広井良典『定常型社会』まとめ

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読書メモ @masashy_log

福祉国家の理念は「経済成長と所得分配の平等化」の両方を同時に達成するものとして構想されたものであり、それは戦後における“高度大衆消費社会”の実現ということとも不可分であった。(広井良典『定常型社会』p3)

2012-11-15 23:42:09
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人々の生活保障や経済活動に国家ないし政府が様々な施策・制度を通じて深くかかわるようになったのが福祉国家の時代であり、このことは実は、家族や地域共同体といった「コミュニティ」というものが、経済の進化に伴い希薄化していった過程とパラレルでもあった。(広井良典『定常型社会』p5)

2012-11-15 23:53:34
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「不断の経済成長」、言い換えれば人間の需要(ないし消費)はいくらでも拡大しうるものだということを前提とした上での「大きな政府vs小さな政府」という対立の構図は過去のものとなりつつある。(広井良典『定常型社会』p20)…人間の需要・消費に限界はあるのか。

2012-11-17 00:24:39
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「環境-福祉-経済」という三者が相互に密接に、またダイナミックに関連し合うものとして認識され、そしてこのことが、より具体的な「社会保障政策と環境政策の統合」というかたちで議論されつつあるのが、現在のヨーロッパを中心とする理念と政策の構造と言える(広井良典『定常型社会』p21)

2012-11-17 00:28:52
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「政権交代」のない社会ということは、国民ないし市民が選挙を通じて政策を選択するという道を事実上ふさいでしまうことになる。(広井良典『定常型社会』p27)

2012-11-17 00:40:41
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日本の社会保障の第一の特徴は、その「規模」に関するものであり、端的にいえばその社会保障給付費が多くの先進諸国に比べてなお相当に「低い」水準にある点である。(広井良典『定常型社会』p32)

2012-11-17 00:57:18
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これまでの日本において、こうした低い社会保障給付でなお人々の生活保障が比較的維持されていたのは、いわば“インフォーマルな社会保障”(見えない社会保障)ともいうべき安全網(セーフティ・ネット)が存在していたことによる部分が大きいと筆者は考えている。(広井良典『定常型社会』p32)

2012-11-17 01:00:50
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日本の社会保障の第二の特徴は、その「内容」に関するものであり、それは社会保障全体に占める「年金」の比重が先進諸国の中でもっとも大きいこと、また逆に「失業」関連給付と「子ども」関連給付の比重が際立って低いことである。(広井良典『定常型社会』p32)

2012-11-17 01:03:42
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日本の社会保障の第三の特徴は、その「財源」に関するものであり、社会保障の枠組みの中に相当額の税が部分的に投入され、“税と保険の渾然一体性”ともいうべき特徴をもった社会保障制度となっていることである。(広井良典『定常型社会』p33)

2012-11-17 01:15:58
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戦後の日本社会においては「核家族」というものがとりわけ強力なコミュニティとして機能し、…「夫=外で仕事、妻=専業主婦」という役割分担が強固なものとなっていく中で、“子育てはもっぱら家族の中で行なわれるべきもの”との考えが強固なかたちで浸透していった(広井良典『定常型社会』p40)

2012-11-17 12:02:23
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現在の日本の年金制度の基本的な問題点は、…一部の高所得者層に過剰ともいえる年金が給付されている一方で、たとえば女性の基本年金の平均受給額は五万円に満たないなど、“いかなくてもよいところに年金が支払われ、もっと支払われてよいところに十分いってない”こと(広井良典『定常型社会』)

2012-11-17 13:05:03
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各年代の特質を漢字一文字で表現するとすれば、「大人」が“働”とすれば、「子ども」は“遊プラス学”、「老人」は“遊プラス教”であろう。つまり、“遊”を共有しつつ、「教える‐学ぶ」という関係を通じて、老人と子どもとは非常に密接な「対」の関係にある(広井良典『定常型社会』p48)

