えるぞ。そのノーブラワンピスタイル。 俺は目線をそらしちゃいるが、後一歩で見えますぞ。 あー、しかしどうしようか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

不知火は俺の『講義』に興味を持ってしまったらしい。 そして皮肉にも、不知火は聞く資格がないわけじゃないんだ、これが。 秘書艦勤務年数が一定以上ある場合は、有資格者と見なす、とあるわけですし。 逆に俺一人が座ると、超浮くんだあれ。 魔女裁判現場かあれ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「何か迷うことでもありますか？」 「……レシート。貸せ」 もとから奢りのつもりだったしな。 そんじゃ、非番に働いて貰うとするぞ。元秘書艦殿。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「速攻でその服着替えて制服な。ワンピ姿じゃ注目間違いなしだ」 「不知火は一興に構いませんが、了解です司令」 予想通りというか何というか。 不知火は、陽炎型の制服もしっかり持ってきていたご様子だった。 100点やりたいぐらいのそつのなさであった。 #不知火に落ち度はない