「パパー、胡坐と座禅の違いって何?」 「姿勢はどっちも一緒。精神性の違いかな」 「どういうこと?」 「精神を集中して、無我の境地に入るのが禅」 「ああ、テニスの」 「…多分それ違う。悩みや悪心が亡くなった状態…言ってしまえば死んでしまったような精神状態のことらしいよ」
2016-04-30 23:42:49「死って…こわ」 ☆ じゅー、じゅー 「何このお肉。やわらかくてこってりしてて…初めて食べる」 「シビレって呼ばれてるお肉よ」 「どの部位?」 「えーっとね、うん、アレ。忘れた」 「忘れちゃったの」 「記憶が朧げなのよね、何かの臓器だったのは覚えてるんだけど」 「肝臓?」
2016-04-30 23:43:49「それはレバー。最初に食べたでしょ」 じゅー、じゅー 「じゃあ心臓?」 「それはハツ。heartからきてる名前で、脂が少ないのに旨みがあるの」 「じゃあ肺?」 「肺はフワ。店じゃあんまり出てこないわね」 「だったら腎臓?」 「それはマメ。見た目が豆みたいだから」 「あとは…」
2016-04-30 23:44:26「脾臓…はチレだったかな。タチギモとも言うの」 じゅー、じゅー 「臓器ってそれぐらいじゃ」 「そうそう、思い出した。五臓六腑の五臓でしょ、今までの。含まれてない臓器もあるのよ」 「そうなの?」 「五臓六腑は東洋医学の言葉だから。膵臓っていう臓器が含まれてないのよ」 「へぇ」
2016-04-30 23:45:06じゅー、じゅー 「膵臓の「膵」、にくづきに萃って書くんだけど、この「萃」、いろんなものが集まるって意味らしいの。まるで今日の焼肉みたいよね」 「…」 「いろんな部位あってこその焼肉だと思うのよ。さっ、今日は豪華に、余すことなく食べましょう。
2016-04-30 23:45:48肉だけじゃなく、臓器も胃も腸も、沢山あるからね」 「…わかんないなぁ」 「何が?」 じゅー、じゅー 「今までの、牛の話だよね?今日の焼肉、胃が一つしか出てこなかったんだけど」 じゅー、じゅー 「…それがどうかした?」 じゅー、じゅー
2016-04-30 23:46:21「余すことなく食べるんじゃなかったの?朧げにしか覚えてないけど、牛の胃は4つあったはずだよ」 じゅー、じゅー 「…そうだったわね。牛の胃は順番にミノ、ハチノス、センマイ、ギアラと呼ばれてて」 じゅー、じゅー 「それにさ、ママ…パパはどこ行ったの」
2016-04-30 23:47:30じゅー、じゅー、じゅー、じゅー… ☆ 人は、何かの命を食らって生きている。 生きるという行為に悪意が伴うはずはなく。 悩み苦しむ必要も無いはずだ。 だが、悩まず苦しまず、食らうだけの者に「我」はあるのだろうか?
2016-04-30 23:47:59