「大学で氷の研究をしています」雹のサンプル提供を呼びかけるXユーザーに研究内容を聞いてみた

知れば知るほど奥が深い雹のこと
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X(Twitter)で、あるユーザーが投稿した雹(ひょう)のサンプル提供に関する「お願い」が話題になっている。

きっかけは2024年4月16日、ウェザーニュースの公式アカウントが報じた雹に関するニュースが起点だ。兵庫県南部などでゲリラ雷雨が発生し、局地的にゴルフボールほどの大きさの雹が降ったと投稿された。

こちらのニュースに対し、「雹のサンプルが必要です」と提供を呼びかけたのが、北見工業大学の大学院生うっしー(@SnowiceKitami)さん。「私は大学で氷の研究をしており、今回の雹の内部構造を調べたいと思っています」というコメントと共に投稿したポストには、4.8万いいねを超える大きな反響となった。

X上では実際に落ちてきた雹を冷凍保存しており提供可能であることを伝えるユーザーや、雹の大きさが分かるようにメジャーを並べた画像を提供するユーザーなどの反応があり、4月19日時点で20件ほどの提供の申し出があったという。

ところでうっしーさんが行っている「氷の研究」とはどのようなものだろうか? 本人に詳しく聞いてみた。

どのメッセージからも「協力したい」という気持ちが伝わってきた

「雪と氷の研究」の内容を教えて下さい。

私の所属する研究室は「雪氷学」という分野で、雪や氷や寒さに関する研究をしています。その中で、私は修士論文のテーマとして「湖の結氷」について研究を行っています。

近年、多くの湖で結氷期間(湖面が氷に覆われた期間)が短くなっていることが指摘されています。そこで国内にある湖の結氷状況が何が原因でどのように変化しているのか、将来はどのように変化するのかについて調査しているところです。

また、それとは別に「冬季の歩行者転倒事故」についても調べています。凍結した路面で起こる歩行者転倒事故は、時に命に関わります。転倒事故が多発する日はどのような気象条件で発生しており、事前に予測することはできないかという点についても研究しています。

雹のサンプルからはどのようなことが分かるのでしょうか?

特に今回のような、粒が大きく被害範囲も大きい雹は頻繁には起こりません。雹という現象の未解明な部分を明らかにするためには、まずは事例ごとにどんな雹が降ったのか、しっかりと記録に残すことが第一歩だと考えています。大きさや形状は現地の情報である程度把握できますが、雹のサンプルを入手することで雹の内部の層や結晶の構造を実験室で詳しく調べることができます。

雹の内部には特徴的な縞模様があり、雹が成長した上空の状態を反映しています。結晶の構造も雹の成長過程を反映しています。これらを調べることで、氷がどのように形成したのかを調べたいと思っています。

今回のポストをきっかけにサンプルだけでなく、雹の降った場所や時刻、大きさについても多数の情報提供をいただいています。Xのユーザーの方々からお送りいただいた情報をもとに雹が降った範囲や被害状況についても調べ、当時の気象データと合わせて、なぜ今回のような顕著な降雹が発生したのかを調査したいと考えています。

その後、うっしーさんはYouTubeで、今回の反響で得られたサンプルの集計した途中経過などについて詳しく報告している。興味がある人は観て欲しい。

うっしーさんのYouTubeより

今回の反響について感想をお聞かせ下さい。

雹を保管している人自体がおそらくごく少数ですし、その中で自分のポストまで見る人はいないだろうとダメ元で投稿したものだったので、急に拡散され始めて驚きました。

雹は暖かい時期に降ることも多いので、降ってもすぐに融けてしまい、一つの事例について広範囲のサンプルを得ることは難しいです。

ですから、このように雹の大きさや形状、採集地域などで広範囲のサンプルをご提供いただけることになったのはSNSの良い側面だと思っています。

おかげさまでDMやコメントで100件以上の情報をいただき、多数の貴重な情報が得られました。どのメッセージからも「協力したい」という気持ちが伝わってきて、本当に嬉しかったです。心から感謝申し上げます。

なお、うっしーさんは今後も雹の情報提供やサンプル提供に関する募集を行っていく予定で、提供用のアンケートフォームなども用意している。詳細についてはうっしーさんのアカウントをチェックしよう。

今後どこかで雹が降っている状況に遭遇したら、今回の投稿を思い出してサンプル提供してみてはいかがだろうか。

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