【シンデレラ・ヘイヴン】
「俺の存在はアンタらみたいなヤツにしか感知できないが、アンタらは違う。なんていうかな、俺は薄いんだ。全体の一割くらいしかここにはない。でもアンタらは、九割をこっちに持ってきてる。だがその中心の核となる部分だけは置いてきてる……みたいな、そんな感じなんだ」 16 #nltkst
2016-08-29 21:31:15ルークの説明を受け、ねこが頷く。「うん、やっぱりミヤコ幼稚園で何かが起こったんだ。そして、私達の存在は外側だけ遠くへ飛ばされた……中心だけ残して。もしかしたら、他のみんなも同じような状況にあるのかも。はやくなんとかしないと」 17 #nltkst
2016-08-29 21:34:18「でも、なんとかって? こうなった原因も、帰る方法もわからないのに」「そこをなんとかしなきゃ……」二人がこそこそと話していると、ルークが言った。「これからとある人物に会わせてやる。俺の事は忘れて、とりあえずそいつに話を聞いてみな」18 #nltkst
2016-08-29 21:37:403人は閑散とした大通りを行き、一軒のバーへと辿り着いた。明滅を繰り返すボロボロのネオン看板には『情』の文字。ルークは身振りで二人に入るように伝えて、どこかへと歩いていった。「ええと、おじゃまします……」 19 #nltkst
2016-08-29 21:40:48店内は静まり返っていて、扉のギィという音だけが反響する。カウンターの向こうで死体めいて眠っていた男が目を覚まし、二人を見た。その顔には驚愕の色が浮かび、すぐに眩しいほどの笑顔になる。「ああ、なんだ、客か!久しぶりだなぁ!ささ、座ってくれ」 20 #nltkst
2016-08-29 21:44:01男はグラスを綺麗に拭くと、ミネラルウォーターを注いで二人に差し出した。彼がなにか動くたびに、金属の軋むような音が響く。「いやあ、ほんと客なんて久しぶりだ!……ん?いや、確かさっきにも、ああ、ダメだ、記憶がもう保たねえんだ、ダメだこりゃ」 21 #nltkst
2016-08-29 21:47:16男は頭をポリポリと掻いた。その指の合成樹脂は剥がれ、フレームが剥き出し。全身義体。「俺はジョー。この酒場の主だ。俺はすぐに忘れちまうけどな、アンタ達はきっと覚えててくれよ」ジョーはそう言って笑い、二人にミネラルウォーターを差し出した。 22 #nltkst
2016-08-29 21:54:16「で、お客さん、なにを求めてここに来た。なにか理由があるんだろ。ここの客はみんなそうさ。さあ、訳を話してみな」ジョーは新しいグラスに水を注ぎながらそう言った。「えっと、あー……この街! この街について教えて」 23 #nltkst
2016-08-29 21:54:25「この街か……あー、ここは灰被りの街、シンデレラ。犯罪なんて日常茶飯事、みんな明日を生きることに必死だからな。でもまあ、悪いやつばっかりじゃねえ。俺をみてみろ! けっして悪人じゃあありゃしないぜ!」 24 #nltkst
2016-08-29 21:58:44ジョーは自らの胸を叩くと、笑顔で二人にミネラルウォーターを差し出した。「しかしなあ、それも昔の話だ。今じゃこの街に人はほとんどいない。とある事件がきっかけで、街には殺人ロボット共が彷徨いてんのさ。みんなそいつらにやられたか、長い時間の流れの中で消えた」 25 #nltkst
2016-08-29 22:03:41「でも俺はまだ生きてここにいる。それはな、このことを街に立ち寄った旅人に伝える為だ。アンタ達もさっさとここを出て行った方がいいぜ。……ああ、こんな話、ついさっきもした気がするな……あれはいつの話だったか……」「いつって、ほんとについさっきですよ」 26 #nltkst
2016-08-29 22:07:57突然の声。ねことルナの二人は、同時に後ろを振り向いた。ドアの近くの席に人影。入ってきた時は気がつかなかったが、ずっとそこに座っていたのだ。その者は右手に握った空っぽの銃で、目深に被ったカウボーイハットを持ち上げた。赤い瞳が二人を射抜く。 27 #nltkst
2016-08-29 22:11:47その長く艶やかな紅の髪は二つに分けて結ばれ、カウボーイハットからは猫耳めいたものが飛び出している。やや見覚えのある容姿に、なにか思い当たったねこは叫んだ。「その姿……なっ、なごちゃん!?」「……なぜ私の名前を?」 28 #nltkst
2016-08-29 22:15:38二人はカウンターから立ち上がり、くりなごめいた存在の方へ移動する。「やっぱりくりなごちゃんだよね? どうしてここに? 私のことはわかる? ねこだよ」「オレはルナだ」二人に捲し立てられた少女は、甘酒を一口飲み、サーモンに箸を伸ばした。「まあまあ、落ち着いて」 29 #nltkst
2016-08-29 22:19:47「私がくりなご?ええ、それはもっともです。ですが、あなた達のことは知りません……しかし、知り合いととてもよく似ている……」くりなごは考え込み、一つの結論に至った。「つまり、別次元のミヤコ幼稚園?」「そういうことになるのかな……」 30 #nltkst
2016-08-29 22:23:42「ところで、くりなごちゃん……ややこしいな……くりなごオルタちゃんは、なんでこんなところに?」「ええと、気がついたらここにいて……」「オレたちと同じだな!」3人は視線を交わし、頷いた。「「「協力して帰ろう!」」」 31 #nltkst
2016-08-29 22:27:00甘酒とサーモンw 赤い髪のオルタ存在…導入役やオチ役に定評があり、ある程度の説得力(?)を持たせつつも通常なごちゃんとは別な動きが出来るアレンジなごちゃんはやはり妙手だ。 #nltkst
2016-08-29 22:31:08