ライスのアニメ感想:#187 おおかみこどもの雨と雪(製作:スタジオ地図、2012年)

久々に劇場アニメ作品の感想です。 2012年の夏に話題をさらった細田守監督の三作目、 「おおかみこどもの雨と雪」です。 時期的に大分遅れてしまいましたが、よろしくお願いします。
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テリー・ライス @terry_rice88

おおかみこどもの雨と雪(2012・スタジオ地図・監督:細田守)久々の劇場作品感想は細田守監督第三作目。チョット時期は外れてしまいましたが、まだ感想していなかったので、この際しておきましょう。作品の大筋は多分「家族」のお話だったかと思いますが、結構弄ってきてるなあと言う印象がある。

2012-10-28 11:06:56
テリー・ライス @terry_rice88

物語は一人の女性が母になり、子供たちが彼女の手から離れていくお話。総じて家族のお話です。けど、父親であるおおかみおとこが子供二人生まれて早々に事故死してしまうので前提として欠落した家族なんですよね。もしかしたら育てる大変さをフィーチャーして演出するための手法だったのかもしれません

2012-10-28 11:07:10
テリー・ライス @terry_rice88

シングルマザーになった花は狼との子である自分の子供達を育てるのに都会に息苦しさを感じ、田舎で自活生活を始めます。そこで村の人々と互助の関係を築き、人間関係が広がる一方で子供たちは伸び伸びと育ちます。大自然の中と人間という群れの中で。狼と人間の子供であることを自覚しながらです。

2012-10-28 11:07:21
テリー・ライス @terry_rice88

やがて花の子供である雨と雪は成長し、それぞれの生きる道を覚悟して、親の手を離れていく。というのが大まかな内容です。この映画の描き方は極めてフラットなのですよね。登場人物の扱われ方は大人子供関係なしに平等です。カメラは主人公達にフォーカスされています。が、特別な存在ではないです。

2012-10-28 11:07:33
テリー・ライス @terry_rice88

いわゆる物語における主役補正みたいのは一切ありません。奇跡もなく生も死も平等に訪れる世界。多分、奇跡というものがあるならば花とおおかみおとこが出会った事くらいかなと。偶然出会った二人が結ばれ、子を成した。いわばそれだけです。関係はフィクショナルだけど、周りはリアル、みたいな。

2012-10-28 11:07:47
テリー・ライス @terry_rice88

シングルマザーである花の対応がまずいとかは結構アニメ作品的に演出されている面があって、子育ての苦労や村人達の触れ合いとかも話の進行上、トントン拍子で進んでいく。これについては作劇の心地よさ優先なんだろうなあって思いました。その辺りのバランス感覚は絶妙です。毒気のある作品だけども。

2012-10-28 11:08:01
テリー・ライス @terry_rice88

そんな登場する人物達が世界に対して極めて平等である、というのが作品の原則なので、主役へ感情移入する、しないは観客に委ねられている、と思いました。当たり前のことなのだろうけど、スクリーンに映し出される世界にただ存在していてる登場人物にどう思うかは見てる人の自由なわけで。

2012-10-28 11:08:17
テリー・ライス @terry_rice88

けど、この作品って、感情移入先をどうも演出で誘導してるのが結構透けて見えたかなあと。もちろん演出が際立ってないと出来ないことなんだけども。観客が知らず知らずのうちに花や雪に移入してしまうのは多分、監督の意図なのでしょう。逆にそういう取っ掛かりが何もないと辛い作品ではあるかな

2012-10-28 11:08:31
テリー・ライス @terry_rice88

その誘導手法として、観客に人物の表情を想像させるような意地悪なカットがいくつかあったかなと思う。たとえばおおかみおとこと花の橋の別れる場面とか、おおかみおとこの死でうなだれる花のシーン。あとは雪が草平に正体明かすところのカーテンとか。表情が見えないので観客は想像するしかないと。

2012-10-28 11:08:45
テリー・ライス @terry_rice88

そんな風に観客を感じさせることで、花への感情移入の呼び水とさせている面が非常にあった。だから家族持ちや独身女性やカップルの方がこの作品って入り込みやすいようになってるんだろうなあ。細田監督も公式サイトのインタビューで「理想の子育て」って言っていますし。

2012-10-28 11:08:58
テリー・ライス @terry_rice88

だからターゲットにしている観客層が凄く明確な作品で、それ以外は切り捨てている印象かな。でもそのターゲットの間口を広く取っているのでここまでの大ヒットをしたようにも思えるし、評価もされたんだと思う。ただ話の引っかかりは、弱かったなあというか、抜きん出る事はなかったかなという印象。

2012-10-28 11:09:13
テリー・ライス @terry_rice88

ピンポイントに狙っている作品でもあるし、多分この作品の仮想敵は実写映画なんだろうと思う。題材が家族なのも多分そこからで、アニメなのに実写を目指したって言う所が最大の特徴でもある。演出が際立ってるのは問題提起なのかも。作品を見て、感情を持つのは観客なのでそこを揺さぶる事こそ演出だと

2012-10-28 11:09:26
テリー・ライス @terry_rice88

お話は花が母になる、雪が草平に淡い恋心を抱いて女性になる、雨は人間を止め、狼にもどることを選んだ、という三軸が家族の生活として淀みなく描かれているのでコミュニティが作られ、子が成長し、精神的、または生活的自立をしていく様が瑞々しく描かれていた。けど、狼という設定を抜けば結構普通。

2012-10-28 11:09:38
テリー・ライス @terry_rice88

ただ先ほども言ったようにこの作品の描き方が非常にフラットで、どこに感情移入するかを完全に観客へ委ねてしまっているので、話の推移も非常に淡々と、丹念に進んでる。個がそれぞれ独立していて、助け合って生きている。けど、心はその人のもの。親子また同じく、繋がっているが個は際立っている

2012-10-28 11:09:51
テリー・ライス @terry_rice88

そういう風に作られているから、観客においては引っ掛かるつかみ所がないと本当につかみ所がない作品になってしまう、諸刃の剣なギャンブル性の高い作品だなあと印象でした。でも、興行成績が成功したのは狙い通りの層に届いたってことなんだろうなあ。

2012-10-28 11:10:14
テリー・ライス @terry_rice88

自分が印象深く思ったシーンは雪山での林の向こうに抜けると、綺麗な青い空がスクリーン目いっぱいに広がったシーンが一番良かった。話に関係なく、あそこは非常に爽快感があって、気持ちのいい画でしたね。

2012-10-28 11:10:26
テリー・ライス @terry_rice88

まあ、以上のことから特定の層に琴線に触れられるような演出をして、見た印象を観客が取捨選択できるという、作りになっている作品だったなあと言う印象。だから主役は花でも、雪でも、雨でもある。お好きなキャラをどうぞ、みたいな感じ。なので賛否は結構分かれる作品なんだなあと思いました。

2012-10-28 11:10:40
テリー・ライス @terry_rice88

で、自分としてはもう一回見たいかと言われるとNOです。一回見て、お腹いっぱいです。話の琴線に触れられなかったというのもあるんですが、印象が先ほども何度か言ったようにフラットだったので転じて平板な印象を感じてしまったのは否めなかったです。演出の出来は凄くいいんですけどね。

2012-10-28 11:10:52
テリー・ライス @terry_rice88

自分の感想はそんなところです。細田監督にはも少しガツンとした作品やって欲しいなあと。まあ売れる方向ならばこの路線は間違いないでしょうし、今後はこの路線なのかもなあとか色々思った作品でした。という訳で以上です。どうもありがとうございました。

2012-10-28 11:11:10