東大病院放射線治療チームによる「内部被ばくと福島の"牛乳問題”の解説」

東大病院で放射線治療を担当するチームによる内部被ばく問題と、3月16日16時過ぎに行われた枝野官房長官に端を発する「福島県産牛乳問題」の医学的見地からの解説。
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東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

内部被ばくが実際にどの程度の影響があるのか、という質問が多いので、それについてご説明します。

2011-03-19 14:59:50
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

私たちは、大気、大地、宇宙、食料等からも日常的に放射線を浴びています。これを「自然被ばく」といいます。放射性物質を含む水や食物を体内に取り込むと、体内の放射性物質が、体内から、放射線を発します。この日常的な水や食物からの内部被ばくは、主にカリウムによるものです。

2011-03-19 15:00:34
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

私たちは、大気、大地、宇宙、食料等からも日常的に放射線を浴びています。これを「自然被ばく」といいます。放射性物質を含む水や食物を体内に取り込むと、体内の放射性物質が、体内から、放射線を発します。この日常的な水や食物からの内部被ばくは、主にカリウムによるものです。

2011-03-19 15:00:34
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

カリウムは、水や食物などを通して、私たちの体の中に取り込まれ、常に約200g存在します。 その内の0.012%が放射能を持っています。すなわち日常的に360,000,000,000,000,000,000個の ”放射性”カリウムが、体内に存在しています。

2011-03-19 15:00:53
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

”放射性”カリウムは、体内で1秒間当たり6,000個だけ、 別の物質(カルシウムまたはアルゴン)に変わります。 これを「崩壊」と呼んでいます。

2011-03-19 15:01:19
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

そして、崩壊と同時にそれぞれの”放射性”カリウムが放射線を放出します。これが内部被ばくの正体です。 1秒間あたり6,000個の崩壊が起こることを、6,000Bq(ベクレル)と言います。

2011-03-19 15:01:32
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

例えば今、”放射性”ヨウ素が、観測によって各地で検出されています。その”放射性”ヨウ素が含まれた水を飲むと、内部被ばくが起こります。この影響はいったいどれくらいでしょうか?

2011-03-19 15:01:45
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

福島原発から約60km離れた福島市の18日の飲料水に含まれていたヨウ素の崩壊量は、最大で1kgあたり180Bq(ベクレル)でした。1秒間に180個の崩壊が起こっているということです。

2011-03-19 15:01:58
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ヨウ素が甲状腺に取り込まれる割合を20%とし、その放射能が半分になる日数を6日と仮定できます。 現在の福島市の水を毎日2リットル飲み続けると、720Bq(ベクレル)の内部被ばくを受けることになります。

2011-03-19 15:02:33
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

現在の福島市の水を毎日2リットル飲み続けると、720Bq(ベクレル)の内部被ばくを受けることになります。これは、先ほどのカリウムによる日常的な内部被ばく(6,000Bq [ベクレル])の8分の1以下です。

2011-03-19 15:02:59
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

もちろん、取り込まれ方や崩壊の仕方はカリウムとヨウ素で異なるので、正確な比較ではありませんが、今観測されている放射性物質の影響をこのように見積もることができます。

2011-03-19 15:03:19
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

食品についての放射能の測定が始まっており、牛乳などから、わずかな放射能が検出されたと報じられています。しかし、「牛乳問題」は“期間限定”です。そもそも、なぜ、牛乳が問題になるか、順に解説していきます。

2011-03-19 17:09:35
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

史上最大の放射事故であるチェルノブイの原発事故では、白血病など、多くのがんが増えるのではないかと危惧されましたが、実際に増加が報告されたのは、小児の甲状腺がんだけでした。なお、米国のスリーマイル島の事故では、がんの増加は報告されていません。

2011-03-19 17:10:27
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

放射性ヨウ素は、甲状腺に取り込まれます。これは、甲状腺が、甲状腺ホルモンを作るための材料がヨウ素だからです。なお、普通のヨウ素も放射性ヨウ素も、人体にとっては全く区別はつきません。物質の性質は、放射線性であろうとなかろうと同じだからです。

2011-03-19 17:10:58
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ヨウ素は、人体には必要な元素ですが、日本人には欠乏はまず見られません。海藻にたっぷり含まれているからです。逆に、大陸の中央部に住む人では、ヨウ素が足りたいため、「甲状腺機能低下症」など、ヨウ素欠乏症が少なくありません。

2011-03-19 17:11:33
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

チェルノブイリ周囲も、食べ物にヨウ素が少ない土地柄です。こうした環境で、突然、原発事故によって、ヨウ素(ただし、放射性ヨウ素)が出現したので、放射性ヨウ素が、住民の甲状腺に取り込まれることになりました。

2011-03-19 17:12:26
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

ヨウ素(I2)は水に溶けやすい分子です。原発事故で大気中に散布されたヨウ素は、雨に溶けて地中にしみ込みます。これを牧草地の草が吸い取り、牛がそれを食べるという食物連鎖で、放射性ヨウ素が濃縮されていったのです。野菜より牛乳が問題なのです。

2011-03-19 17:12:40
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

結果的に、牛乳を飲んだ住民の甲状腺に放射性ヨウ素が集まりました。放射性ヨウ素が出す“ベータ線”は、高速の電子で、X線やガンマ線とちがって、質量があるため、物とぶつかるとすぐ止まってしまいます。

2011-03-19 17:12:51
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

放射性ヨウ素(I-131)の場合、放射されるベータ線は、2ミリくらいで止まってしまいますから、甲状腺が“選択的”に照射されるわけです。放射性ヨウ素(I-131)を飲む「放射性ヨウ素内用療法」は、結果的には“ピンポイント照射”の一種だと言えます。

2011-03-19 17:13:02
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

子供たちは、大人よりミルクを飲みますし、放射線による発がんが起こりやすい傾向があるため、小児の甲状腺がんがチェルノブイリで増えたのでしょう。ただし、I-131の半減期は約8日です。長期間、放射性ヨウ素を含む牛乳のことを心配する必要はありません。

2011-03-19 17:13:16
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

I-131は、ベータ線を出しながら、“キセノン”に変わっていきます。(ベータ崩壊)8日が半減期ですから、I-131の量は8日で半分、1ヶ月で1/16と減っていきます。3ヶ月もすると、ほぼゼロになってしまいますから、「牛乳問題」も“期間限定”です。

2011-03-19 17:13:40