Affair Storyの長編です。

300ツイート+開始六ヶ月記念にタグなし長編かいてみました。
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Affair Story @affair_story_s

気が付くと、立っているは知らない場所だった。あれ? ここはどこだとか思いながら歩くこと数分。目に入ってきたのはいくつもの人影。その全てが、他の選択肢などないとでも言うように、――倒れていた。

2010-09-03 22:03:56
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いやいやいや待て待て落ち着け、唐突過ぎるだろう。まずは深呼吸だ俺。よーしいい空気吸った。あ、でも味がねえな。『匂い』どこだ。うん、いたいた。目の前に倒れてる。まいったねこれは道理で味がないわけだ。うん。俺は笑いながら『匂い』に近づき、ふぅ、と。「一体何があったんだよ!?」

2010-09-03 22:06:11
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周囲を見回せば、倒れている人影は揃って人ではない。全てが事象。俺にしか見えない存在だ。うわ、マジで何事だよ? こんな事態、今まで遭遇したことがない。何があった。事象が倒れるなんて、それこそ、「……世界が壊れるみたいじゃねえか」

2010-09-03 22:08:41
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口にして、気付く。そうだ、事象が倒れるってのは、それは、世界の崩壊と同義ではないだろうか? 違いない。思い、固唾が喉を鳴らす。何があったのか。いや、俺の表現は違う。誰がやったのか、だろう。見える俺にとって、この事態は誰かの成した事なのだ。

2010-09-03 22:10:48
Affair Story @affair_story_s

じゃあ誰だ? こんな事の出来る奴に今まで会ったことがない。周囲を見回せば、見知った事象はほぼ全員居るように感じる。なら、まだ見ぬ新たな存在がやったとでもいうのか? 首を振り、俺はいやいやと。「勘弁しろよ、マジで」口から言葉が零れ、続く。「一体、誰の仕業だ……」

2010-09-03 22:13:39
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後ろから聞こえた声に、俺は振り向く。そこにいた人影は俺に満面の笑みを見せ、腕を組んで見下ろして来ていた。「お、お前は……お前が、やったっていうのか!?」「ふふふ、驚いたかな? そう、私こそ彼らを倒し、世界を崩壊させんとした存在!」ば――、と。演出のためか、腕を広げ、「私は――!」

2010-09-03 22:16:24
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「……あれ?」目を開けた俺は、天井を見上げながら首を傾げる。「変な夢見たな……」思い、首を曲げればやはり『夢』がいた。その手にはファンタジー小説。おそらくその影響だろう。「お前な、次はそんなのじゃなくてあっちのエロ系頼むぞ。いいな? な?」念をおすと、『夢』が頷き消えていく。

2010-09-03 22:20:13
Affair Story @affair_story_s

さて、夢の記憶も曖昧になってきた。俺は上体を起こし、ん、と伸びを一つ。「よぉ眠れはりましたか?」振り返れば、枕元に笑顔の女将さん。『睡魔』だ。

2010-09-03 22:23:28
Affair Story @affair_story_s

俺はうんと頷き、立ち上がる。起きようとする俺とは逆に眠そうにあくびをする『睡魔』を横目に、俺は洗面台へ。顔を洗い、タオルで拭く。うし、目が覚めた。「あ、そうだ。俺もう出るし、良かったら布団使って――」言いながら戻ってきた俺の視界に、『睡魔』はもういない。

2010-09-03 22:25:39
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そういうものだ。今の俺はすでに目が覚めていて、だからこそ『睡魔』はもう、俺の近くにはいない。誰かがいたのに、誰もいないというこの感覚は、いまだに少し慣れない。ともあれ布団はもう用済みだからしまっておこう。

2010-09-03 22:27:27
Affair Story @affair_story_s

布団をしまい、俺は空気を入れ替えるために窓へ向かい、開ける。その向こうに見える風景は、朝だというのに若干の暗さを感じる。早過ぎるという訳ではない。むしろ、一般的に言えば寝坊といえるくらいの時間だ。空を見上げれば曇り空。これは降るな、と思い、テレビで確認しようとすると電話が鳴った。

2010-09-03 22:30:45
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2コールで通話ボタンを押し携帯を近づけた耳に届くのは、微かな音だ。ぽつぽつと。軽いものが何かを叩いているような、小さな音。それだけで相手が誰か分かる。「もしもし? 聞こえる?」思い描いた顔と一致する声に一人頷き、俺は、「ああ、聞こえるよ。おはよう、『雨』」

2010-09-03 22:34:15
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返事は来ない。あれ、俺何かいらんこと言ったか? いや挨拶しただけだ、うん。おかしい点はない。合点し、待っていると、「あ、お、おは、よう……っ」「ん? 何だ? 歯切れ悪いけどどうかした?」「な、何でもないわよ! こんな時間なのにあんたがおはようとか言うから!」いらんこと言った――!

