tukinohaさんの『桜が作った「日本」』評

全体性を否定する全体性の記述について
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tukinoha @tukinoha

佐藤俊樹『桜が創った「日本」』を読了。国民国家論、創られた伝統論は最近食傷気味で、佐藤本もその手の本かと思い敬遠していたのだが、実際読んでみると「メタ言説論」というか、言説論の困難さに正面から取り組んだ良書だった。

2011-02-27 22:17:55
tukinoha @tukinoha

たとえば、ソメイヨシノが「日本」と重ね合わされていくのに対し、よくある議論では「地域によってはソメイヨシノが育たない」などと反論する。しかし、植物にとって生育に適した条件があるのは当たり前であって(続く)

2011-02-27 22:25:33
tukinoha @tukinoha

「日本のある地域で育たない」と言えるのは、本来なら日本ならばどこでもソメイヨシノが育つはずだという観念の裏返しでしかない。つまり日本の均質性を前提に置いているから、その均質性を裏切るようなものを日本の象徴とすべきではない、と言っているにすぎないのだ。

2011-02-27 22:26:39
tukinoha @tukinoha

このようなメタ言説論を基調とする佐藤の議論は、当然のことながら「で、結論は何?」という疑問を招く。全体性を批判しながら密輸入するような、よくある言説論を批判する以上、いかなる全体性も実体的に描くことができない。しかし、何らかの全体性を前提としなければ論述そのものが不可能になる。

2011-02-27 22:30:03
tukinoha @tukinoha

よって、自分が前提とする全体性を、自分自身で裏切っていくという論述方法をとることになる。これは遠藤知巳が「言説分析とその困難」で書いていたことだ。佐藤『桜が創った「日本」』は、その実践例として読むことができるだろう。

2011-02-27 22:32:07
tukinoha @tukinoha

そういう論述方法で書かれた内容に、どういう価値があるのか、ということは当然問われなくてはならない。案外、全体性のことなんて何も考えず、素朴に書いてしまった方が面白いんじゃないの、と思わなくもない。佐藤本の議論の屈折ぶりをみるとなおさらのこと。

2011-02-27 22:33:49
tukinoha @tukinoha

何にせよ言説分析を用いた本としては稀に見る良書なので、みなさん読むよろし。

2011-02-27 22:34:52
tukinoha @tukinoha

佐藤本と輪島裕介『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』などと比較してみるのも面白いだろう。言説分析が陥りがちな罠がよくわかると思う。

2011-02-27 22:49:30
tukinoha @tukinoha

「「伝統と創造」を政治標語に掲げ、日本の伝統や歴史や文化、価値観を重んじ」る「保守」の立場を正当化するため、それが「世界中の他の諸国ではごく自然な「正常」であり、「普通」で」あることを持ち出すのって、端的に矛盾じゃない?http://bit.ly/hc0nRd

2011-02-27 23:04:15
tukinoha @tukinoha

『メタヒストリー』が翻訳出版されたのかと思って焦ったけど、全然そんなことはなかったぜ!

2011-02-27 23:25:42