二千年の永き封印から遂に目覚めた魔王

U @ebleco

――――今より二千年前。伝説の勇者の決死の戦いによって魔王は封印され、世界に平和が訪れた。だが、永きの時を経た今、その魔王の封印が解かれようとしていた！！ 「……ァァア゛ア゛」 「……アァァア゛ア゛ア゛！！」 「ァアアア゛！！！　最悪や！！　め゛っちゃ時間経ってる゛！！！」

U @ebleco

「えぇ……何これ……マジでめっちゃ時間経ってるやん……吾輩、主観的には今例のけったクソ悪い勇者に刺された直後なんだけど……」 「……街、めっちゃ栄えてるし……」 「……ええー……ここ、もっとこう、『王都』って言っても長閑やったやん……何アレ……見た事無い材質の建造物建ってる」

U @ebleco

「はぁ～……マジか……これ完全に魔王軍とか残存してないやつやん……えー……これ滅ぼし直さなきゃあかんやつやん……クソ面倒臭いやん……」 「……えー……あー……マジかー……」 「これ、さてはアレやな。吾輩、石にされてたな。伝説の剣刺されて、そのまま封印されてたやつやなコレ……」

U @ebleco

「……だって台座あるし」 「……破片とか散らかってるし……」 「……えー……待って待って待って」 「吾輩、台座に乗ってたん？　……まじかー……えー……吾輩モニュメント扱いされてたやん、今の今まで。これ多分魔王だと思われてない奴やん。躍動感ある石像程度にしか思われないぞ多分」

U @ebleco

「……道めっちゃキレイやし……」 「あー、わかったぞ。この国治安めっちゃいいぞ。石畳きれい過ぎるもん。……うわぁー……気が滅入る……滅ぼすのめっちゃ大変やん……」 「はぁ……マジあのけったクソ悪い勇者無いわぁ……えー……もう未来やん……捨て身で来やがってあの阿呆マジ無いわぁ」

U @ebleco

「……（すー）」 「……（はぁー）」 「……あかん」 「……空気めっちゃきれいやん……魔界の瘴気的なの微塵も無いやん……道理で喉の調子いいと思ったわ……吾輩もっと声とかガラガラしてたもん……どうすんのこれ喉もすっきりしてて声に威厳とか無いやん……はぁ～……？　マジかー……」

U @ebleco

「……大体アレやぞ……威厳とか言ったら吾輩の着てる服とかもアレなんちゃうん？　……は、流行りとか的に大丈夫なんコレ？　いや、これ当時は最先端やで！？　サラマンダーの皮とか使っためっちゃ上等なマントやけど！　これ、結構お気に入りなのに『時代遅れ』とか思われためっちゃつらいやん！！」

U @ebleco

「えー……困る」 「そんな、アレやん。今のトレンドもわからんような状態で街とか壊せんやん」 「……仮にやけど！　仮に吾輩が着てる服とかが時代遅れやったら馬鹿にされるやん！」 「吟遊詩人とかに『時代遅れなファッションに身を包みし魔王が街を滅ぼし』とか言われる！　嫌過ぎる！！」

U @ebleco

「はぁ……何も出来へん。あのけったクソ悪い勇者マジ無いわぁ……何が『みんなの力が』やねん。魔王軍とて魔物全体の指揮系統とか結構気ぃ使ってるわ。ふざけんなやマジで。遊びで世界征服してるんと違うぞふざけやがって」 「……」 「うわ！！　何あれ！！　鉄の塊が飛んでる！！　怖っ！！」

U @ebleco

「うわぁ！！　怖い！！　原理がわからん！！　吾輩原理がわからんもの怖い！！　えー、えええっ！？　怖っ！　えええ、めっちゃ質量あるやんあれ。音怖っ！　何あの無機質なフォルム！！　あかん、滅ぼそ！！　この街怖い！　はよ滅ぼさな！！」 「……アレや。王都になんて攻め込むじゃなかった」

U @ebleco

「……まぁな、吾輩も迂闊やったな。『行ける』思ったもんな。そりゃ攻め込みますよ。したらこの仕打ちですよ。あのけったクソ悪い勇者、暫く大人しくしてると思ったらコレや。アレやぞ。吾輩、主観的には今さっき刺されたばっかりやからな。顔も忘れられんぞ。何でほんのり石鹸の香りしたねんアイツ」

U @ebleco

「……」 「何でほんのり石鹸の香りしたねん！！！！」 「あかん！！　わけわからん！！　何で石鹸の香りしてん！？　死ぬ気やから！？　死ぬ気やと人間って石鹸の香りするん！？　それとも風呂上りやったん！？　決戦の前に風呂入るか普通！？　わからん！　考えれば考える程わけわからん！！」

U @ebleco

「……あかんぞ」 「あかん。これ万が一この時代のトレンドが『石鹸の香り』とかやったら吾輩、気になって戦いどころじゃない」 「……えー、でもこの時代のトレンド調べようにも今の服が大丈夫かわからんし……」 「何で魔王が『服買いに行く服が無い』みたいな悩み持たなあかんねん！！」

U @ebleco

「……あかんわ。とりあえず滅ぼそ」 「もうええわ。とりあえず目撃者全員殺せば多分吟遊詩人に恥ずかしい詩とか残されんやろ。……よし」 「フハハハハッ！！　愚かな人間共め！！　この魔王が復活したからには貴様ら如き矮小な存在が保つ平和など、泡沫の――うわまた鉄の塊飛んでる怖っ！！」

U @ebleco

――――二千年の永き封印から遂に目覚めた魔王！　果たして世界は再び暗黒の魔の手に落ちてしまうのか！？　ちなみに今年のトレンドは薄めの紫を小物やインナーに差し色として取り入れるのが無難だぞ！！ 「……」 「……あ、これよく見たら石畳やない奴や！！　うわ、知らん材質や、怖っ！！」

U @ebleco

……みたいな感じの復活したはいいものの時代の流れに戸惑う魔王が出てくるお話ください。