2010-09-03 22:37:12
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「何? もしかして今起きたんじゃないでしょうね?」「あ、うん、ついさっき」「な……っ! 私が起こさないように遅めに電話したっていうのに!」「え? あ、ごめん、気ぃ遣ってくれてたんだ」「――っ! つ、遣ってないわよバカ!」

2010-09-03 22:41:48
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「ったく、あんたはいつもいつもいつもいつも――」「あーごめんごめん! で、ほら、何か用事あったんじゃないの? 俺聞きたいなー!」携帯の向こうで『雨』が黙り、雨音が聞こえる。少し経ち、「今日、そっち行くから」「あ、やっぱり降るんだ?」「うん。えっと、それで、ね?」「ん? なに?」

2010-09-03 22:45:22
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「えっと、その……今日、何か用事ある……?」「いや、ないけど?」「家にいるの?」「うん、そのつもり」「じゃ、じゃあ、その…………」「ん? 何だよ? はっきり言えよ」「あ、あのね?」

2010-09-03 22:46:41
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「――今日、家に行ってもいい?」

2010-09-03 22:47:01
Affair Story @affair_story_s

………………よーし落ち着け俺。大丈夫、大丈夫だ。突拍子もない事態は今日二回目だ。あれ? 一回目どこだ? ああ、夢か。よーしいいぞ落ち着いてる。だから貴様、おい貴様、『影』お前だ。ちょっと落ち着けガタッとかすんな窓枠に手をかけんないいからちょっと一緒に深呼吸だ。はい、ひっひっふー。

2010-09-03 22:49:14
Affair Story @affair_story_s

よし落ち着いた! 俺は携帯を両手で持ち、「え、えええええっと、『雨』さん? そそその、それはえっと一体どういうことと受け取ればばばばば」「え? だ、だから、家に行きたいって……に、二回も言わせないでよっ!」「い、いや、だから、えっと、つまり、それは……」一度息を吸い、 

2010-09-03 22:52:21
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「俺に会いに来るって事……?」「は? 違うわよ何言ってんの?」あっれ――――!!??

2010-09-03 22:53:00
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「え、だ、だって俺の家に来るんだろ?」「え? うん。もしかしてダメなの?」「いやいいけどさ、あ、あれ? ちょっと待て思考がまとまらない。えっと、どういうこと?」「だから、今日、あんたの家に匿ってってこと」「いやいや意味分からんぞお前」「いきなり冷静になったわね」そりゃなるわ。

2010-09-03 22:55:40
Affair Story @affair_story_s

「もしかしてあんた、テレビとか見てないの?」「あ、ああ、最近忙しくて」「じゃあ知らないのも当然ね……。ちょっと今点けてみなさい。何でもいいわ。どのニュースでも取り扱ってるだろうから」

2010-09-03 22:57:42
Affair Story @affair_story_s

『雨』に言われてテレビを点け、俺はニュースを探す。探り当てたチャンネルではちょうど気象予報が行われていて、その内容が示すのは、「今日、『台風』が来るわ」携帯を落としかけた。「ま、マジで……?」「ええ、本当よ。だから、匿って欲しいの。――あの迷惑親父から」

2010-09-03 23:00:06
Affair Story @affair_story_s

『雨』の事情をまとめると、つまりは今日『台風』の奴が来るから家に匿って欲しいとの事だった。まあしょうがないだろう。あのオヤジ、『雨』や『風』の事を溺愛し過ぎて暴走気味だし。「あー、となると、『風』も匿ってた方がいいのか……?」外を見れば、雨はまだ降っていない。うん、少し探そう。

2010-09-03 23:02:48