ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ

理不尽が道理を殺す。それがインガオホー也。 ならば、稚拙な希望が生み起こすインガオホーとは? 入江の魔人シリーズとマスクドハンターズが一人仮面アーチャーとのコラボ外伝作品!
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

入江の魔人&仮面アーチャーコラボ外伝「ブレイド・オブ・アングリー・ザット・ブレイク・ザ・シャルロー・ホープ」#1

2016-07-11 15:04:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『…それでは、本日の鎮守府天気予報です。北方前線は数日前から停滞する巨大低気圧の影響で、今日も天気は大荒れでしょう。繰り返します。本日の天気は…』 1

2016-07-11 15:05:04
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その日も、吹雪吹き荒れる大時化の日であった。白い波濤と白い吹雪が混じり合い、擬似的なホワイトアウトを形成する程に。この様な日に船を出す者はいない。それは人類の制海権を死守する鎮守府が一つ、幌筵泊地においても同様であった。 2

2016-07-11 15:10:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

小康状態にある北方海域戦線の最前線基地とは言え、普段はそれなりに人の活気のある幌筵であるが、ここ数日続く大時化により日常的に行われている哨戒任務や輸送任務すら取り止められ、気だるげなアトモスフィアが艦娘や提督達の間に蔓延していた。 3

2016-07-11 15:15:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「はい、どいたどいたどいた!」だらけきり、屯するばかりの艦娘を押しのけ、廊下を走る少年が一人。小柄ながらも、目が覚めるような鮮烈な紅の長髪が一際目を引く。艦娘達は視線だけで彼の背を追うが、直ぐに興味を無くした。 4

2016-07-11 15:20:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

提督となる唯一無二の条件は艤装管制を司る妖精を視認し、指示を与えられること。故に彼のような年若い少年が提督になることは然程珍しい物ではない。一通り廊下を走った少年は目の前を歩く桃色の髪の女の姿を認め、子供らしい元気に溢れた声をかける。「おーい、明石さーん!」「んん?」 5

2016-07-11 15:25:04
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

明石は振り向き、少年の姿を見ると同時に少しだけ眉を顰めた。そして溜息をつき、声に応じる。「何でしょうか、聖良少将」聖良と呼ばれた少年提督は、邪気の無い笑みを浮かべ、口を開いた。「“彼女ら”は元気」「ワー!ワー!」明石は慌てて聖良の口を両手で塞ぎ、辺りを忙しなく見渡した。 6

2016-07-11 15:30:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

近くには二人以外の人影は見えなかった。明石は胸を撫で下ろし、キッと聖良を睨み付けた。「聖良提督」 「ふぇ…」聖良は明石の放つ憤怒を受け、聖良は怯えて後退した。やがて明石は怒りの矛を収め、溜息を吐き言った。「あのですね…理解してます?今のお互いの立場」「えぇと」 7

2016-07-11 15:35:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「こんなことをして…バレたら貴方も私も死刑じゃすまないんですよ…それなのにあんな呑気に」明石はヒステリックに頭を掻きむしった。聖良は怯えた様に、反射的に謝る。「ご、ごめんなさい」「謝るんなら初めから頼まないでください…ほら、行きますよ」 8

2016-07-11 15:40:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

明石は再び深く溜息を吐き、聖良を連れて歩き出した。人気のない廊下に二人分の足音がコツコツと響き渡る。聖良は申し訳なさそうに明石の様子を伺いながら、おずおずと歩き続ける。二人は階段を降り、昇り、そしてまた降りた。廊下は段々と薄暗くなり、外のブリザード音が地鳴りの如く低く響く。 9

2016-07-11 15:45:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

やがて二人は厳重に封鎖された扉の前に辿り着いた。扉には「明石専用研究所」とショドーされた褪せた紙が貼り付けられている。「ん?」ふと、聖良は振り向き、背後を見た。そこに広がるのは薄暗いコンクリート通路のみ。「どうしました?」明石が扉を施錠する南京錠の鍵を取り出しながら問う。 10

2016-07-11 15:50:04
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「…気のせいかな?」聖良は首を捻り、明石の方へと向き直る。明石は腑に落ちぬ表情の聖良を訝しみながらも開錠し、扉を開けた。中は研究所とは名ばかりに、机が一つ置かれているだけの質素なものであった。中に居た黒い集団が一斉に視線を向けた。 11

