【ゾンサバで】 9日目 【リレーSS】
- inui_nosuke
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【結果】
今日の吾妻巧:【アクシデント】原因不明の高熱に苦しむ。10のダメージ! だが免疫の作用なのか、ゾンビ化しつつある場合はそれが完治する。 食糧:-1 http://t.co/noLUWnfV まーたーかーwww ゾンビとの戦いで付いた傷が痛む。駆け寄るセラの前で、タクミは倒れた。
2012-07-03 00:04:26今日のinui_nosuke:【戦闘】ガソスタでゾンビと攻防中、燃料に火がつき爆発、大やけど! 10のダメージ! 以降「治療薬」か「救急箱」を消費して治すまであなたのHPは回復しなくなる。食糧:-2 http://t.co/7CVELqBa すまぬ…すまぬ…
2012-07-03 06:35:48【本文】
――――静寂が耳に流れ込む。さあ、と一陣の風が吹き、タクミの火照った頭を覚まして行く。(……どうにか、守れた)見れば、周囲には無残な光景。手には触感が未だ残っている。だが、それに嫌悪感は最早ない。それ以上の、三人を守り切れたという実感が胸に満ちていた。 #ゾンビサバイバル
2012-07-03 10:38:30たたたっ、と静寂に駆ける音が響く。その音は次第に近くなる。(みんなが、来るのかな)ぼんやりとタクミはそう思った。正しかったと示すように「――お兄さん!」とセラの声が響く。振り向くと、そこには必死で駆けてくる涙目の少女。タクミはそれに笑顔を返すと、そのまま倒れた。#ゾンビサバイバル
2012-07-03 10:38:35ふぅ、と大きくため息をついて、カナメが仕切りの向こうから顔を出した。「打撲に噛み痕に裂傷。ひどいもんだけどまあ命に関わるような怪我じゃないわ。問題は熱ね、これまでの無理が体に出たんでしょうけど……」カナメの言葉を聞いたセラの顔が青ざめる。「じゃあ、もしかして…お兄さんも……?」
2012-07-03 14:49:43「? ああ、それは平気。あの子はあいつらの仲間にはならないわ」さらりと告げられても納得がいかない。「でも、噛んだ痕って…それに熱も出てるなら」以前自分が襲われた時、怪我らしい怪我は太ももに噛みつかれたひとつきりだった。今夜タクミが受けていた傷はその比ではないのに。
2012-07-03 14:49:51戻りの遅いタクミを心配してカフェを出た三人は、ほどなくして何者かが争う激しい物音を聞いた。慌てて駆けつけるとそこにはやはり、傷を負ったタクミが立ち尽くしていた。異様な光景。異様な臭気。腐臭と、タンパク質の焼け焦げる臭い。それ以上にひとつふたつではない、積み重なっている数々の遺体。
2012-07-03 14:49:58そこに静かに立ち、何ごとか思っているらしい少年。足音に気付き振り返って微笑む様子もまさに異常だった。(ダメ、壊れちゃう……)なぜかそんな連想をして必死に名前を呼んだ。彼の元にたどり着く前に道に崩れた時は、自分が悲鳴をあげるのではないかとセラは感じた。
2012-07-03 14:50:07結局「冗談じゃないっての!」などと悪態をつくカナメがタクミを引きずって、近くのガソリンスタンドへ避難する事になった。倒れたタクミをカナメが看る間、セラとニナで間に合わせのバリケードを作った。子供の力で作ったものなので効果の程は知れたものだがとにかく動かずにはいられなかった。
2012-07-03 14:50:14「ゾンビに噛まれて、熱が出てる。それで発症しないって考える理由は?」ニナが淡々とした口調で問う。やはり彼女も納得しないのだ。当然だろう、人がアレになってしまうのだと彼女ほど知っている者はない。不審そうな二人の子供にカナメはやれやれと首をふる。
2012-07-03 14:50:24「そうね…じゃあちょっといらっしゃい」カナメに導かれて仕切りの裏側にいくと、浅い呼吸でうなされているタクミが視界に入った。(お兄さん……っ)その姿のあまりの痛々しさにセラは胸が塞ぐような気持ちになった。カナメに背中を押されて近づく。
