自然愛護モヒカン過激派と引退した戦士#1 夢の農場◆2

戦士を引退し農場主となり、悠々自適の生活を送るスキュラ。彼女は恐れていることがあった。それは、一つの大きな呪い。 平和な農場に奴らがやってきた……ヒャッハー! モヒカンの襲撃者だ! 全50ツイート予定 続きを読む
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減衰世界 @decay_world

_自然愛護モヒカン過激派と引退した戦士#1 夢の農場

2016-05-06 17:13:46
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_モヒカンの耳長族たちは次々と重機で農場に乗り込み、畑を巨大なタイヤでめちゃくちゃに踏み荒らしていく。大型蒸気エンジンの生み出す暴力に、なすすべなく逃げ惑う小作人たち。 「ヒャッハー! 大自然回帰!」 「やめろ……やめろー!」  キリサは慌てて農場に向かう。 11

2016-05-06 17:24:09
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_冬を越えた麦が綺麗に伸びていた農地。それが今や踏み荒らされて、全てが無に帰していた。それだけではない。  モヒカンの耳長族たちはトラックを乗り入れ、岩や砂礫を畑にばら撒いていく。これでは今年の収穫どころか、来年も……。 「大自然回帰! 大自然回帰!」 12

2016-05-06 17:30:35
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_リーダー格のモヒカンが、重機の上に立ち、拡声器で宣言する。 「我々は自然崇拝団体グリーン・グリーン! この土地はかつて豊かな自然があった場所! それを開墾し、人の身勝手な文明によって汚すことまかりならん! 大自然に回帰すべし!」  彼らは自然崇拝過激派だ。 13

2016-05-06 17:38:16
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_翡翠台地の豊かな自然を崇拝するあまり、人間によって開発された土地を憎み、開墾前の姿に戻していくというエコテロリストたち。文明の利器である重機を活用しているという矛盾をはらんだ存在であるが、彼らは気にせず土地を荒らしていく。  その矛先が、偶然キリサの農場へ向けられた。 14

2016-05-06 17:44:07
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_思う存分土地を荒らしたモヒカンたちは、満足げに去っていく。 「ヒャッハー! 今日も大自然に回帰したぜ!」  小作人たちは呆然と農場の跡を見るしかできなかった。その後、話し合いをして、小作人たちは去っていった。彼らにできることは無く、キリサの農場再建に付き合うこともない。 15

2016-05-06 17:48:59
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_僅かだが退職金も払えた。誰も残らなかったがキリサは恨まなかった。それが普通なのだ。彼女は経営を家族と勘違いしてはいない。仕事が無くなれば、去る。新しい問題が生まれれば、新たに雇う。少なくとも、翡翠台地ではそうだった。  モヒカンたちはキリサの家までなぎ倒していった。 16

2016-05-06 17:53:01
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_暴力というものは、めったに起こるものではない。しかし、時として、くだらない主義主張やねじ曲がった価値観の下で容易く暴力は振るわれる。 (まいったな、こりゃー)  廃材をかき集めて焚火をするキリサ。雨が降っていたら最悪だったが、幸いにも満天の星空だ。 17

2016-05-06 17:57:57
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(夢が最高潮になるまで待ってから、潰さなくったっていいじゃないかー)  キリサはかつての呪いを思い出した。夢が潰えること。何度でも踏みにじられること。とりあえず、自治体に泣きつけば当面の暮らしはできそうだ。ただ、裁判で勝てるかは分からない。 18

2016-05-06 18:02:14
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_自然崇拝団体のバックには著名人や富豪が控えており、資金があり、訴訟に慣れている。まともにぶつかって負けるのはこちらだ。キリサは裁判を続ける金も体力も無くなっていくのが容易に想像できた。 (もう、終わりなのかー) 19

2016-05-06 18:10:04
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_終わり。その言葉が、キリサを奮い立たせた。戦場の空気を思い出したのだ。戦場では、絶望したものから死んでいった。最後まであがいたものの中で、運のいいものが生き残ったのだ。 「明日もがんばりまっしょい!」  そう言って、キリサは身を投げるように寝た。 20

2016-05-06 18:15:35
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_自然愛護モヒカン過激派と引退した戦士#1 夢の農場 ◆2終わり ◆3へつづく

2016-05-06 18:21:10
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【用語解説】 【星空】 天空の神の座が光って見える物。天空を覆うように、魔力が結晶したドーム状の天球が存在し、そこに神が腰かけているのである。神々はそれぞれ遥か大宇宙のエネルギーの受容を行うため、特定の位置に割り当てられている。そのため、星座を通して大宇宙を探る試みがなされてきた

2016-05-06 18:26:55