讃歌"Gloria"で追う音楽史

讃歌"Gloria"のテキストを用いた楽曲を追って、音楽史を俯瞰してみました。 TLでは駆け足になってしまいましたね。改めてテキストを見ながら、ゆっくり聞いて貰えれば嬉しいです。 *対訳 Gloria in excelsis Deo, 続きを読む
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

今日はためしに、同じテキストに対して各時代の音楽家がどのように作曲してきたか、順に追ってみたいと思います。

2013-10-08 20:18:39
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

とりあげるテキストは、Gloria in excelsis Deoにしましょう。ミサの通常文(日替わりでない部分)の一つにもなっている、古くからあるお祈りの文ですね。

2013-10-08 20:22:05

中世(~1400ごろ)

音楽史たん@開始 @musetta_ficta

それじゃ、はじめていきまーす。一つ目。 グレゴリオ聖歌 ミサ15番のグローリア http://t.co/SDMoq63vHU

2013-10-08 21:02:42
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

中世初期、各地で様々に歌われていた聖歌の整理・統一を試みたのが、教皇グレゴリウス1世(590-604)。言葉から注意をそらす余計な飾りを禁じ、「単旋律」が指定でした。

2013-10-08 21:05:34
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

仏教のお経にも通ずるなんとも素朴な感じ…もっと旋律的なのもあるのですが、一番シンプルなのを選んでみました。

2013-10-08 21:06:20
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

次は、レオニヌスのグローリア、トロープス付き(おそらく12世紀後半) http://t.co/NqJe1DBicV

2013-10-08 21:08:35
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

いきなり例外的なので申し訳ないのですが、トロープス(歌詞追加)がありますね。内容は、元の歌詞を説明的に拡張するものです。Gloria in excelsis Deoに続いて、Deoについて表現する言葉が続いています。

2013-10-08 21:12:10
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

9世紀ぐらいから、徐々に聖歌を即興でハモって歌うようになったらしい(オルガヌム)のですが、「どのようにハモるか」を指定して明確に"作曲"が行われるようになり、初めて名前とともに記録されているのが、このレオニヌス(仏レオナン:1150頃-1219)です。

2013-10-08 21:14:30
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

三つ目、トゥルネーのミサ グローリア(おそらく13世紀後半) http://t.co/OQDuITRYXR

2013-10-08 21:16:42
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

14世紀初頭、ミサ通常文のために作曲されたものを集めた曲集とかんがえられるのが「トゥルネー写本」ですね。一貫して作ったというよりも、パーツを集めてきて揃えた感じです。

2013-10-08 21:19:29
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

このグローリア、中世独特の終止と全体のリズムによる統一が特徴的ですね。最後のアーメンが壮大!(なお、作曲者は不明。あと、音源では女性が歌ってますが、当時の教会音楽は全て男性です)

2013-10-08 21:23:51

ルネサンス(1400~1600)

音楽史たん@開始 @musetta_ficta

4つ目、ギヨーム・デュファイさん(1400頃-1474) 「"武装した人"に基づくミサ」のグローリア http://t.co/zEldRzrsft

2013-10-08 21:28:04
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

フィリップ善良公(1419-1467)のブルゴーニュではじまった、音楽におけるルネサンスの最先鋒ですね。まだ中世っぽい終止も出てきますが、聞き慣れた三和音が鳴ってる瞬間が増えてるのがわかると思います。

2013-10-08 21:33:50
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

この頃には、ミサの通常文部分(キリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュスデイ)をワンセットにして、「通作」するようになっていました。全体の統一感を持たせるために、このミサ曲では「L'homme arme武装する人」という世俗曲の旋律を全体に使っています。

2013-10-08 21:36:38
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

5つ目、ジョスカン・デ・プレさん(1440頃-1521)の、同じく「"武装した人"に基づくミサ」のグローリア http://t.co/QBwgAnF4xj

2013-10-08 21:40:32
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

まさに、均整のとれた…いかにもルネサンス然とした作品です。初期教会音楽が、「言葉ら目を逸らさせる装飾はいらない」と考えていたのに対して、この頃には、「美しい音楽を神に捧げる」という発想があったみたいです。

2013-10-08 21:45:49
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

続いて、パレストリーナさん(1525頃-1594)。同じく「"武装した人"に基づくミサ」よりグローリア http://t.co/kUugeAmqjM

2013-10-08 21:48:20
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

中々一口には語れないところですが、この当時の教会は統制が取れておらず不正が横行していたみたいで、ルターやカルヴァンによる宗教改革運動が起こります。これを受けてカトリック側も引き締めを行なって「トレント公会議」が開かれました。

2013-10-08 21:52:24
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

レオニヌスのところで見たように、歌詞を追加するトロープスも随分やりすぎのものも会ったようで、トレント公会議でほとんど禁止になりました。ここで「理想の教会音楽」と位置付けられたのがパレストリーナさん。

2013-10-08 21:53:55
音楽史たん@開始 @musetta_ficta

こちらも「均整のとれた、穏やかな」…慣れない人は眠くなるとよく言いますね(笑) ジョスカンさんと並んでルネサンスの均整美を代表する人です。逆に考えると、パレストリーナさんをわざわざ持ち上げなくちゃいけないということは、"非均整の音楽"がかなり出回ってたってことですね。

2013-10-08 21:56:57

バロック(1600~1750)

音楽史たん@開始 @musetta_ficta

一口で言うと"非均整の美学"を導入したのがバロックになるでしょうか。 次はモンテヴェルディ(1567-1643)の8声のグローリア http://t.co/F58J2MzVlz

2013-10-08 22:03:55
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音楽史たん@開始 @musetta_ficta

パレストリーナさんの後にモンテヴェルディさんを置くと、色々衝撃的ですね…!荘厳・厳粛なミサを"演出する"以上に、喜び讃える感情や罪の痛みを"表現"する方向に切り替わっています。歌詞と音楽上の表現が密接です。

2013-10-08 22:08:50