ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【6:アクセラレイト】 #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOOOM……DOOOOOM……大地が鳴動し、風が吠えた。シルバーキーは窓を開け放ち、朧なオヒガンの境界を見た。「何だ!?」現世と半ば切り離されたこの場所に届くほどのなにか巨大な……破壊的な現象が。「何?」車椅子のネザークイーンが肩越しに声をかけた。「一体どうしたの!?」

2016-07-12 22:45:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺にもわからねえ」シルバーキーはネザークイーンを振り返った。「そもそも……その……ここはオヒガンだ。通信ができるとはいえ」10月10日、シルバーキーはジュエルを用いて肉体を形成し、この世に帰還した。その際に生じた歪みは巨大だった。彼自身の存在がオヒガンに繋がる門となったのだ。

2016-07-12 22:52:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スターゲイザーとキュアを退けた後に再び行われたアマクダリ侵攻の折、シルバーキーは賭けに出た。彼の出現のせいで現世の礎を半ば失い不安定になっていたニチョーム地域を揺さぶり、現世から切り離し、安全を確保したのだ。通常時であれば到底不可能な力技。一度きりの策だった。

2016-07-12 22:59:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

外へ逃れ出たフィルギア、ヤモトの尽力の末に、ポータル・ジツの双子を迎え入れるまで、現世へ帰る道筋すら実際無かった。しかしそうした困難を代償として、絶対の安全を確保していたのだ。カラテ鉱石通信を通して外部と連絡を取り、ヤモトらはツキジに駆けつけてニチョームとポータルを繋いだ。

2016-07-12 23:04:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニチョームのシマナガシ・ニンジャ達はポータルをくぐってツキジへ移動し、アマクダリ戦力と戦闘した。奇策に奇策を重ねた奇怪なゲリラ戦術は一応の成功を見た、筈であった。「この揺れは何?」ネザークイーンが問いを重ねた。シルバーキーの額を汗粒が流れ落ちる。街を囲む境界が揺れ、ノイズが走る。

2016-07-12 23:06:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOOOM!「アブナイ!」ネザークイーンはシルバーキーの腕を掴み、車椅子を支えた。シルバーキーは呻いた。「わかるのは……無茶苦茶な衝撃……破壊……ダメージ……そういう事象が起こってるッて事。それも、物理とコトダマ。両方でだ」「それって……」「何だ」シルバーキーは大通りを見た。

2016-07-12 23:11:37
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「何?」「どこかで見覚えが……」シルバーキーは手をひさしにして、大通りの真ん中に出現した胡乱な質量を見た。小舟だ。小舟がアスファルトに斜めに突き刺さっている。まるで座礁しているかのように。小舟の付近にニンジャの影があった。海賊帽を被ったニンジャはシルバーキーを見返し、手を振った。

2016-07-12 23:13:54
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第三部最終章「ニンジャスレイヤー・ネヴァーダイズ」より

2016-07-12 23:14:15
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「ヨオ、ヨオ!お迎えご苦労さん!」海賊帽のニンジャは大通りへ走り出たシルバーキーに向かってかしこまったオジギをしてみせた。「ドーモ。カロン……」「ドーモ。コルセア=サン」「チョージョー。俺を覚えとったか、シルバーキー=サン」「ここにサンズ・リバーはねえぞ」「いや、まったく!」

2016-07-12 23:18:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOOM!「ヌウーッ!」シルバーキーは頭を押さえ、よろめいた。「いかんな」コルセアはシルバーキーに近づいた。「平気だ」シルバーキーは首を振り、「それより何故あンたがここに居る」「奇妙だ」コルセアは低く言った。「とにかく、お前という錨にしがみつき、遭難を逃れた。危うかった」

2016-07-12 23:21:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

胡乱なニンジャは呟き、周囲を見渡した。「落ち着かんな。陸……いや、孤島というべきか……」そこでハッと手を叩き、「いや、待てよ、となると、俺は現世の付近に臨んでおるわけだ。待て。何年ぶりだ?こんな格好で俺は流行にズレとらんか、ええ?」「その……」「いい。落ち着いたわい。異常事態だ」

2016-07-12 23:26:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOM!今度の轟音と震動は大きい!「グワーッ!」シルバーキーは膝をついた。その輪郭が砂嵐めいて乱れ、目鼻から血が溢れ出した。DOOOM!DOOOOM!「アバーッ!」「いかん!」コルセアはシルバーキーに触れた。「よいか、ここだ!お前はここだ。ここだぞ!この……何だ、街におる!」

