山本七平botまとめ/【新井宝雄氏への反論③】/言葉が持つ「隠蔽性」とは/~「一握りの軍国主義者」という”架空の存在”を用い、善人気取りで批判する事で、戦争の実態を隠蔽してきたマスコミ~
- yamamoto7hei
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①ヴェトナム戦争の問題については『諸君!』に連載した『私の中の日本軍』にゆずり、最後に「反省」について一言したい。 新井氏はその反論の全てにおいて徹底的に避けて通られた点がある筈である。それは虚報『百人斬り競争』に関連する部分である。<『ある異常体験者の偏見』
2012-11-25 14:28:03②「反省」を口にされながら、その新聞社に奉職される一員として、なぜ…この連載の主題の一つであったこの問題を徹底的に避けられたのか。 反省という言葉が自らの尺度で自らを裁く事なら、この問題は氏の倫理的基準にとっては、何ら問題にするに足りない事だったのか! まさか!そうではあるまい。
2012-11-25 14:57:42③このことは氏のいわゆる「一握りの軍国主義者」の問題にもあてはまる。 氏は私が「一握りの軍国主義者たちが、あたかもいなかったかのようにいっておられる」と記された。 なぜこういう言い方をするのか。
2012-11-25 15:27:57④「一握りの軍国主義者がいた――ただし私はそうではない」といって、皆が「一握りの軍国主義者」という「言葉」に背を向けてしまえば、かえって何一つ実態は究明できない。 逆にすべてを隠してしまうではないか。 言葉には隠蔽性があると言ったのはこのことである。
2012-11-25 15:57:43⑤「一握りの軍国主義者」などという抽象的存在がこの世にいたのではない。そこにいたのは具体的存在としての個々の人間である。 一体氏はなぜ僅か一握りの人間の人名すらあげないのか。 この世に「生れながらの悪玉」などは存在しないと同様「生れながらの軍国主義者」などというものは存在しない。
2012-11-25 16:28:03⑥ある人間が、ある思想・主義を抱き、その思想に基づいてある判断を下し、その判断の下に一つの発想をして、その発想の下に計画をたて、その計画を実行に移したのである。 そしてその人は、そうすることを最善と考えた――
2012-11-25 16:57:43⑦ではなぜ最善と考えたのか。 彼らの多くは誠心誠意それを実行した。 それは残念ながら否定できない事実ではないか。 そして誠心誠意やったということは何ら正当性を保証しないことを、われわれは嫌というほど思い知らされたのではなかったか。
2012-11-25 17:28:01⑧その人たちがどれほどまじめであったかなどということは無意味である以上に、その人たちを醜悪化し戯画化することも無意味である。 「一握りの軍国主義者」という言葉を使われた以上、新井氏はその個々の人名を知っているはずである。 そうでなければおかしい。
2012-11-25 17:57:44⑩それを徹底的に究明せずに、ただ「一握りの軍国主義者」で片づけ、「オレは彼らを声高に非難している。従ってオレは彼らとは関係ない純正潔白な人間だ」という態度をしてそれで全てを終りにすれば、かえって何もかも隠蔽してしまうではないか。
2012-11-25 18:57:46⑪私は辻政信氏を具体的な一例としてあげている。 では辻氏は新井氏のいう「一握りの軍国主義者」に入るのか入らないのか。 入らないならその理由をうかがいたい。 入るのなら、彼がマスコミによって戦後再び″英雄″となったことを、その内部にいてなぜ一言も批判しないのか。
2012-11-25 19:28:03⑫それでは「反省」という言葉を口にして他を批判する資格はあるまい。 第一、新井氏自身が、陸軍将校として中国戦線に従軍されているではないか。これらの問題も新井氏の倫理的基準にとっては何ら問題にするに足りないことであったのか! そうではあるまい。
2012-11-25 19:57:43⑬ここでも新井氏は結局、『百人斬り競争』と同様に、ある「一点」を故意に避けており、「一握りの軍国主義者」という言葉は、逆にその「一握りの軍国主義者」を隠蔽し、そしてその一点を避けるための遁辞にすぎなくなっている。
2012-11-25 20:28:03⑮私が問題にしているのはそうなって行くことの底にある精神構造であっても「マスコミが無用の長物」だと言っているのではない。 自分が倒れても究明しなければならぬある一点を避けていては、たとえ私が「マスコミは立派だ立派だ」と称揚したところで、無意味ではないか。
2012-11-25 21:28:02⑯私が徹底的に反論してもらいたかったのは、この「一点」に対する「私の考え方」であった。 私は「私がいうことは絶対に正しい」などという気は毛頭ない。 もちろん誤りはあるであろう。従ってそこを徹底的に討論すれば、さらに多くのことが解明できたのではないかと思う。
2012-11-25 21:57:43⑰要は「解明」だけであって、討論には、勝敗とか、面子とか、社会的位置とか、人間関係とかは一切無関係なはずである。 それは新井氏にも自明のことと思っていた。 従って、用心深く絶対にある点にふれず、その周囲をただ堂々めぐりされるとは思わなかった。
2012-11-25 22:28:04⑱そのためこの中心的な「一点」については、まだ何の反論もいただいていないのである。論争によって一つのことを徹底的に究明して行きたいと願っていた私にとっては、非常に残念である。
2012-11-25 22:57:47⑲従ってこの点についての「反論」をうかがえれば幸いと思う。 そしてその上で、もう一度「論争」を再開させて下さればさらに幸いである。(終)
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