【再放送】マグロ・サンダーボルト #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「IRC……」ハシバはポケットの中で震動し続けていたIRC端末を取り出した。表示されたメッセージを見て、彼の電脳トリップは一発で吹き飛んだ。ジェイクを始末して、今日の彼の業務は終了したはずだった。だがこの数時間のうちに、組長イシイ・ウェイダからの通信が何度も入っていたのだ! 16

2022-11-02 22:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ハシバです」「ハシバテメッコラー!」ウェイダの痛烈な怒声が浴びせられる!ただならぬ事態だ!だが何を言っているのかは、ハシバには理解し難かった。彼が装置をセットしたのはジェイクではない?ニンジャスレイヤー?戦争?「…ファック?」ハシバは混乱し一旦IRC端末を切った。 17

2022-11-02 22:21:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

直後、ハシバは、自らが置かれた立場の危険さだけを認識する!「オゴーッ!」くずおれ嘔吐!全身が氷のように冷たくなり、凄まじい吐き気と緊張感がハシバを襲う!「オイ、どうなってんだ」彼はまだ左右に浮かんで見えるサイバーイルカに語りかける!「オイ、あれは確かにジェイクだったよな?」18

2022-11-02 22:24:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『サイバネに溢れたこの世界で、ジェイクかどうかを精確に定義するのは難しいね』「じゃあどうすんだ」『ソンケイを信じるんだ』「つまり俺が奴をジェイクだと認識した事が重要なわけだろ」『そうさ』『彼が俺はジェイクじゃないって言っても、彼自身にそれは証明できないんだ』「そうだよな!」 19

2022-11-02 22:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシバは……おお、その電脳麻薬逃避者は、再びIRC着信を取った。「ハシバテメッコラー!」「ウェイダ=サン。ブッダに誓って、俺はマジでジェイクの野郎を捕えて、あのクソ装置を取り付けたんです」「ケジメ逃れの方便かコラー!開き直ってんじゃねえぞテメッコラー!何がクソ装置だコラー!」20

2022-11-02 22:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウェイダ=サン、いいですか、落ち着いて。怒りはもっともです」ハシバは左耳に端末を当て、右手で小さくチョップを行い、自らを説得するように言った。「でも俺はマジでジェイクを捕えたんですよ。それが一瞬でニンジャスレイヤーだかになった?つまり、こうだ、ジェイクがニンジャスレイヤー」21

2022-11-02 22:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ラリッてんじゃねえだろなハシバテメッコラー!いいからとっとと事務所出てこいテッメコラー!」ウェイダは受話器を叩きつけ通信を切断した。「フゥーム……」ハシバは深い息を吐き、クソのような一日を反芻し、思案した。そして小刻みに震えながら、口元を押さえた。「やべえな、チクショウ」 22

2022-11-02 22:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシバはZBR煙草を吹かし、座り込んで思案した。「やっぱり直結はすごくアブナイだったのでは?」ハッカーが案ずる。直後、ZBRがスパークした。「やべえぞ!」ハシバは目を大きく見開くと、ハッカーを突き飛ばして走り出した!そして施設の裏に停めた私物のヤクザカマロを急発進させた! 23

2022-11-02 22:39:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あの剣幕は、ただ事じゃねえぞ!」冷たい夜風が、ハシバの顔を引き締める。ハンドルを握ってスピードを出すと、さらに頭が冴え渡ってきた!「ジェイクが偽物だってんなら、俺に最初に命令すべきは……ハシバてめえ!本物のラッキー・マザーファッキン・ジェイクを捕まえて来い!そうだろ?!」 24

2022-11-02 22:42:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

車は時速90キロを超え、スラム街交差点を危険なドリフトカーブ!「なのに何だ?ジェイクなんざもうどうでもいいような口ぶりだ!」『別の事で怒ってるんじゃないの?』『欲求不満なメル=サンの気を引こうとして電脳麻薬を渡してたのがバレちゃったのかな?』サイバーイルカの声が脳内に響く。 25

2022-11-02 22:45:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンアーッ!」同じ頃、邪魔なのでモニタ室から追い出されたイシダ・メリッサは、バスタブに蛍光ブルーのサイバージェルを入れ、脳内インストールした電脳麻薬でトリップしながら身悶えしていた。そしてIRC端末を操作する。「ブルー・メン・タイ、切れた……。ハシバの野郎に……連絡しないと」26

2022-11-02 22:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ファック!俺を誘う罠か!?解ったぞ、完全に解った!」ハシバは急カーブを決めながら、メルからの不可解なタイミングでの着信を拒否した。「ウェイダ=サンは狂って、俺を消すつもりだ!家に戻ってみろ!クローンヤクザが俺を御出迎えで、俺が次にあのクソ装置を括り付けられるって寸法か!」27

