#十rB 『Je te veux』まとめ

💎知歌💎11/23東1シ47a @ck_jellyfish

【こっそり宣伝1】昨日よりおじプラス版『冷静と情熱のあいだ』リレー小説企画を二組で行っています♪おじさん視点、ヒロイン視点を10日間に渡って交互に描きます。ただし既存のおじプラスタグは使用せず、組ごとに新しく作った #十rA #十rB というタグのみを使用しております！

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【こっそり宣伝2】参加者は、A組が @chika_tmtk @shinasatori 、B組が @souko_ja @yoika1223 になりますので、 #十rA #十rB タグをチェックして頂けると嬉しいです！よろしくお願い致します♪まとめも作ります！

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【こっそり宣伝3】A組のタイトルは『l'amour est bleu』（フランス語の曲名で『恋はみずいろ』）、B組のタイトルは『Je te veux』（フランス語の曲名で『あなたが欲しい』）となっております！ #十rA #十rB

そうこ @souko_ja

#十rB F1a)エレベーターが来ないのを待っていられず、3階まで一気に駆け上がる。駅からバイト先の進学塾までは徒歩3分。改札を出てから走るのは、電車の到着時刻が就業時刻の7分前だから。大学からはとにかく不便。それでもここを辞められないのは、彼がいるというただそれだけの理由。

そうこ @souko_ja

#十rB F1b)いい年をしたおじさんで、一応スーツは着ているけど、なんだかくたびれていて。ちっともかっこいい雰囲気ではない。何で惹かれたのか。多分初めて会った受験生の時に、付けられた『でこちゃん』というあだ名。落ちてくる前髪をピンで留めたのが可愛いと褒められたのは初めてだった。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M1a)そろそろ教室に向かうか、と立ち上がる。時計は見る必要がない。もうすぐ、ここに駆け込んでくるであろうあいつの足音が、時計代わり。いつの頃からだろうか、騒がしいはずのこの音が、何故か俺の心を穏やかにする。ものすごい速さで近づいてきていた足音が講師室の前で止まる。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M1b)勢いよく開いた扉の先に、いつものように息を切らせたあいつ。走ってきたせいで前髪が全部上がってしまっている。「よお、でこちゃん。今日もギリギリセーフだな」額を軽く撫でてやると、途端に顔を真っ赤に染めた。前髪をピンで留めているのを初めて褒めた時もこんな反応だった。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M2a)今でもよく覚えているが、教え子だった頃のこいつは、いつもど真ん中の、一番前の席を陣取り、俺の話にやたらと頷きながら、授業を受けていた。そのうち、長めの前髪が邪魔になったのか、ピンで留めてくるようになった。キラキラと輝くその顔が、当時の俺には酷く眩しかった。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M2b)長い間目指していた教師を諦め、独りでいることにも慣れ始めてしまっていた俺に、教えることの楽しさを思い出させてくれた。この仕事を続けていられたのは、こいつのおかげだ。そして、数年経った今も、それは変わらない。素直で、無邪気な彼女に、俺は今でも救われている。

そうこ @souko_ja

#十rB F2a)息を整える間も無くドアを開けると、思い人が目の前にいた。お決まりの言葉と共に、先生が額に触れる。電流が走った様に体が硬直する。挨拶するのがやっと。するりと脇を通り過ぎるのを、こっそり見送る。この5年近く、額を見ると触れられても嫌じゃない。…もっと触れられたい。

そうこ @souko_ja

#十rB F2b)この胸の高鳴りが、日毎増しているのを先生に気取られたくなかった。いつもふざけたり冗談の多い話の合間に、ふと見つける気怠い表情が私を不安にさせるから。彼女いるんですか、と軽い口調で聞いたのに、口籠って「いない」の一言。先生の中にまだ元カノがいると、感が告げたから。

そうこ @souko_ja

#十rB F3a)受験生の頃から可愛がられていた、と思う。先生があだ名で呼ぶのは私だけで、それも気分が良かった。いつしか合格したい気持ちより、先生と話したいから勉強して質問して。その頃はただの憧れだった気がする。目線を合わせて耳を傾け私の話を聴いてくれる大人は先生だけな気がした。

