否定しようとしたその子に、氷の竜が飛び立ちながら鳴きました。 「常と変わらず、可愛い子。けれども、その灯火は、私たちを溶かしてしまう」 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 00:32:20
はじめは信じられなかったその子も、手にした氷葡萄が砕け散り、足を踏み入れた氷の小川が蒸発し、氷の魚が行き場を失って息絶えるのを見届けて、自分が変わったことを認めずにはいられなくなりました。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 00:42:02はじめは信じていたその子も、自分の姿を見て、心を見て、認めざるをえなくなりました。 自分は子供ではなくなってしまった。 恋を知ってしまった。 これでもう、痛みは避けられない。@23novel #twremix
2013-07-16 01:06:14
親しみ深い氷の国を救うため、その子は心の奥底でゆらめく炎を必死になって消そうとしましたが、どんな努力も固い決意も、朝の前にはすっかりしぼみ、現実が転がるまま、鈍感な心はどんどんと恋の熱を高くしていきました。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 00:57:25氷の月が欠けて無くなり、氷の桜は枯れ果てて、ついには氷の竜も飛べなくなって、ようやくその子は、自分の新しい心にあらがうことを諦めました。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 01:06:59別れを決意して、ぽろぽろと涙をこぼすその子に、ほとんど見えない氷の月が、穏やかな声で告げました。 「かわいそうな、可愛い子。だけども、二度と会えないわけじゃない」 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 01:13:18
びっくりして顔を上げたその子に、枝ばかりになった氷の桜が言いました。 「何も知らない、可愛い子。どんな恋もいつかは弱まり、消えるものだよ」 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 01:21:59否定しようとしたその子に寄り添って、氷の竜が溶けながら鳴きました。 「ずっと変わらず、可愛い子。そうでなくとも、お前の命の炎が冷えきれば、いつまでも一緒にいることができるだろう」 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 01:32:00そのとき、その子は生まれてはじめて、氷の国に凍えるような死の気配を感じ取り、ぞっとして後ずさりしました。凍てつく風に体が震え出し、凍った地面の冷たさが裸足の足を貫いて、もう一瞬もそこに立っていられなくなりました。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 01:47:23
「戻っておいで、可愛い子。いつの日か、もしもお前が望むのならば、扉はいつでも開くだろう」 恐怖に追い立てられるように、一目散に逃げ出したその子の頭上へ、感情のない、雪のような声が降り注ぎました。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 02:01:40氷の国で最後に響き渡った言葉に、なじみ深いほのかな優しさが隠されていたことにその子が気づいたのは、氷の架け橋を粉々にしながら渡り切り、朝日の門を駆け抜けたあとのことでした。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 02:32:57
ふと背後を振り返ったその子の目に飛び込んだのは、氷の国の生き物たちの精一杯の祝福でした。欠けた月は指輪の形にきらめいて、桜は枝を砕いて虹色の花となり、竜たちは幸せを祈って潰れた声で歌っておりました。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 02:53:26氷の国の生き物たちが、どれほどの思いでその子を送り出し、待ち焦がれているか、恋に落ちて、現実に夢中になっていくその子が、思い出すことはないでしょう。たとえ氷の国に戻るとしても、ずっとあとのことになるでしょう。 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 03:12:36けなげな夢をかき消す太陽のように、あなたの良識が、その子とはあなたであるということを、認めることはないでしょう。 #完 http://t.co/AEmL0BlYmA #角川小説
2013-07-16 03:29:20深夜まで失礼しました〜!それでは今夜はこのへんで。また23時ごろお会いしましょう。おやすみなさい。素敵な夢を〜(*´ω`*)ノシ
2013-07-16 03:30:35