2016-07-12 23:29:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「AAAARGH」シルバーキーは必死で堪えた。コルセアはシルバーキーに繰り返し呼びかけた。「いかんな。いかんぞ」彼はシルバーキーに肩を貸し、ニチョーム本拠地に向かって歩いた。DOOOOOM!「お前はシルバーキーだ!わかるか!」「俺はシルバーキーだ」「そうだ、わかるな!頑張れ!」

2016-07-12 23:31:33
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「ちょっと!いけない!」ネザークイーンが自分の車椅子を蹴倒し、走り出てきた。難儀しながら、二人はシルバーキーを屋内へ引きずり込んだ。DOOOOM……「ああ。アア。畜生。嗚呼」激しい震動の中、シルバーキーはやがて意識を取り戻した。「もう平気だ」自らの力で立った。「びっくりしただけ」

2016-07-12 23:34:41
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「何か飲むわね」ネザークイーンがシルバーキーを気遣った。「いや。マジで平気だ」シルバーキーは倒れた車椅子を起こした。「こう……耐え方つうか……掴んだ。多分な」彼らはエレベーターを用いて元の場所へ戻った。エレベーター内で、コルセアはネザークイーンとやや怪訝なアイサツをかわした。

2016-07-12 23:39:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「悪いな。俺にも何がなんだかわからんのだが」エレベーターが開き、話しながら廊下に出たコルセアは、窓の外の光景に足を止めた。そして呟いた。「何がなんだかわからん」ネザークイーンとシルバーキーは彼の視線を追い、ニチョーム上空を見た。逆さのキョート城を。

2016-07-12 23:43:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOOM……再びの震動。時空が渦を巻き、黒い稲妻が縦横に走った。間違いなく、この天地鳴動に伴って現出した光景だった。「まずあンたの舟が座礁し、次にキョート城が上空に出現した」シルバーキーは呟き、いまだ溢れる血涙を繰り返し拭った。「ワカル」「あれは?」ネザークイーンが指差した。

2016-07-12 23:47:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

大通りの先、障壁が波打ち、そこから奇怪な萎びた男が進み出た。ユーレイでも見ているかのようだった。三人が見守る中、その者はやおら両手を掲げ、キョート城を見上げた。「アマクダリ?」ネザークイーンが呻いた。今現在、ニチョームに迎撃可能なニンジャ戦力は無い。「違う」シルバーキーが言った。

2016-07-12 23:49:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あいつ……あいつはネクサスだ」シルバーキーは呻くように言った。「奴は……ザイバツ・シャドーギルドのニンジャだ。何故あいつが」「イヤーッ!」萎びたニンジャは、その姿からは想像もつかぬ大音声で叫んだ。障壁がバチバチと音を立てた。DOOOOM!そして鳴動!障壁が……流れ落ち、消えた。

2016-07-12 23:52:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニチョームは闇に包まれていたが、直前までと明らかに違う、自然の夜闇だった。ドクロめいた月が黄金立方体の横に見えた。凍てつく風を伴い、雪が吹き込んできた。しかしキョート城はいまだ逆さに、ニチョーム上空にあった。萎びた影は地面に頭をつけ、祈るように両手を合わせた。

2016-07-12 23:56:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これ……」ネザークイーンが青ざめた。「ああ」シルバーキーは拳を強く握った。何が理由か、すぐにはわからない。しかし、ニチョームが強制的に現世に引きずり出された事は確かだった。もはやニチョームはオヒガンに切り離された隠れ家ではありえない。DOOOOOM!天地が鳴動した。

2016-07-12 23:58:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

雪が、01の風が、悲鳴が、喧騒が飛び込んで来るなか、ネクサスは突っ伏したまま、叫んだ。「この時は本意にあらねども!」DOOOOM!DOOOOOM!「出でませい!」応えるように、上空のキョート城からニチョームの大通りに、黒い稲妻が繰り返し落ちた。一人。また一人。ニンジャが出現する。

2016-07-13 00:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「下がれ」シルバーキーはコルセアとネザークイーンを振り返り、陰へ潜むよう促した。彼はこめかみを押さえ、建物内の人間に言葉を伝えた。(他の皆も。様子を見に外に出たりとか、絶対ダメだ)念話を伝えてから、不意に彼は訝しんだ。既にここは現世だ。間違いない。念話は異様なまでに容易だった。

2016-07-13 00:06:51