2012-07-03 14:50:36「傷を見て。他は包帯を巻いてしまったけど、これだけ小さかったから」言ってカナメが示したのはタクミの手の甲についた小さな傷跡だ。「乾いてかさぶたになってるでしょ? あいつらに感染させられたらこうはならない。傷口が塞がらずそのまま腐り始める、その場所から死に始めるのよ」「あ……」
2012-07-03 14:50:43思い出した。確かに自分がうけた傷は、いつまでも乾かず爛れたようになるだけだった。タクミにアンプルを打たれた今はかさぶたが傷を覆ってくれている。「体中ちゃんと診たわ、彼は大丈夫。信用して」「──よかった……」呟いて膝を折ったセラの頭に、カナメの細い指がそっと伸ばされる。
2012-07-03 14:50:53「心配…?」カナメの問いにこくりと頷く。「あたしが信じられないから?」首を振る。この心配は今日だけの事じゃないのだ。「自分のこと…あんまり考えてくれないから…」上手く言う方法が分からなかったが、カナメは何とか汲み取ってくれた。「そうね、自分のことは全部後回しって感じよね、この子」
2012-07-03 14:51:01「さっきだってきっと、あたし達に近づけないようにとか考えたんでしょーね。困った子だわ」唇を噛む。涙があふれそうだった。ちっとも自分を大事にしてくれないタクミに、申し訳なさと少しの腹立ちがある。「こういう時、あんたは泣かないのがいいね」気のせいか柔らかくなった口調に彼女を見上げる。
2012-07-03 14:51:11苦笑とため息の中間のような息を吐いて、カナメが話す。「あのさ、いいこと教えてあげる。世の中にはバカな女と、強い女と、バカな男しかいないのよ、知ってた?」よくわからず首を傾げる。「強い男の人は、いないんですか?」カナメはおどけて肩をすくめた。「男ってのは、いくら強くてもバカなのよ」
2012-07-03 14:51:20そうしてしみじみとした口調で続けた。「だからね、バカな男を助けたかったら、女は強くなるしかないの。いざとなったらひっぱたいてでも、目ぇ覚まさせてやんないとダメなのよ」やけに実感のこもった口調を不思議に感じつつ、どこか心の隅に納得が落ちた。今はまだ大人ではなく、強くもないけれど──
2012-07-03 14:51:32(無茶しそうな時は止めよう。自分のことを考えてってお願いしよう…)そしていつかちゃんと強くなって、自分も彼のことを助けられるようになろう。カナメが言いたかったのはたぶん、守られることで萎縮して、タクミを止められなくなるのは愚かということだ。
2012-07-03 14:51:42「じゃあ、しばらく看ててあげてくれる? 何かあったら呼んでくれていいから」黙りこんでしまったセラに椅子を用意してから、カナメはニナを伴って隣へ戻った。迷った末、傷のある彼の右手に、セラは静かに片手を重ねた。早く熱が下がるよう祈りながら。
2012-07-03 14:51:52「やだな…」低く呟いたニナを細めた目でカナメが見下ろす。「セラが泣くのは…嫌だ」「泣かないじゃないあの子。まああんたも泣かないけど…正直助かるわ」しかしその言葉にニナは首を左右する。「泣くよ。タクミが死んだら。タクミは…それが分かってない…」「そうね…」夜が静かにふけていった。
2012-07-03 14:52:01タクミはずっと一人だった。両親は共に健在であるが、仕事柄家にいることは少ない。ほとんどいないと言っても差支えないほどでもある。とは言え、タクミもそれを寂しいと思う歳でもない。高校生になってからそれは顕著で、一人でいることを気楽に思うほどでもあった。 #ゾンビサバイバル
2012-07-03 20:21:01――だが、あの時だけは違っていた。学校から帰宅したタクミは、家に入るや否や、高熱に倒れた。授業を受けている間からその兆候はあったものの、特に理由は思い当たらなかった。しかし考える余裕はない。本能か理性か、定まらない思考のままベッドまで辿り着くと意識を失った。 #ゾンビサバイバル
2012-07-03 20:21:08