「東電不起訴」の非科学

東電福島事故で、東電や国の責任者を不起訴にすると朝日新聞が報じた(2013年8月9日朝刊)記事について。検察判断の問題点を考えてみました。
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添田孝史 @sayawudon

「東電不起訴」の非科学 検察が東電原発事故で東電幹部らの不起訴の方針を固めたと朝日新聞が報じている。検察の言い分は「大規模な津波は、発生以前に専門家の間で予測されていたとは言えない」。不起訴は妥当なのか、検察の言い分を3つの視点から検証してみよう。

2013-08-09 09:32:16
添田孝史 @sayawudon

不起訴② 視点1 記事「東電は2008年、福島第一での津波の高さを最大で15.7mと試算している。しかし捜査の結果、試算の根拠となった研究も、当時は専門家の間で賛否が分かれていたという」。記事が書いていない重要な点がある。

2013-08-09 09:33:18
添田孝史 @sayawudon

不起訴③ 確かに賛否は分かれていたけど「津波は発生する」と考えていた専門家の方が多かったということだ。地震調査研究推進本部は2002年に、福島沖を含む日本海溝で、大きな津波地震が発生する可能性が30年以内に20%と予測していた。この予測結果を数値計算したものが15.7mだ。

2013-08-09 09:34:24
添田孝史 @sayawudon

不起訴④ 地震本部公式発表だからこれでも十分重いのだが、確かにすべての地震学者が賛同していたわけではない。原発の津波基準を作る土木学会津波評価部会が、「地震本部が予測するような大きな津波地震が起きる可能性はあるか」2004年と2008年に、津波や地震の専門家にアンケートしている。

2013-08-09 09:35:02
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑤その結果、「津波地震は(福島沖を含む)どこでも起きる」とする専門家の方が、「福島沖はおきない」とする人より多かった。(ちなみに土木学会はこのアンケート結果を「公開できない」としている。なぜなんだろうね)。

2013-08-09 09:35:48
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑥ というわけで、15.7m予測は、検察の言うように「真っ黒」な予見結果ではなかったが、かなり濃いグレーではあったと考えられる。検察は、長期予測がどこまで確実になったら「予見できていた」というのだろう。基準はあるのか。それは検察だけが密室で決めていいのだろうか。

2013-08-09 09:36:33
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑦ 視点2 検察も注目しているように、「予見の程度に見合う対策」を取っていたか、という点だ。確かに津波地震の予測は100%確実ではなかった。起きないと思っている専門家はいた。でもかなり濃い灰色の予測は2002年に出されていた。その濃さに応じた対策はとっていたのか。

2013-08-09 09:37:59
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑧ 真っ黒黒の予見であれば、当然防潮堤を作り、高い津波が来ても100%大丈夫なように備える義務がある。予見が灰色でも、その程度に見合う対策は可能だった。結論から言えば、東電は、津波対策は運転開始以来40年近く、ほとんど進化させていなかった(20センチ分かさ上げしただけ)。

2013-08-09 09:39:28
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑨これは責任が問われてしかるべきだろう。科学の進展でどんどん灰色度は増していたのだから。プレートテクトニクスも成立していない時代の備えから、ほとんど強化していないなんて論外だ。

2013-08-09 09:40:56
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑩ 数百億円かかる防潮堤を作らなくても、費用対効果のすぐれた対策はあった。可搬型のバッテリー(数百万円だ)を備えておくだけで、直流電源は維持できた。それだけで事故拡大はずいぶん防げた。事故後、東電は車のバッテリーをかき集めたが、あれを事前にやっておくのだ。

2013-08-09 09:42:18
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑪ 非常用発電機、電源盤を津波予測水位の上に設置(最低限なら数億円)なら、福島第二や女川と同じように冷温停止にこぎつけることができたはずだ。

2013-08-09 09:43:24
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑫ 視点3 そもそも安全余裕を切り下げていた責任はないのか。柏崎刈羽原発は予測していたより3倍以上の揺れに襲われたが炉心損傷までは至らなかった。揺れ予測の不確実性を見込んで、プラント側は余裕を持って作られていたからだ。

2013-08-09 09:44:11
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑬ 一方、津波の方はこの「安全余裕」がまったくなかった。津波高さが予測を数センチ超えただけで、冷却のために重要なポンプが機能しなくなることが2000年には判明していた。専門家は津波予測に2倍程度の誤差はあるとしていた。

2013-08-09 09:44:54
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑭ ところが安全余裕を設けることを義務付けると既存原発への影響が大きいため、電事連が余裕を設定することを渋り、土木学会を利用して基準から安全余裕を取り除いてしまった。

2013-08-09 09:46:39
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑮ 1997年から2002年にかけて電事連内部で進められた「津波の安全余裕切捨て」は、プラントの安全設計上大きな意味を持つ。当然、今回の事故でも主役級の責任がある。ところが検察は電事連から資料を押収したという話もないし、記事でも触れられていない。

2013-08-09 09:47:24
添田孝史 @sayawudon

不起訴⑯ ほかにもいろいろ突っ込みたい点はある。「不起訴へ」記事は産経がたびたび報じてきたが、朝日新聞も同じレベルの記事でかなりがっかり。検察の言い分を垂れ流すだけでなく、検察の判断をきちんと検証すべきだろう。今朝の記事は大本営発表そのものである。

2013-08-09 09:49:36