生田美和氏が語る「アナと雪の女王」の感想 まとめ

シナリオデザイナー・生田美和 ‏@shodamiwaさんが投稿された「アナと雪の女王」の感想連ツイをまとめました。 これが正解ではなく、見解の一つを楽しんで頂けたらと思います。 本作品の印象を大切にしたい方はご無理なさらず、気が向いてからでもよいかと思います。
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生田美和 @shodamiwa

寒くなっていくこの時期に、「アナと雪の女王」の感想をまとめておこうと思います。結論から言うと、私は文句なく楽しかったです。ある一点において、今という時代に必要なファンタジーだと思いました。まだ見ていない人のために、RTなしでお願いします。では、踏み込んで感想を書いていきます。

2014-10-20 22:46:52
生田美和 @shodamiwa

1)古い物語には「女の子は王子様の助けを待つ」というパターンがあります。少し意地悪な言い方をするなら、シンデレラが辛い生活から抜け出せたのは、王子様と結婚がきっかけでした。一方人魚姫は、王子様が別な人と結婚したせいで、泡と消えてしまいます。ヒロインの運命が結婚に左右される形です。

2014-10-20 22:51:16
生田美和 @shodamiwa

すみません、しばらくリツイート無しでお願いします。

2014-10-20 22:59:45
生田美和 @shodamiwa

2)「女性の幸せは結婚である」との考えはあります。ですが、アナと雪の女王には、それが当てはまりません。物語後半、アナがエルサの魔法を受け、危機に陥ります。アナを救えるのは真実の愛=王子様のキスとわかるのですが、アナはキスより、姉の救済を選びます。これはどういうことでしょうか?

2014-10-20 23:00:35
生田美和 @shodamiwa

3)アナは自分だけが助かる道を選べなかった。自分が死んでも、エルサを救いたいと思った。そう読むこともできると思います。でも私には、それだけとは思えませんでした。それはアナが無邪気にハンス王子を信じ、そのキスで自分が助かるだろうと見込んでいたシーンの印象からきています。

2014-10-20 23:02:47
生田美和 @shodamiwa

4)凍りついていくアナとハンス王子のシーンで、アナは自分がエルサを説得できなかったと告白します。これまでは、エルサに会いに行こう、会えば姉妹だものわかるはず、と無邪気に行動していたアナが、自分のしたことは無駄だったと考え、古い物語のお姫様のように王子様のキスに全てを託すのです。

2014-10-20 23:05:14
生田美和 @shodamiwa

5)でも、ハンス王子はアナを見捨ててしまいます。そしてあろうことか、アナがリークした、姉エルサとの不仲を利用し、アナを見殺しにし、その罪をエルサになすりつけ、処刑すると言うのです。もともと国王の座を狙ってアナに近づいたハンス王子でしたが、姉妹不仲の情報が、彼の背を押しました。

2014-10-20 23:07:34
生田美和 @shodamiwa

6)一人、見捨てられたアナを助けに来るのは、もうひとりの王子様っぽい人、クリストフではありません。オラフという、姉エルサが国を捨てた時に魔法で作った、雪だるまです。オラフは、アナにとって幸せな子供時代の象徴でした。

2014-10-20 23:10:15
生田美和 @shodamiwa

7)アナは幼い頃、魔法に関する記憶を奪われ、冬遊びの記憶として書き換えられています。それでもアナは、エルサの閉じこもる部屋の前に来ては、「雪だるまつくろう♪」と歌い、エルサを外へと誘い出そうとするのです。雪だるまは、エルサと遊んだ思い出の日々の象徴で、大切なものなのです。

2014-10-20 23:21:54
生田美和 @shodamiwa

8)姉エルサにとっても、雪だるまは特別なものだったのではないかと思います。運命の戴冠式の日、魔法の力が明らかになり、エルサは逃げ出すように国を捨て、一人雪山を行きます。「レット・イット・ゴー」の美しくも力強い旋律に乗せ、エルサは過去と決別し、魔法を解き放っていきます。