そうこ @souko_ja

#十rB F3b)それは今も変わらない。変わらないから、これが恋だと気付いても、ずっと胸の内に秘めてきた。唯一この片想いを知る親友もまた、片想い。お互い相手に気持ちを伝えられず、溢れる想いを理解し合える存在は心強かった。先生の中の女性と私。先生にはどちらの存在が大きいのだろう。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M3a)ふいに尋ねられた。恋人はいるのか、と。生徒にそういったことを聞かれるのは、珍しくはない。勿論まともには答えない。適当に流す。だが、それが出来なかった。前の女を忘れられないとか、そんな未練たらしい理由じゃない。問われたことで、何かを期待した自分に、戸惑ったからだ。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M3b)最初は、ただ可愛い妹のように思っていた。教え子に区別なんかつけていないつもりだったが、周りからは目をかけていると思われていただろう。大学受験が差し迫った頃、彼女の合格を願うと同時に、全てが終わったら俺の生徒でなくなることを、嫌だと思う自分がいた。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M4a)同じ職場で働くようになった今も尚、彼女は俺を先生と呼ぶ。それを嬉しいと思う反面、どこかで歯痒くも感じている。大学を卒業すれば、今度こそ本当に、彼女はここから離れて行くだろう。そう考えると、寂しくなる、なんて言葉では誤魔化せない想いに、俺は駆られるようになった。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M4b)馬鹿正直に答えてしまったのは、多分そのせいだ。…俺は何を期待している？忘れたはずの感情に年甲斐もなく揺らいでいる。「人のことより自分はどうなんだ？学生生活はあと少しなんだ、此処と大学の往復だけなんてもったいねえぞ？」軽口で誤魔化す。…そう、あと少しだ。

そうこ @souko_ja

#十rB F4a)塾講師のバイトをしながら子ども達の悩みに触れるにつけ、専攻の心理学を活かせるスクールカウンセラーになりたいと思いだした。初夏に実習に赴いた母校でも、恩師が応援してくれた。真っ先に相談した先生はいつもよりずっと真面目な顔で聞き、挑戦してみろと背中を押してくれた。

そうこ @souko_ja

#十rB F4b)私から相談したのに寂しかった。冗談混じりでも、塾へ就職しろとか言ってくれる様な変な期待をしていたみたい。先生には、元教え子で今は職場に来るバイト。それ以上の関係って、どうしたらなれるの？想いを告げて、叶わなかったら…。唯、先生に向ける笑顔だけは変わらずにいたい。

そうこ @souko_ja

#十rB F5a)相変わらずの額全開に、にやりと触れてくる。少し冷たい指先なのに、そこからじんわり熱くなる。私はバカだな、こんな事は先生にはご挨拶なのに。それとも私からアクションを起こせば、もしかすると、もしかして、って事なの？でもやっぱりバカだから、どうすればいいか解らない。

そうこ @souko_ja

#十rB F5b)だって。なんだかタイミングが悪い。女の子らしいスカートの時ほど、先生は忙しそうでなかなかそれっぽい話ができなかったりで。親友は、いつも女の子らしくすればいいじゃないと笑うけど、どうも気恥ずかしい。ざっくりしたシャツや、スニーカー、パンツなんかが私らしさだから。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M5a)焦る気持ちとは裏腹に、何も出来ない自分に苛立ちを覚える。それは、講師と教え子という立場だったり、単純に年齢差だったり、或いは、俺自身の弱さだったり、そんなものに束縛されている、己の小ささに対する苛立ちだ。…俺らしくもない。彼女の前で、己を保つのが精一杯なんて。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M5b)いっそのこと、突き放してしまえれば、楽なのかもしれない。だが、それが出来ない。目が追う。声をかけてしまう。…腕が伸びてしまう。自分のことを大人だなどとおもっていたことに失笑する。大人なんかじゃない。俺もやはり、ただの男でしかないのだと、思い知らされる。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M6a)普段、ジーンズにパーカーやシャツが多い彼女が、今日は珍しくスカートなんかで来ていた。おかげで気を紛らわせるのに四苦八苦する。極力、視線をそちらに向けない様に、忙しいふりをしてやり過ごすしかない。…勘弁してくれ。いつまでも我慢が利くほど、俺は大人じゃねえんだ。

yoika-宵華 @yoika1223

#十rB M6b)いつもなら、軽口叩いて、額を撫でてやれるのに、妙に女っぽい格好の彼女には、それが出来ない。時々、何かを言いたそうにこっちを見ている視線を感じる。そんな目で見るな。お前に求められているんじゃないかなんて、馬鹿なことを考えてしまうから。そうなったら、俺は抗えない。