2022-11-02 22:51:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギャギャギャギャ!逃走用資金を調達するために自宅へ向かっていたヤクザカマロは、反対車線へと危険なドリフトカーブ!「おい、アベ」ハシバはIRCで部下を呼び出す!「ドーモ、ハシバ=サン」「ビジネスはどうだ」「芳しくないです」「そうか、てめえ、いま何処だ」「ルームランナーの店です」28

2022-11-02 22:54:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あそこか、悪くねえな」ハシバは頷きながらアクセルを踏み込む。「てめえに五年払いで300万貸してたろ」「ハイ」「利子つける代わりに返済延長してたよな」「ハイ」「あれな、今日返せ。今取りに行くから、用意しとけ」「無茶ですよ!」「無茶ですよじゃねんだコラー!誠意見せろコラー!」 29

2022-11-02 22:57:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ファック……何が起こってやがる……」アベは切断されたIRC端末を見ながら、掌に脂汗を滲ませた。ハシバの剣幕は異常だ。何かがおかしい。先程も別件で、クランの総合IRCチャネルを介し、ミカジメを先行振込するよう緊急指示が来たばかりだ。だが彼の如きレッサーヤクザに全貌は見えぬ。 30

2022-11-02 23:00:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アベはハシバを尊敬していた。むろん、昨今の彼が己の将来を憂いて電脳麻薬の罠にはまっていた事など、アベには知る由もない。かつてハシバは慢心やウカツとは無縁の偉大なグレーターヤクザであり、ソンケイとは何かを自ら体現し、裏社会に足を踏み入れたばかりのアベの面倒を見てやったものだ。 31

2022-11-02 23:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

確かなのは、カネが必要な事、そして自分のケツにも火がついている事だ。「トラタテメッコラー!」アベは肩をいからせて店内を歩き、客と暢気にIRC通話する店主を見つけて怒鳴った。導火線がバチバチと音と立てている。アベは今月のミカジメを全く徴収できていない。いわんや300万をや! 32

2022-11-02 23:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アベの怒りは爆発寸前だった。3分前、彼はバーガーを食し終え、ジョークまじりで手製巻き煙草を吸い終えた後、一転、ヤクザスラングを浴びせトラタを震え上がらせた。ナメた態度を取る相手に対し恐怖を刷り込む、典型的なヤクザ・メソッドを使ったのだ。だがそこへハシバの着信が入り中断した。 33

2022-11-02 23:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺とIRCどっちが大切だコラー!」アベはトラタの胸ぐらを掴んだ!トラタは受話器に手で蓋をしながら呻いた!「き、聞いてくれ、アベ=サン。デカい仕事だ!マジだ!ついに俺の努力が報われる時が来たんだ!裏の仕事じゃないんだ!最高級ルームランナーを至急買いたいって女がいるんだ!」 34

2022-11-02 23:12:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲホゲホッ!その女のトレーラーが店の前に来る!積んでセッティングしたら手間賃込みで200万だ!ヤッタ!ミカジメもこれで払える!な!?」「200万だと?」アベは耳を疑った。話がウマ過ぎる。違法店を摘発するマッポの罠では?だが何故マッポがルームランナーを?「……俺に代われ!」 35

2022-11-02 23:15:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、あんた、なんでこんな夜中にルームランナーが今すぐ必要なんだ」アベは警戒を怠らぬまま、IRC音声通話を行った。「貴方のビジネスじゃないでしょ。私は今すぐルームランナーが欲しいだけよ。信用できないなら前金を振り込むわ。10秒以内に返事をして。ノーなら切るわ」女の声だ。 36

2022-11-02 23:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((この女はマッポじゃねえ)))内なるソンケイがアベに告げた。(((そして何者かは解らねえが、この女はファッキン・シリアスだ。マジで即座にルームランナーを手に入れる覚悟だ。そうしねえと自分が死んじまうかのようなシリアスさだ)))アベは感服した。売ってやろう、と結論づけた。 37

2022-11-02 23:21:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「切るわよ」「300万だ」「いいわ」「100万前金で振り込んでくれ」「いいわ」100万円が即座にトラタ・ハリマナカの運動機器とビデオの店に振り込まれた。キーを連打してUNIX画面を睨み、冷や汗を垂らしながら、トラタがアベに無言で頷いた。「よし、何時に来るんだ?」「3分後よ」 38

2022-11-02 23:24:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

実際3分後、謎のコーカソイド女を助手席に乗せた冷凍マグロ運搬小型トレーラーが、アスファルトに火の跡を刻むほどのカーブを決めて到着した。急き立てられたアベとトラタは息を切らしながら最高級ルームランナーを運び、がらんどうの暗いコンテナ内に積み上げ、設置し、スタンバイ状態にした。 39

2022-11-02 23:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして200万が振り込まれた。「ハァーッ、ハァーッ……なあ、あんた、何者だい?」黒いヤクザシャツを汗だくにして道路に座り込むアベが、サングラスを外し、そのクールな女に声をかけた。だがトレーラーは既に急発進し、決戦のパンキチ・ハイウェイへと向かう道路を走り始めていたのだった。 40

2022-11-02 23:30:00