本当は『幸運艦』だったシャルンホルスト  ~"呪われた純白の幽霊不幸戦艦"の真実~

「呪われた純白の幽霊戦艦、シャルンホルスト」という形で、不運艦としての物語が日本で流布している戦艦シャルンホルストの、史実での真実の姿とは。
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こんぱすろーず @flowerclass

「シャルンホルストの呪い」というヨタの発祥は1950年代後半にアメリカで放送されていた怪談ラジオ番組の台本として、UFOネタで有名だったオカルトライター、フランク・エドワーズがでっち上げたもの。それを怪奇実話作家・翻訳家の黒沼健が最初に紹介し、その後オカルト雑誌や雑学本に(続)

2014-09-26 21:03:44
こんぱすろーず @flowerclass

転載されて次第に日本でも広がっていったものと思われます。現在流布しているのはエドワーズのオリジナルに日本独自の改変が大幅に加わったものです。オリジナルには(おそらく意図的に)これがホラ話であることを示すためにわかりやすい間違いが仕込んであったのですが(続)

2014-09-26 21:04:15
こんぱすろーず @flowerclass

現在のバージョンにはそれが含まれていません。オリジナルでは「不幸エピソード」は史実ではシャルンホルストが参加していない作戦で起こったことにされていました。日本で流布している版では削られていますがオリジナルにはシャルンホルストがオスロ港で砲台に滅多打ちにされた、という(続)

2014-09-26 21:04:53
こんぱすろーず @flowerclass

エピソードがあるのですが、これは皆さんご存知でしょうが実際には巡洋艦「ブリュッヒャー」に起こった出来事です。逆に進水式に招待された14歳の少女が~という話は日本で拡散するうちにどこかで独自に付け加えられたエピソードになります。

2014-09-26 21:05:48
こんぱすろーず @flowerclass

実はエドワーズのオリジナル版、日本語で読めます。『ストレンジ・ワールドPART1』(曙出版・1990年)。amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%8… プリントオンデマンド版がまだ新刊で流通しているので入手は比較的容易でしょう。本文中の表記は「戦艦シャーンホースト号」ですが…

2014-09-26 21:06:15
リンク www.amazon.co.jp Amazon.co.jp: ストレンジ・ワールド〈PART1〉: 中場 一典, 今村 光一, フランク・エドワーズ: 本 Amazon.co.jp: ストレンジ・ワールド〈PART1〉: 中場 一典, 今村 光一, フランク・エドワーズ: 本
こんぱすろーず @flowerclass

@akagitsuyoshi 一番もとをたどれば戦時中の反独プロパガンダ記事あたりにたどり着く可能性はあるんじゃないかな、という感触はあります。黒沼が最初に紹介した、は勇み足かもしれません。

2014-09-26 21:12:59
こんぱすろーず @flowerclass

さて最近の流布元であろうこのまとめブログの記述にいちいち大人げなく突っ込みを入れていきます。kancolle-news.com/archives/33269…

2014-09-26 21:07:24
リンク 艦これまとめ主義-攻略ネタサイト 【艦これ】不幸姉妹も超越!ヤンデレ系巡洋戦艦シャルンホルストちゃん!【死神】 : 艦これまとめ主義-攻略ネタサイト 呪われた純白の幽霊戦艦、シャルンホルスト ・建造中に突如船体が横転、技師が60名死亡100名以上負傷 ・その船体を立て直すのに3カ月かかった・ボイラーが爆発事故を頻発、死傷者も出る ・艦長になるはずだった士官がいきなり心臓発作起こして死亡 ・洗礼親に14歳の少女が抽選で選ばれたが、 進水式の数日後に謎めいたメッセージを残して突如自殺 ・メッセージはルーン文字に近い難解な古代語 (当然子供が学ぶとは考えづらい)で、内容は 「私は魅せられた」「護りたまえ」
こんぱすろーず @flowerclass

①建造中に横転して死者60名、工事再開まで3か月かかった:シャルンホルストの建造過程は大型艦のわりにきわめて順調だった。②ボイラー爆発が頻発:機関不調はドイツ艦隊の泣き所だが別に爆発はしていない。③艦長予定者が急死:初代艦長チリアクスは病気で短期間で退任したが死んでない。

2014-09-26 21:08:00
こんぱすろーず @flowerclass

④洗礼親に選ばれた14歳の少女が謎めいた遺書を残して自殺:これは日本オリジナル。ネットで大人気のエピソードであるが実際のシャルンホルストの洗礼親は先代の装甲巡洋艦シャルンホルスト最後の艦長だったシュルツ大佐の未亡人、たぶん進水式のころは50がらみのおばちゃんである。夢見すぎだよ。