2014-10-20 23:28:02
生田美和 @shodamiwa

9)この時、エルサがはじめて作った意味のある形が、雪だるまのオラフです。エルサは、なぜ雪だるまを作ったのでしょう?楽しかった子供時代だけは、捨てきれなかったのではないでしょうか。

2014-10-20 23:29:21
生田美和 @shodamiwa

10)子供時代の楽しかった記憶だけを胸に、エルサは雪山へ自分を閉じ込めます。でも、その時作った雪だるまオラフが、ひとりきりで凍えるアナを助けに行くのです。姉と妹がそれぞれの胸にしまった思い出が、今そこにある危機に手を伸ばす…。時を越え、ふたりの思いが届き始めるのです。

2014-10-20 23:30:55
生田美和 @shodamiwa

11)オラフは冷えきったアナのため暖炉に火をくべ、アナのためなら溶けてもいいと言います。自分より誰かのため行動できるのが真実の愛だとも。エルサの雪だるまが、こんなにも優しく正しいことを言うのです。アナはここで、エルサの魔力が恐ろしいばかりではないことと、愛の本質に気づきを得ます。

2014-10-20 23:32:27
生田美和 @shodamiwa

12)それでも、ここからしばらくのシーンは、もう一人の王子様っぽい人、白馬ならぬトナカイに乗ったクリストフに注目した流れです。アナとクリストフは互いに、真実のキスをしようとします。でも、あと少しという時、アナは見てしまうのです。エルサがハンス王子に、殺されようとしているのを。

2014-10-20 23:34:10
生田美和 @shodamiwa

13)アナはクリストフとのキスよりも、エルサを救う行動に出ます。この、アナがエルサを守ったシーンは、メッセージに満ちています。なぜなら、もしエルサの魔法がアナを凍らせることがなければ、アナはハンス王子の剣に切り捨てられていたからです。

2014-10-20 23:36:15
生田美和 @shodamiwa

14)アナは凍りついたから、エルサを救うことができました。エルサの魔法がアナの心を通し、傷つける力ではなく、守る力に変じたのです。ここで私は、アナはエルサを信じたのだと感じました。氷の怪物をハンス王子は斬ることができました。それが今回できなかった。アナの心の強さゆえと思うのです。

2014-10-20 23:41:27
生田美和 @shodamiwa

15)身を呈して自分を守ってくれたアナを見て、エルサはアナへ心からの愛を感じます。その愛が凍りついたアナを溶かします。エルサが愛されること、エルサが愛すること。「アナと雪の女王」は、エルサに愛を届ける物語であり、その届け手は、ハンス王子やクリストフではなく、アナなのです。

2014-10-20 23:43:00
生田美和 @shodamiwa

16)救出を待つヒロインはアナではなく、まぎれもなくエルサです。そして、それを助ける王子様は男性陣ではなく、アナ自身です。幼い日、アナはエルサに無茶な魔法を使わせ、結果、国王一家の閉ざされた生活が始まりました。それが間違いだったと言えるのは、被害にあったアナしかいないのです。

2014-10-20 23:44:40
生田美和 @shodamiwa

17)国を出たエルサを追って、氷の宮殿をアナが訪れた時の姉妹の会話が印象的です。エルサはアナに、傷つけたくない、と言いました。アナは、私は大丈夫、と応えます。これがすべてのような気がします。この時から変わらぬ思いが通じあい、孤独だった心が解けて、近づいていく。

2014-10-20 23:46:14
生田美和 @shodamiwa

18)姉妹愛と限定することもないでしょう。アナと雪の女王は、傷つけた者と傷つけられた者の心の物語です。誤解があり、すれ違いがあり、孤独があり、理解があり、許しがあり、愛がある。私はこの物語が、傷つき傷つけあう世界で生きていくための、希望の物語だと思っています。

2014-10-20 23:49:21
生田美和 @shodamiwa

以上です。公開当初から、王子様のキスの無効化をどう思うか?と、尋ねられてきました。やっと私なりに読み解けたので、まとめました。見る人によって違う感想があることも含めて、作品の魅力かと思います。私の意見は、そんな考えもあるんだなあという、一意見として読んでいただければ幸いです。

2014-10-20 23:54:05