死ぬのがこわくなくなる話 第27話

Twitter上で連載中の渡辺浩弐さんの長編小説をまとめました。
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渡辺浩弐 @kozysan

『死ぬのがこわくなくなる話』昨日の続きから。このサイトにおいては、生者と死者を分けない。あなたがそこにいったん開設したページは、あなたの死後もずっと運営され続ける。

2011-09-08 00:37:16
渡辺浩弐 @kozysan

そのページには、生前、縁があった知人達が訪れることだろう。あたかも、お墓参りのように。

2011-09-08 00:37:38
渡辺浩弐 @kozysan

そうだこれは、「お墓」の最新形態なのだ。復活を前提とした墓という意味では、「ピラミッド」に近いものと言える。

2011-09-08 00:38:04
渡辺浩弐 @kozysan

膨大な個人データを集積するシステムが稼働するとしたら、そこには、無機物で作られた墓に優るリアリティーが出現する。そこにはあなたの記憶アーカイブや思考ルーチンがそのまま存在するわけだから、友人や遺族はそこで、疑似人格と会話することになる。

2011-09-08 00:38:35
渡辺浩弐 @kozysan

彼らはあなたが死者であることを意識することはない。それどころか、そもそもあなたの死に気づかないかもしれない。それでいいだろう。何の支障があるだろうか。

2011-09-08 00:38:55
渡辺浩弐 @kozysan

そしてもう1点。このサイトは、データをどう取り扱うか、予約設定ができる。個々のデータを公開する範囲と、その相手と、タイミングを、生きているうちにできる限り細かく細かく設定しておく。それだけで、バーチャル化された自分に、死後も活動を続けさせることができるということになるのである。

2011-09-08 00:40:32
渡辺浩弐 @kozysan

それらはデータファイルごとに「『現在すでに公開されているもの』『死後、公開されるもの』『死後、削除されるもの』『死後、一定の時期に順次公開されるもの』『死後、特定の人物に自動送信〜譲渡されるもの』『死後、本人の復活(後述)まで秘匿され続けるもの』」……といった設定がなされる。

2011-09-08 00:41:15
渡辺浩弐 @kozysan

生前にセットしておいて特定の日時に遺族や友人全員に対してメッセージやデータを送ることができる。例えば、毎年、自分の命日に、自分のBBSに友人を集めてパーティーを行うとか。

2011-09-08 00:41:59
渡辺浩弐 @kozysan

あるいは、遺した子供に対して5年後、10年後、15年後、と、成長に合わせてのビデオレターを送るというのはいかがだろう。夫や妻といった近親者に対しては、見られたくないものは自動消去をセットしておく。逆に死後だからこそ告白できることは時期を決めてメール送信を予約しておく、などなど。

2011-09-08 00:42:28
渡辺浩弐 @kozysan

そんなふうに、肉体的な死後もあたかもその人が生き続けているようにページは稼働し続けるわけだ。膨大な個人データはその人物の分身として考えることができる。それをアクティブに稼働させ続けることは、一個の人間をネットの中で擬似的に延命させることである。    つづきます。

2011-09-08 00:42:55