ゾンサバ【しかりぷ】　②

鹿目久憲（しか） @0sika0

@zs_tl そこには一本の大人が３０人で囲っても届くかどうかと言う柱があった。恐らくはこのビルの大黒柱として設計された物だろう。其処に一人の老人が立っていた。しかし、老人と言うにはその体は鍛え抜かれており、特に両腕は遠目からも丸太の様に太いのが分かった。「おい！逃げ…」【2】

鹿目久憲（しか） @0sika0

@zs_tl 「がはっ！」叫ぼうとしたその時、後ろの扉が破壊され何かがしかを吹き飛ばした。それは、巨大ゾンビの指であった。落ちた玩具を探すかの様に無造作に突き出された手がしかを襲ったのだ。吹き飛ばされたしかは、何とか立ち上がりかけ、そこで老人が何をしているのか知った。【3】

鹿目久憲（しか） @0sika0

@zs_tl 老人はその柱に向かって黙々と張り手をしていたのである。「何を…」「日課だ」しかが質問するのを遮る様に老人は呟いた。「日…課？いや…」「黙って見ておれ」「…ひっ!?」再度遮られたしかは、背後の視線を感じ恐る恐る振り向き、おののいた。ゾンビがこちらを見ていたのだ。【4】

鹿目久憲（しか） @0sika0

@zs_tl「はやっ！早く逃げないと！」と、老人はそんな事などお構いなしに柱を叩き続けた。(音が…)しかは柱を叩く音が変わってきている事に気付いた。そして、それと共にビルが振動し始めたのを…。「まさか…」老人はただ、柱に己が拳を叩き続けるのみである。「ア、アイエエ…」【5】

鹿目久憲（しか） @0sika0

@zs_tl 叩く！叩く！叩く！叩く！その内柱に亀裂が入り始めた。しかは、人間技ではないその光景に尻餅をつき、ただ呆然と眺めていた。その間にも、老人は拳を突き続け、柱は断末魔の悲鳴を上げ始めていた。「イイヤァァァァァッッッ！」ここが止めとばかりに老人がヒートアップした。【6】

鹿目久憲（しか） @0sika0

@zs_tl と、亀裂が入っていた部分が吹き飛び、柱がこちらへと傾き、崩れ落ちてきた。老人は柱へ向かって静かに両手を合わせると、へたり込んでいたしかを肩に担ぎ、ビルの外へと走り抜けていった。倒壊するビルに巻き込まれる巨大ゾンビを見ながら、しかはどこか夢を見ている気分だった。【7】