官邸前抗議は民主主義生成の場か、「金曜日の独裁」か

毎週金曜日の官邸前行動および首都圏反原発連合に対する北守(@hokusyu82 )氏による、2012/8/2時点での評価および懸念をメモ的にまとめてあります。 なお、まとめた者の私見としては、このような懸念どおりの結実になるかどうかは今後の私たち次第であり、けっして金曜の官邸前行動に参加することを妨げる意図はありません。参加者がどう関わるか、参加できない人/参加しない人/見守る人、がどう評価し、意味付けし、他の行動に活かしていくかによって、この行動の意味は大きく変わっていく可能性があると考えています。
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北守 @hokusyu82

非常にまずい事態になっている。

2012-08-02 04:03:49
北守 @hokusyu82

ある特定のテーマについてのある行動に集まった群衆の数というのは、当然ながらそのテーマについて、その行動の主催の代表性を正統づけるものではない。たとえば××大統領候補の集会に×万人集まったということとは性質が違う。

2012-08-02 04:05:53
北守 @hokusyu82

ところが、反原連は官邸前の20万という(神話的)数字を背景に、その声を「代表」する者として首相官邸に乗り込む。少なくとも政治的にはそうみなされるだろう。

2012-08-02 04:07:27
北守 @hokusyu82

もちろん、官邸前の(実際の数字では)数万人が、かれらの「代表」性を事実として承認したことは一度も無い。というか、官邸前は「代表」を選出せしめる場であったことは一度も無い。ひとびとは分断されており、合意形成のために官邸前に集うことすらできない。

2012-08-02 04:10:46
北守 @hokusyu82

官邸前は、民主的決定のためのフォーラム(広場)ではない。

2012-08-02 04:11:46
北守 @hokusyu82

つまり、反原連は官邸前デモの参加者および支持者によって「選出された」ことを、「代表」性の根拠にすることはできない、では、かれらを「代表」として正統づけるものは、いったい何なのだろうか。

2012-08-02 04:20:28
北守 @hokusyu82

官邸前運動の大きな特徴は、しばしば指摘されているように、その抗議形態が極めて統制され、フォルム化されているということである。警察と主催者と参加者が一体となり、あたかも典礼のようになっている。偶発性の契機はあらかじめ摘み取られている。

2012-08-02 04:34:41
北守 @hokusyu82

そのような官邸前行動のフォルムを「代表」しているのが反原連なのである。これは、カール・シュミットが「上からの代表」と呼んだものに等しい。言いかえれば、反原連はシュミット的なルソー解釈における「一般意志」を代表しているといってもいい。

2012-08-02 04:37:52
北守 @hokusyu82

ルソーは「一般意志」を「共通善(common good)」とほぼ同じ意味で用いている。ここでいう「共通善」は「共通の利害」のことではなく、差異の集合を通してあらわれるある「摂理」についてのことである。そのような「摂理」=「一般意志」は人格的に「代表」されうるのである。

2012-08-02 04:45:47
北守 @hokusyu82

「反原連」は、官邸前行動というフォルムにおいて、反原発派の「一般意志」を人格的に「代表」している。重要なのはフォルムにおいて「代表」するということなので、その選出方法は問われない。それは「拍手と喝采」でもかまわないのである。

2012-08-02 04:49:18
北守 @hokusyu82

これは、シュミットが民主主義と両立するとのべた独裁の形態である。

2012-08-02 04:51:56
北守 @hokusyu82

官邸前行動は―少なくともその人数が数千を超え始めてからずっと、このようなヒエラルキーを形成する場となってきた。そして、議員との面談・首相との面談という事態になってついに、主催者=反原連が、ヴィルクリッヒなかたちで、再現前したのである。

2012-08-02 04:55:45
北守 @hokusyu82

あらゆるファシズムがそうであるように、官邸前行動も一見、民主的な色彩を伴ったものとして現れているようにみえる、しかしそこにあるのは、あらゆる民主主義的なプロセスを廃棄した、反原連による統治にほかならない。

2012-08-02 05:01:48
北守 @hokusyu82

官邸前の一般意志を「代表」する反原連は、言い換えれば、主権を「代表」してもいるのである。そうなると官邸前の人民は主権者でなければいけない。このため、官邸前行動は国民的な同質性を前提としたものとなる。主権を脅かす偶発性の契機たる異質性は排除される。

2012-08-02 05:07:05
北守 @hokusyu82

そしてその主権が立ち上がる契機を支えているのは「例外状態」(再稼動!原発事故!委員会人事!)という意識である。

2012-08-02 05:09:49
北守 @hokusyu82

われわれが見ているのは市民運動の成熟ではなく、「危機」において主権的共同体が立ち上がる瞬間であって、それは民主主義の敗北であろう。野田首相との会談がどのように転ぶかはわからないが、いずれにせよこの運動が続く限り、良き展望が開けることはないだろう。(おわり)

2012-08-02 05:15:24