死ぬのがこわくなくなる話 第23話

Twitter上で連載中の渡辺浩弐さんの長編小説をまとめました。
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渡辺浩弐 @kozysan

http://t.co/2xTtQbr 石のお墓より、こういう場所の方がすてきですね。

2011-09-04 00:05:35
渡辺浩弐 @kozysan

団鬼六さんのbotが、ご本人の逝去後も生き続けていて、ファンとしてはとても嬉しいです。

2011-09-04 00:06:04
渡辺浩弐 @kozysan

団鬼六さん御達者です。死してなお。

2011-09-04 00:09:23
渡辺浩弐 @kozysan

人気アイドルが死んだ後で、そのアイドルのbot がつぶやき続けたら、救われる人も多いことでしょう。

2011-09-04 00:09:43
渡辺浩弐 @kozysan

さらに進めて、こういう考えはどうだろう。例えばあなたがとても大事に思っている誰かが死んで、寂しさに耐えられなくなったとする。その人を生き返らせる、もしくは死ななくさせる方法がある。

2011-09-04 00:10:02
渡辺浩弐 @kozysan

あ、実は『しぬこわ』始まってます。今夜も楽しく考えを深めましょう。

2011-09-04 00:10:16
渡辺浩弐 @kozysan

相手のタイムラインをずらしてしまうってことです。その人が30歳で死んだのなら、10年前、その人が20歳の時に、時間を巻き戻す。昔からブログなどを書いている人だったら、とても都合がいい。それを、10年前のところから毎日順繰りに、あなたのパソコンに表示させればいいのだ。

2011-09-04 00:10:39
渡辺浩弐 @kozysan

毎日書かれていなくても、構わない。ただ、その時の、20歳の頃の、あるいは3年後には23歳の時の相手の姿を、あなたがありありとイメージできればそれでいいのである。

2011-09-04 00:10:53
渡辺浩弐 @kozysan

ブログも日記も書いていなくても、いい。その時の相手の写真でも、ビデオでも、あるいは第三者の記録に出てくる彼の様子でも、何でもいい。もう一度時系列に再生しなおす。順番に1日分だけを、その1日に確認する。

2011-09-04 00:11:12
渡辺浩弐 @kozysan

今のあなたを、今からちょうど10年前の相手と、照合し続けるのである。10年たってまた相手が死んだら、また、10年、巻き戻す。それをずっと続ければいい。相手の時間と自分の時間をいつまでも重ね続ける。これで、その人は、死んだことにならなくなる。

2011-09-04 00:11:26
渡辺浩弐 @kozysan

今はその人はいないじゃないか、時間がずれてるじゃないか、という指摘なら、間違っている。

2011-09-04 00:11:39
渡辺浩弐 @kozysan

現在、ツイッターのほんの数行の書き込みからでもあなたはその人が今この瞬間に生きていると実感する。しかしそれは錯覚だ。その書き込みからはすでに時間が過ぎている。

2011-09-04 00:11:58
渡辺浩弐 @kozysan

たとえその人が生きて、あなたの目の前にいたとしたも、その姿を見てその声を聞いたとしても。それは相手の実像ではない。その人の皮膚や服を反射した光があなたの眼球に届くまでに時間がかかっている。そしてその信号が脳に届きあなたの意識に像を結ぶまでに、0.1秒から0.5秒程度の時差がある。

2011-09-04 00:12:22
渡辺浩弐 @kozysan

目の前にいる相手が生きていることをあなたが意識しているその瞬間、もしかしたら相手は弾丸に頭蓋骨を打ち抜かれて死亡しているかもしれないのだ。

2011-09-04 00:12:57
渡辺浩弐 @kozysan

その相手と直接関われない、触れ合うこともできないから、信じ込むなんて無理だ。そんな反論も、間違いだ。

2011-09-04 00:19:17
渡辺浩弐 @kozysan

そもそも、あなたがその人とリアルタイムで関わっていたというのは、錯覚だ。どんなに愛していても、あなたはその人になることは、ない。その人の痛みをその通りに感じることも、その人の悦びをまるごと知ることも、できはしない。これからも、未来永劫、ない。

2011-09-04 00:19:46
渡辺浩弐 @kozysan

一緒にいたとしても、どんなに近くにいてどんなに親しくしているとしても、あなたはその人の内部に入り込むことはできない。たとえセックスをしても、それはお互いにオナニーをしているのとかわりはしない。

2011-09-04 00:26:31
渡辺浩弐 @kozysan

大事なことなのでもう一度いいます。セックスは、お互いにオナニーしているだけなんですよ。

2011-09-04 00:27:01
渡辺浩弐 @kozysan

相対性理論が証明していることは、存在する場所が違えば時間も違うということだ。別々の場所にいる、だけではなく、別々の時間帯にいるのと、同じことなのである。そして1億分の1秒違えばそれは1億年違うのも同じだ。

2011-09-04 00:27:30
渡辺浩弐 @kozysan

つまりタイムラインは、そもそも、その人に固有のものなのだ。どんなに近くにいる人だろうと、肉親だろうと。自分と他人は別の生命、別の時間を過ごしている。

2011-09-04 00:27:44
渡辺浩弐 @kozysan

強く思い入れをしている相手とは同じ時空にいる。あるいは、いつの日か一体化できるかもしれない。そんな錯覚があるから、その相手が死んだ時に不思議な気分になるのだ。

2011-09-04 00:28:07
渡辺浩弐 @kozysan

自分が生きてるのに、その人が死んでるなんて、どういうことだ。あんなに親しくて、あんなに近くにいたのに。今はどこにいてどんなものを見てどんなことを感じているというのだろう、と。だから、きっとまだ天国に生きてるんだろう、なんておかしな想定が生じる。

2011-09-04 00:28:26
渡辺浩弐 @kozysan

時間軸とはそもそも人間が勝手に想定したものだ。、同じ時期に生きていたところで、生まれてから死ぬまで、人と人は完全に別々の存在なのだ。他の誰かが……例えば肉親や親友や恋人が、今ここに生きていても、1000年前に生きていても、1000年後に生きていても、同じことなのである。

2011-09-04 00:28:50
渡辺浩弐 @kozysan

今夜の思考実験は、ここまでです。つづきます。

2011-09-04 00:29:24
macgirl360 @macgirl360

@kozysan 私の実家が石材店なので、墓石よりもという意見は正直複雑な気持ちですが、故人への偲びを多くの人と場所と時間を超えて共有できるという面は、たとえそれが故人や遺族が望むべき形でなかったにせよ、当人が前向きになれるなら悪くない行動だと思いました。

2011-09-04 00:14:54