乙武洋匡(h_ototake)さんの『映画「ブラック・スワン」を観て』
- toshihiro36
- 9560
- 0
- 4
- 21
1.映画『ブラック・スワン』を観てきました。みなさんから、「ぜひ感想を」とのリプ多数だったので、ネタバレしない程度に、僕なりの感想を。まず、この映画はバレエを描いてはいるけれど、決して「バレエ映画」ではない。人間の心理を描いた物語。バレエを知らない僕でも、十分に楽しめました。
2011-06-04 10:37:312.前評判の高かったナタリー・ポートマンの演技も圧巻。美しさ、儚さ、気高さ、という異なる要素を巧みに操りながら、見事に主人公のなかに眠る様々な感情を演じ分けていた。終盤の重要なシーンでのダンスと表情は、まさに鳥肌モノ。映画『レオン』の少女役のときも、いい表情してたもんなあ。
2011-06-04 10:47:253.さて、本題。僕も表現者のひとりとして、いろいろ考えさせられる映画でした。「白」という色しか知らない人が表現する「白」と、対極に位置する「黒」という色まで表現する力を持った人が伝える「白」は、同じ色のはずなのに、深みが違ってくる。観客(読者)のなかでの響き方が違ってくる。
2011-06-04 10:54:494.僕が発信しているメッセージは、たぶん「白」。でも、僕が本当に「白」しか持ち合わせていなかったら、これだけ多くの人々に僕の思いは伝えられていない気がする。僕にも、いつからか黒がある。いや、「乙武さん、よくブラックジョーク言いますもんね」というその黒じゃなく、本当の黒。心の、黒。
2011-06-04 11:07:475.昔は自分のなかに「黒」があることなんて認めたくなかったし、それが怖くて仕方なかった。でも、いつからだろう。いまの僕は、自分のなかにある「黒」をじっくり見つめたり、いろいろな角度からながめている時間が嫌いじゃない。なんなら酒でも汲み交わしながら、己のなかの「黒」と語り合いたい。
2011-06-04 11:20:116.自分のなかの「黒」とじっくり向き合えるようになってから、僕はバランスが取れてきた気がする。昔は、何かあればポキリと折れてしまいそうな脆さがあったけれど、いまはそう簡単に折れやしない。まあ、折れたら折れたで、また叩いて、延ばして、好きな形に作り変えたらいいや、という開き直り。
2011-06-04 11:28:367.僕がFUNKISTを愛してやまないのも、彼らのメッセージが決してきれいごとの「白」なんかじゃなく、社会の「黒」や人間の「黒」とさんざん向き合って、語り合ってきた過去から生みだされる「白」だからなんだと思う。そうした人間にしか生みだせない、叫び。思い。色。だから、僕の心に響く。
2011-06-04 11:33:038.だから、太宰治が好き。己のなかの「黒」に苦しめられ、翻弄されつづけたにもかかわらず、その「黒」と誠実に向き合い、その「黒」を抱きしめつづけた太宰。彼は、弱かったんじゃなく、マジメだったのだと思う。そんな迷いや葛藤が、素直に垂れ流される彼の作品が、たまらなく愛おしい。
2011-06-04 11:49:289.映画『ブラック・スワン』、僕は表現者としての「白」と「黒」についてじっくり考えさせられた作品でした。そして、主演のナタリー・ポートマンは、その「白」も「黒」も、最高の形で表現してみせてくれました。本当にすばらしい女優さんだと思います。あくまでも、僕の所感。長文、失礼しました。
2011-06-04 11:57:05