『「軍歌趣味」という言葉には問題が多かった』~軍歌研究の第一人者・辻田真佐憲氏が振り返る
- gryphonjapan
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文筆業。政治と文化芸術の関係について調べています。近刊『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』(講談社現代新書)。連絡先は以下のリンクをご覧ください(リプライは全部見ていません)。
「軍歌趣味」は今思えば問題の多い言葉だった。政治性抜きに趣味として消費しようといっても、「大東亜戦争は聖戦」という価値観を中立客観的と思っているひとにはまったく意味がないし、本来は限定的に扱われるべき軍事コンテンツを野放図に消費させてしまう免罪符にもなった。
2015-11-26 15:54:0010年前にサイトを立ち上げたときは、「エロゲやフィギュアのように扱えばいい」と書いたけれども、あのころは監禁事件とかもあって、こうした趣味に対するイメージはとても悪かった。ただ、悪趣味なものを悪趣味なひとたちが、社会の隅で細々と消費しているくらいはいいだろう、と思っていた。
2015-11-26 15:55:50軍歌という危険なコンテンツも、悪趣味の対象としてはありだと。ただここ10年でこの辺りのイメージや社会的な評価がかなり大きく変化してしまった。そんなこともあって、『日本の軍歌』以降は一貫して、この手のコンテンツに対する問題性を指摘するようにはしている。
2015-11-26 15:58:002011年に最初の本を出して以降、いろんなひとに会ってきたけれども、いわゆる軍歌マニアのなかに、ホロコースト否定論者や大東亜戦争聖戦論者が一定数いたのはなかなか衝撃的だった。なかには結構大物もいたりして、これはまずいと思った。2014年以降の本はそういう衝撃がもとになっている。
2015-11-26 16:01:03「軍歌趣味」は、様々な前提を共有したうえで成り立つ知的ゲームみたいなものなので、ある程度枠組みをはめたうえでしか適応できない。これはたぶん軍事コンテンツの消費全般にいわれることなのだと思う。
2015-11-26 16:04:47「気持ち悪い悪趣味」という防波堤が崩れて、「明るく楽しい普通の趣味」に近づいていく。それだけではなく、部分的には政治とも結びついていく。そういう現象が最近見られて、「軍歌趣味」なる言葉を造った者として慙愧に堪えない。
2015-11-26 16:13:06