座敷鎮守府「欧州難民船団護衛編」◆艦これSS◆その2

座敷犬 @zash_dog

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Sorry to keep you waiting,thanks for waiting. #座鎮

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The White Stripes - 'Seven Nation Army' youtu.be/0J2QdDbelmY @YouTubeさんから

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口では何とでも言える。しかし、実の所僕は不安で仕方なかった。木曾の背中を見つめる度。彼女が「俺を信じろ」と屈託の無い笑顔を見せる度に。募っていた。それでも本当の事は言えなかった。言葉にしてしまえば何もかもが台無しになってしまう気がして。 #座敷鎮守府

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黒木大尉達が戦闘映像などの記録をまとめてくれていた。まがたまのブリーフィングルームに、ここまでの彼女たちの戦いが映し出される。凄惨と壮絶のモンタージュ。水平線の向こうとの間で交わされる曳光弾のやり取り。墓標のように浮かぶ艤装を抱える艦娘の姿。 #座敷鎮守府

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「アンタ達――ほんとに人間なの？」戦死者のリストを捲りながら駆逐隊旗艦の叢雲が、近くに居たジルヴィア・ティーレマン――駆逐艦Z1の「装着者」に問う。「――うん」プラチナブロンドの少女が、間を空けて頷く。彼女が自分の胸の名札を一瞥していたのは、多くの目に映っただろう。 #座敷鎮守府

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セイレーン・モデル。人と艦を無理やり繋ぎ戦力とする狂気の一手。そのリスクは凄まじい――同じ事をやった女を僕は知っている。そして護衛艦隊の「艦娘」達も、アイデンティティを消耗し尽くそうとしていた。休憩時間を置き、ルームの外に居たジルヴィアに話し掛ける。 #座敷鎮守府

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「元々ぼ、私は金髪でした――でもアレを付けてから、急に色が落ちてきて」彼女は語る。「あんなに好きだった髪も、私には、似合わない気が、してきて、」声が震える。――すまなかった。 #座敷鎮守府

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「■■大佐」声を掛けてきたのはハンナヴァルト大尉だった。咳き込んでから、続ける。「皆、そう長くはないわ――私も」悲観しないで下さい。「希望を持ち続けるのも疲れるのよ――特に戦う身だと」――僕たちは希望を守る為に来ました。「覚えておいて」 #座敷鎮守府

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「生きる事と、物理的な命を保ち続ける事は違うわ。例え死んでも、誰かの中に残り続けていればそれは生きている事と同義よ」もしもの時は、と言いたいのか。「信じているのよ、あなた達を」大尉が笑う。僕の問いには答えずに。「でも、戦えるなら、私達は戦い続けるわ。それは皆一緒」 #座敷鎮守府

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物理的生命の継続に関わらず、人の生は続く。超自然現象・存在と向き合い続けてきた僕が何度もつきつけられてきた価値観だ。僕にとっては忌々しくすら感じられる――こんな価値観の元、皆自分の命を使おうとしてしまう。それを防ごうと戦い続けているつもりだが。 #座敷鎮守府

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端末を弄りながら、かの現代駆逐棲鬼――ヴァリー・フォージの対処に悩む。作戦会議と言っても格式張ったものじゃない。各々が自由に意見を交わしたり、情報を共有したりしている。「ありゃ何だよ、提督」摩耶が声を掛けてきた。「アレ」？「あいつらの噴進弾全部落としたあれだよ」 #座敷鎮守府

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アルゴスCIWSの事か。「あるご……？それが分からないって言ってんだろ」異口同音にこちら側の艦娘から声が上がる。説明しなければ駄目だろう。レー、光を使った機銃の一種だ。「光だぁ？」そうだ。砲弾は無理でも低速の航空機やミサイルなら迎撃できる。 #座敷鎮守府

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「私たちが艦だった頃からして、まるで信じられませんね」鳥海が言い、神通が頷く。「じゃあニュージャージーを中破させたのも光？」あれはヴァリー・フォージの主砲だ。炸薬ではなくローレンツ力……電気の力で砲弾を撃ちだすんだ。「口径は……？」51mm。皆の顔が青くなる。 #座敷鎮守府

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その他にもUCAV――自律式の無人特攻機やミサイル(これは皆分かっている)を大量に搭載している。戦艦でも正面からアレと戦えると聞かれると――厳しい。「その『正面以外』を考えるのがあなたの仕事でしょ」陸奥が言い長門が頷く。「殴り合うのは私たちだ、嫌な事を言う」 #座敷鎮守府

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「無人特攻機ねぇ……」木曾を始め、皆が嫌な顔をする。散々特攻機とは戦っているが、その忌避感は誰の心からも薄れてはいない。「雨が降らないと良いけれど――」翔鶴が呟く。「私達だけ艦載機を飛ばせないのは嫌です」大鳳が付け足す。雨――それだ。 #座敷鎮守府

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――翔鶴、大鳳には悪いが、今回は寧ろ雨を利用させてもらう。酷く怪訝な顔をされるが、仕方ない。まがたまのVLSには数発だが人工降雨弾頭が装填されている――不安定な気候の中で降雨を得るための物だ。ドライアイスとヨウ化銀を上空でバラ撒く事で降雨を促す。 #座敷鎮守府

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これによって敵の迎撃能力を弱体化させ、アイオワ級からのハープーンSSMを命中させる。彼女らのミサイルによる攻撃は有効打になる筈だ。「そのアイオワ達がこの場に居ないん(の)だけ(れ)ど(が)？」四人の声が被る、天龍、龍田、鈴谷に熊野。――彼女らは整備中だ。 #座敷鎮守府

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兎に角日本・ドイツ組で決めるべき事を決めた。駆逐隊が船団を守り、長門と陸奥、ハンナヴァルト大尉がヴァリー・フォージの注意を引く。巡洋艦たちは臨機応変に対処――要するに行き当たりばったりだ。この話をエイハブ達に伝える為に、再びスーパーユニバースに戻る。 #座敷鎮守府

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向かうは格納庫の一角、「仮設ドック」と銘打たれた一室。事前に受け取っていたカードキー――生身の僕は機体のあらゆるドアに通す必要があった、をそのドアに通す。――暗い一室。4つのカプセル。それを見つめる二つの人影。「――ッ」エイハブ、あきつ丸。 #座敷鎮守府

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「いずれは提督殿にも見て頂かなければならない物。ならばこの場で――こちらへどうぞ」あきつ丸が手招きする。エイハブも不承不承頷く。部屋の奥へと歩を進める。溶液に満たされた透明な円柱の中には――編み細工でできた人型。決してアイオワ達等ではない。 #座敷鎮守府

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「これが合衆国の限界です、彼女たちは完全に受肉している訳ではない」エイハブが苦々しく言う。「『ウィッカーマン・フィギュア』、でしたかな？ 米軍が開発した霊魂憑依装置、それを高速修復材に漬け、初めて彼女らの魂は安定して現界できる」 #座敷鎮守府

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今すぐにいつもの姿になれるか？「現界状態への移行は3時間程時間が掛かります、それまで待って頂ければ――」遮るように警報が鳴る。僕の抱える端末も、震える。《大佐、深海棲艦の反応を検知しました。至急CICまで――》言われるまでもない。熾烈な戦いが始まる事は明らかだった。 #座敷鎮守府

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