2014-09-26 21:08:59
こんぱすろーず @flowerclass

⑤進水式で勝手に流れだし~:これはおそらく姉妹艦グナイゼナウの進水式のエピソードを誇張したもの。グナイゼナウは船台から滑り降りる際に勢いが付きすぎて反対側の岸に船体をぶつけるなどした。シャルンホルストの進水式は平穏そのものに終わっている。

2014-09-26 21:10:07
こんぱすろーず @flowerclass

⑥初の実戦で砲門爆発で9名、空調の故障で10名以上死亡:エドワーズ版だと「ダンチヒ港砲撃のとき」になっているが、ダンチヒの戦いがあった1939年9月にはシャルンホルストは改修工事でドック入り中なので砲撃に参加できるわけがない。

2014-09-26 21:13:36
こんぱすろーず @flowerclass

⑦北洋の霧の~から英仏海峡を~までは日本オリジナル。基本的に事実だがまったく不幸とか呪いと関係がない。むしろ幸運と武勲のエピソードでは。北洋の霧のうんぬんは真冬の嵐の中で無謀な出撃をかけた英空軍が遭難機多数を出しただけなので…(1940年2月の「ノルトマルク」作戦の時)

2014-09-26 21:14:15
こんぱすろーず @flowerclass

⑧殆ど晴れの無い北洋の雲の一角が晴れ、港に停泊していたシャルンホルストを照らし出す:この当時シャルンホルストが停泊していたアルタフィヨルドは北緯70度にあるので、12月末は太陽自体が一度も昇らない、ほぼ24時間真っ暗の極夜の時期です。晴れるとか曇りとかそういう問題じゃない。

2014-09-26 21:14:46
こんぱすろーず @flowerclass

⑧英軍のまぐれ当たりで撃沈:暗夜に精密なレーダー射撃で沈められたのでまぐれじゃないですね。この北岬沖海戦(ノースケープ海戦)は英海軍にとって最初から最後までドイツ海軍を翻弄し続けた会心のパーフェクトゲームでした。

2014-09-26 21:15:59
こんぱすろーず @flowerclass

⑨わずか2名の生存者もヒーターの爆発で:生存者は2名ではなく36名。ヒーターがうんぬんの話はほぼ生存者全員インタビューしているウィントンのDeath of the Scharnhorstにもまったく出てこない。

2014-09-26 21:16:40
こんぱすろーず @flowerclass

シャルンホルストの乗員自体が自艦をむしろ「幸運艦」と呼んでいた話は、ギャレットのElusive Sistersにもグレイの『ヒトラーの戦艦』にも何度も出てきますね。

2014-09-26 21:18:06
こんぱすろーず @flowerclass

それじゃあシャルンホルストは武勲艦だけど周りの幸運を吸い取るとか不幸にする、という設定に持っていきたい人もいるようですがそれも事実は正反対です。

2014-09-26 21:18:29
こんぱすろーず @flowerclass

シャルンホルストはその生涯において、一度もともに作戦行動中の僚艦を喪失したことがない、という稀有な経歴を持っています。つまりシャルンホルストと一緒にいると沈まない。…ま、だいたい単独かグナイゼナウと2隻だけで行動したからという点は大きいですが。

2014-09-26 21:18:48
こんぱすろーず @flowerclass

42年のチャネルダッシュでも護衛の駆逐艦・大型水雷艇・魚雷艇、航路啓開の掃海艇まで含めて1隻も喪失艦艇を出していないのは結構すごい。いつもコンビを組んでいたグナイゼナウが致命傷を負ったのはシャルンホルストと別れてキールで修理中の空襲によって。

2014-09-26 21:19:08
こんぱすろーず @flowerclass

北岬沖でシャルンホルスト自身が最期を迎えたときも随伴の駆逐艦5隻は無傷で帰還することができた。少なくとも史実にはシャルンホルストを「不幸」とか「呪いの艦」扱いする要素は一切見当たりませんね。反対の証拠なら山ほどありますが。

2014-09-26 21:19:42

えいち・えむ・えす・ゆりしーず @hms_ulysses

シャルンホルストの洗礼親が少女と誤伝されている話、収容所の捕虜が架空の貴婦人を想定した話が架空の美少女を想定していたことになってる( togetter.com/li/484601 )話と響きあうものがある気がする twitter.com/flowerclass/st…

2014-09-26 21:14:58