2016-07-11 15:55:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして、その中の一人が立ち上がって聖良を指差して叫んだ。「アー!提督=サン!」「やぁ」聖良は片手を上げ、にこやかに挨拶をした。集団の者が一人ひとり立ち上がり、聖良の元に駆け寄った。その光景を見、明石は眉を顰めた。その顔に血の気は無い。 12

2016-07-11 16:00:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

それは無理もない事であった。何故ならば、駆け寄る者達は皆、一様に白磁めいた白い肌と黒い装甲を身に纏っている……即ち、深海棲艦なのだから!「ヤットキタ!」「遅カッタナ!」「アノ時ハ助ケテクレテアリガトウ!」「私達、何時マデココニ居レバイイノ?」「モウスグ出レル?」 13

2016-07-11 16:05:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

聖良はたちまち深海棲艦達にもみくちゃにされる。彼の者達の顔に敵意は無い。むしろ聖良に対し口々に感謝の言葉を述べるほどだ。果たして何があったのか?その為には、まず彼の者達が何処から来たんかを説明せねばならない。 14

2016-07-11 16:10:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

この深海棲艦群と聖良提督が出会ったのは北方海域の一角である。その時、聖良は自身に課せられた哨戒の最中であり、当然最初は艦娘に撃沈を命じるはずであった。だが、聖良は感じ取った。深海棲艦達の背後から、己にとって最も忌むべきものの気配を。“楔”の気配を。 15

2016-07-11 16:15:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

聖良提督はこの世界の人間ではない。彼はリカルドとはまた違う狩人の世界からやってきたモンスターハンターである。彼は父と母の仇を追う為に、自力での次元移動を繰り返していた。仇の手がかりはただ一つ。触れたものを狂わせる禍々しき“楔”である。 16

2016-07-11 16:20:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

聖良がこの世界に降り立ち、提督業に従事するのも、この世界に“楔”の気配を複数感じ取ったからだ。そして何よりも、艦娘達の報告から深海棲艦達から恐怖に怯える声と助けを求める声を聴いた事が決定的であった。聖良は艦娘に命じ、彼の者達を助けた。 17

2016-07-11 16:25:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

“楔”を打ち込まれた深海棲艦は討ち漏らしたが、目下捜索中である。 そして聖良は明石と通じ、この打ち捨てられた秘密の研究所に深海棲艦達を匿ったのだ。「ごめんね、まだ出してあげられないんだ」「エー」「けど、絶対に。絶対に君達を元居た海に帰してあげるから」「ホント?」「ホントカ?」18

2016-07-11 16:30:09
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「本当だよ。約束する」聖良は強く頷いた。深海棲艦達は安堵の笑みを浮かべる。それを見て、聖良は内心で確信を深めていった。深海棲艦との和解の可能性を。だが、聖良は気付いてはいなかった。背後で怯える明石の表情に。そして、この光景を盗み見た第三者の存在に。 19

2016-07-11 16:35:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「へぇ、あの研究所に深海棲艦を」「はイ」暗い一室の中、椅子に座る一人の男の前に傅く異形の戦士が一人。男の胸には幾つもの輝かしき勲章が並ぶ。男の名は江見悠。幌筵基地を実質的に支配する上級大将である。そして傅く戦士の名はセンダイ。江見の誇る優秀な諜報工作員である。 21

2016-07-11 16:40:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

センダイは先程見たままを江見に伝えていた。即ち、聖良が深海棲艦を匿っていた光景の一部始終を!「ふぅん…特に面白くなさそうな子だと思ってたけど」江見は手元の紙を弄びながら呟く。紙は「聖良紅牙」の名が記された人事経歴書であった。江見はつまらなさそうに紙上を眺める。22

2016-07-11 16:45:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

机の上に投げ捨て 「中々面白いじゃあないか」と言った。「いカが致しマしョう?」傅いたままセンダイは問うた。江見は顎に手を当て、わざとらしいまでに悩む。センダイは主の指示を待った。やがて江見は深く頷き、指示を下した。「うん、別にどうでもいいかな」 23

2016-07-11 16:50:05
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