さて、今日も楽器の話をしましょうか。今回はピアノの話。 現在ではヤマハ、カワイ、スタインウェイやベーゼンドルファーが有名だけど、ピアノの歴史を紐解くと、これらはつい最近のメーカーなんだ。では昔の作曲家が使っていたメーカーはなんだろう、というお話。
2016-05-03 11:16:24スタインウェイやベーゼンドルファー、ベヒシュタインが出るずっと前。ベートーベンやらショパンやらリストが使っていたピアノは主に2つ。“プレイエル”と“エラール”。今は2つとも生産してなくて、もはや歴史の授業なんだけど、この二社を古典派やロマン派の作曲家がこよなく愛したんだ。
2016-05-03 11:22:41その当時のピアノは構造が2パターンあるんだけど、長くなるからはしょります。まあとりあえず現在みたいに88鍵もなくて、ハンマーは鹿革だったんだ。だから今のフェルトハンマーと比べると、音は硬質でスコーンと鳴る。
2016-05-03 11:29:09プレイエルとエラール。2つを比べるのは難しい。だって弾いたこと無いもん。僕は百聞は一見に如かずを地でいく人間だから、分からないものは分からないよ。でも作曲家の文献を読んだ上で、プレイエルとエラールの話をするよ。まずはベートーベンから。
2016-05-03 11:36:17ベートーベンの文献によると、『私は機嫌いい日はプレイエルを、機嫌の悪い日はエラールを弾く』とある。多分ベートーベンはプレイエルのピアノが好みだったのかもしれないね。でもね、よく考えてみたら、本調子じゃなくてもエラールのピアノは最低限のポテンシャルを発揮すると解釈できるよね?
2016-05-03 11:43:47実はベートーベンとエラールは深い繋がりがあるんだ。エラールはビジネス力がすごくて、自社のピアノを売り込むために、当時スーパースターだったベートーベン先生に密着したんだ。ベートーベンは新しい物が好きで、コンサートでは毎回の様にエラールの新製品を選んでいたんだよ。
2016-05-03 11:52:10しかもベートーベンは全ての音程を使いたがるということに目をつけたエラールは、ピアノの鍵盤の数を増やす開発をしたんだ。そしてエラールの読み通り、最低音から最高音まで使う曲をベートーベンは書いたわけ。これで「エラールのピアノでなければベートーベンを弾けない」という現象が起きたんだ。
2016-05-03 12:00:29これを繰り返し繰り返しやっていたから、エラール社は当時のトップシェアのメーカーに拡大したんだ。だからエラールとベートーベンがいなければ、今日88鍵のピアノはなかったんだよ。おっと、エラールの話ばかりしてしまった。次はプレイエルについて。
2016-05-03 12:07:14プレイエルをこよなく愛した作曲家の代表者はまずショパン。ショパン先生はプレイエルが大好きでした。理由は……分かりませんわ。音が好みらしいけど、詳しいことは知りません。これでプレイエルの話は終わり……なわけないじゃん! プレイエルのすごいところ。それはシューマンが知っています。
2016-05-03 12:16:38シューマンははっきり言ってイかれてる作曲家なんだけど、あるピアノ曲で謎の演奏指示が2つある。1つはビブラート。ピアノはバイオリンやフルートみたいにビブラートはかけられないというのが定説なんだけど、どうやらペダルを上下にバコバコするとビブラートかけられる。らしいよ。
2016-05-03 12:39:44シューマン謎の指示、2つ目は“ペダルのみで和音を出せ”。 これは研究家の間で相当物議が醸し出されて、「シューマンはマジでイかれてる」「いや、これには深い意味がある」とかなんとか。そこで実験。屋根を開けたグランドでペダルを踏む→一瞬戻す→再度踏む と、「ファーン」と微かに音が出る。
2016-05-03 16:14:45この実験から、シューマンが使ってたプレイエルだったらどういう音になるのか、と研究家たちは考えた。すると見事的中。プレイエルで同じこと(実際はちょっと違う)をすると、「ブワーン!」って勢いよく鳴ったんだ。これはダンバーという音を止める装置の落下現象によって音が鳴るんだ。
2016-05-03 16:22:49それで今では、シューマンは正しいという説が有力になったんだ。それもプレイエルのピアノだから出来たことなんだよね。研究家たちはよく考えるよ。ちなみにまだこれは仮説段階だからね。でも僕は個人的にシューマンはイっちゃってると思うけど。
2016-05-03 16:35:03