オイランドロイド・アンド・アンドロイド ＃１
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ドンツードンツードンツードンツーポッポッポコッピポポポッポコッピ……かなり危険なクラブ「プラスチック・オスモウ」に、非人間的なケミカルテクノが鳴り響く。 1
2014-01-03 22:06:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ホールの床は巨大なヨーカンのように艶艶と黒い。それは透明の分厚い強化樹脂で守られ、緑色に発光するネオンパネルが埋め込まれて、ミステリーサークルめいた形状を描いている。それは４つのドヒョウ・リングだ。そこでは黒いフルフェイスメットを被ったスモトリ崩れたちが、淡々と闘争している。 2
2014-01-03 22:09:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ケミカルテクノとVJ光の洪水の中、無軌道な若者たちは非合法デザイナーズ・ドラッグやメガデモ電脳麻薬を摂取して踊る。この退廃的なクラブでは、本来神聖なはずのスモトリたちの存在は完全にネグレクトされ、無機質なオブジェと化しているのだ。 3
2014-01-03 22:16:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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３番リングで誰かが勝利した。人間味を排除されたフラットなドヒョウ・リングが自動裁定する。敗者の体重を感知し、緑のサークルが赤に変わった。敗者の右足が数ミリ、ドヒョウを割ったのだ。勝者は誇らしげなポーズで名誉をアピールするが、誰も注目しない。その顔は覆い隠され、声も聞こえない。 4
2014-01-03 22:22:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ダンスの中でいいムードになったサイバーサングラスの男と、サイバーゴス女が抱き合い、人ごみを抜け奥の暗がりへ。壁際では酩酊した男女数組が前後している。３番リングのスモトリは淡々とポジションに戻る。「フォース・アウト」「ファイティング・スピリット倍点」VJが電子音声ボタンを押す。 5
2014-01-03 22:26:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「ファファファファイティン、ファッファファイティン、スピリッ、スピリッ」ポッポッポコッピ……。ガゴンプシュー。錆び付いた非常扉が開き閉まる。音が遠ざかる。男は扉の解除コードを知っていた。二人は誰もいない裏路地。張り出した強化コンクリート屋根の外には重金属酸性雨。いいムードだ。 6
2014-01-03 22:31:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「……つまりその、言いにくいんだけど……」女の名はユンコ・スズキ。色々複雑な背景がある。肌は雪のように白く、頭髪はターコイズ色とクリーム色。「エートつまり…君はオイランドロイドで……ある日突然、自我が芽生えちゃった？」男は話半分で聞く。ダンスが上手く、陰のあるムーディーな男。 7
2014-01-03 22:37:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「全然違う。自我以外が完全にドロイドで……」「で、たまにAIになるんだっけ？」「そう。そういうの、嫌？」「カワイイだと思う」男は全く信じていない。夢物語のオーバーテックだ。（（（ああ……そういう設定のサイバーゴスの娘なワケね……ダッセ…）））男は彼女の腕や腰に触れ値踏みする。 8
2014-01-03 22:44:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「カワイイ？」ユンコの胸の奥でマイコ回路が高速回転する。自我と裏腹にキモチの境目があやふやになる。「そう、だからオイランドロイドみたいにして欲しいんだ。ネコネコカワイイみたいにさ……」男はユンコを抱いたまま、ポケットに隠した超振動ナイフを巧みに取り出す。雨音が振動音を消す。 9
2014-01-03 22:50:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「私はああいうのじゃない」ユンコが醒めて反論する。だが男はもはや獲物の言う事など聞かない。「ホラ彼女ら、よく破壊されてるだろ。興奮してきたよ。解るだろ？俺の好きなのはさ……完全にイノセントな状態……つまり神々と交信する神聖な器……」ナムサン！この男はサイコシリアル殺人者だ！ 10
2014-01-03 22:56:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ALAS！このまま彼女はファック＆サヨナラされてしまうのか？！男は隠していた嗜虐欲望を剥き出しにする！そしてユンコの背中めがけ、超振動ブレードを……！ナムアミダブツ！「イヤーッ！……アレッ？」手が動かない。ユンコの細い腕が肘から逆関節駆動し、男の手首を掴んでいる。 11
2014-01-03 23:01:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「イヤーッ！」男は力を込めるがビクともしない。信じ難い！危険な通信カラテで会得したブラックベルト級のワザマエが、小娘を前に手も足も出ない！彼女の上腕部の排熱フィンが開く。ブラフではなく戦闘用ドロイドなのだ！「アイエエエエエエ！」男はユンコの怒りに満ちた目を覗き、恐怖した。 12