2012-11-17 13:24:22
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「生産」や生殖とは直接関わらない、一見無駄とも見えるような時期が「大人」の時期の前後に長く存在することが人間の特徴なのであり、その意味で「老人」と「子ども」の時期はまさに人間固有の価値をもつものであり、かつそこにこそ人間の創造性や文化の源がある(広井良典『定常型社会』p49)

2012-11-17 13:27:20
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以前の時代に比べて、広い意味で「子ども」と呼べる時代が大幅に長くなり、その結果、(高齢者の場合と同様に)いわば「前期子ども」、「後期子ども」とでもいうような区分が可能な状況となっているのではないだろうか。(広井良典『定常型社会』p50)…近年の大学進学率の上昇とも関連するかも

2012-11-17 13:35:38
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このことは、「雇用」つまり…“働”の役割、ということと関係してくる。それは「後期子ども」や「前期高齢者」の時代においては、いわば「“働”と“遊”の複合形態」といったものが重要となる、ということである。(広井良典『定常型社会』p50)

2012-11-17 13:39:39
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これだけ物質的に豊かな社会になったのに、また「現役世代」もいやというほど長くなったのに、相変わらず高度成長時代の「生産中心」の発想や従来型のライフサイクルイメージにとらわれている議論が多すぎるのではないだろうか。(広井良典『定常型社会』p51)

2012-11-17 13:44:24
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結局日本の学校は、「戦争勝利」という目標を「経済成長」に変えただけで、その総動員体制的なシステムを戦後も維持したことになる。(広井良典『定常型社会』p54)

2012-11-17 13:56:39
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高度成長期は女性はどんどん専業主婦化していったけれども「生産年齢人口割合」が増加を続けた時代であり、逆にこれからの時代は、従属人口割合(高齢者と子ども)は上昇に転じるけれども、女性の社会進出が保障されていれば、トータルの就業割合は大きく減少することはない(広井良典『定常型社会』)

2012-11-17 14:34:42
読書メモ @masashy_log

「賃労働」や「生産」の価値ばかりを強調する議論をそろそろ卒業し、また日本でも深刻化し始めている若年者の失業問題の実態をも視野に入れ、引退ということや、賃労働以外での社会参加に価値を見出せるような社会への転換を図っていくべきではないかと考える。(広井良典『定常型社会』p63)

2012-11-17 14:40:52
読書メモ @masashy_log

「自由」ということを「潜在的な自由」という意味で理解するならば、「機会の平等」の保障とはすなわち「(潜在的な)自由」の保障ということと同じである(広井良典『定常型社会』p76)

2012-11-17 23:26:19
読書メモ @masashy_log

「個人のライフサイクルを座標軸とする社会保障」及びそこでの機会の平等=潜在的な自由の保障ということは、「個人の「自己実現」を可能とする制度としての社会保障」というふうに理解することができる。(広井良典『定常型社会』p79)

2012-11-19 00:51:10
読書メモ @masashy_log

社会保障制度のあり方は、とりわけ経済のグローバライゼーションの中で、これまでのように一国完結型の問題ではなくなっているのであり、今後こうした傾向はますます強まっていくことになるだろう。(広井良典『定常型社会』p109)

2012-11-22 14:23:34
読書メモ @masashy_log

「変化」や「スピード」そのものに価値が置かれるのが現代社会とりわけ市場社会の世界であるが、そのような価値そのものを問いなおしたところに開けてくる社会の姿を考えていくべきではないか(広井良典『定常型社会』p145)

2012-11-23 15:13:42
読書メモ @masashy_log

経済成長ということが、単に「スピードが速い」という意味しかもたないものだったとしたら、また、それによって個々人が互いに縛られ合い、ストレスがたまるだけだったとしたらどうだろう?(広井良典『定常型社会』)

2012-11-23 15:43:05
読書メモ @masashy_log

いまの日本社会は、誤った「成長」概念にとらわれていて、どこか「歩くスピードが速すぎる」のではないか。…「経済成長率」が落ちるということは、要するに「スピードをちょっとゆるめる」ことにすぎないのではないか。だとしたらむしろ歓迎すべきことではないだろうか。(広井良典『定常型社会』)

2012-11-23 15:45:50