2014-01-03 23:08:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ゴキリ。男の手首が折れる。次の瞬間、逆の腕で情け容赦ないカラテパンチが腹部に叩き込まれた！「イヤーッ！」「オゴーッ！」男は屈み込み武器を取り落とす！さらに顔面へカラテパンチ！「イヤーッ！」「グワーッ！」転倒！「イヤーッ！」重いサイバーゴスブーツに頭を踏み付けられ身動き不能！ 13
2014-01-03 23:11:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「マッポ呼ぶ。サイバーゴスの女の子を何人も殺したでしょ。証拠揃ってる。スガモ行き」彼女はハッカーめいて吐き捨て、男を柱に拘束する。「正義の味方か…？ハハ……裁けるもんか」男の父親は暗黒メガコーポの重役であり、このクラブも彼の一家が経営するものだ。揉み消しや報復は既に何度も。 14
2014-01-03 23:19:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「そういうダサいのじゃないから。ムカついたから来ただけ。あと、ニュース見てない？」ユンコはIRC端末を取り出し、這いつくばった男に見せつける。男は薬物酩酊と脳震盪のカクテルで揺らぐ視神経でLED文字を読んだ。「謎のジャーナリストが暴く……イカモチ社……重役不正……検挙……」 15
2014-01-03 23:25:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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男は放心状態のまま笑う。ユンコは怒りを自制し非常扉へ向かう。顔とムードは良かった。ダンスも相性がいい。シリアルキラーでなければ良かったのに。「……あ、やっぱりダメだ」ユンコは非常扉を蹴り開ける。ポッポッポコッピポポポッポコ……音の洪水。「人をオイランドロイド扱いする奴とか！」16
2014-01-03 23:33:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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『YCNAN：遅刻気味よ』『JUNKO：急いでる』センセイと秘密IRC通信を交わしながら、ユンコが跨がるマルミXR-6は青いサイバー光の軌跡を残してメガロハイウェイを疾走する。その丸みを帯びた最新型密閉モノバイクは、ネオサイタマに降る重金属酸性雨を軽やかに撥ね除けて進む。 17
2014-01-03 23:45:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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彼女の保護者であるナンシー・リーは、コトダマ空間認識能力を持つヤバイ級ハッカーにして、社会不正と戦うジャーナリストだ。二人はトカゲのシッポ切りで検挙された重役の息子について対話する。『YCNAN：殴りに行ったの？』『JUNKO：殺してない。あのファック野郎はマッポ行き』 18
2014-01-03 23:56:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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『YCNAN：放っておいても捕まったのに』『JUNKO：そうかもしれないけど』マルミXR-6は速度を増し、いささか荒く乗用車を追い抜く。運転もIRCも全てがLAN直結。無機質なマシンを外皮のように纏った感覚。驚くべきテック順応性。『JUNKO：休憩を兼ねてだから自由でしょ』 19
2014-01-04 00:02:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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『YCNAN：そうね、自由があるわ』十数キロ離れたメガロスタジアムのライブステージ袖で、彼女は返信メッセージを高速タイプした。実際、IRC以外での通話は不可能。凄まじい音圧と歓声が周囲を包んでいる。『YCNAN：でも遅刻は余り褒められた事じゃない』『JUNKO：スミマセン』 20
2014-01-04 00:10:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ナンシー・リーは果たして何処にいるのか？十数万人の観衆が叫ぶその名を聴けば、察しの良い皆さんは直ちに理解するだろう……！「ネコ！ネコ！カワイイ！」「ネコ！ネコ！カワイイ！」「ネコ！ネコ！カワイイ！」スゴイ！小休止を挟み焦らされたオーディエンスの熱狂は、もはや暴発寸前だ！ 21
2014-01-04 00:17:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ステージに２体のドロイドのシルエットが浮かぶ。「ネコ！ネコ！カワ……ワーッ！ワオオオオオーッ！」十数万の歓声がうねる！『アルヨ多幸感！！！』曲名が巨大モニタに映し出され、二体はネコネコカワイイジャンプを決める！同時に重低音ダンス音楽が鳴り響き、観衆は熱狂の渦に叩き込まれた！ 22
2014-01-04 00:28:32