シマウマ(f_zebra)さんと(何度でも)考える『合理的なリスク評価』

うさぎ林檎さん(usg_ringo)の代理で作成しました。 →http://usg-ringo.tumblr.com/post/69973589341/f-zebra
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Flying Zebra @f_zebra

何度も指摘していますが、それまでの原子力安全・保安院に代わって原子力規制委員会ができたとき、彼らに求められていたのは原子力の安全な利用を保障することではなく、安全を確認することでもなく、ただ原子炉の稼働を阻止することでした。その意味で、彼らは忠実に期待に応えています。

2013-12-14 20:36:43
Flying Zebra @f_zebra

政権が変わり、求められる役割が変わっても、仕組みも人も変わらない以上、行動原理が変わらないのはある意味当然かもしれません。ところで、原子炉に対する新しい安全基準の適合性審査で彼らが活断層の評価に執着する根拠の一つは、国会事故調が提起したあるシナリオです。

2013-12-14 20:39:13
Flying Zebra @f_zebra

つまり、1Fプラントは津波以前に地震で大きな損傷を受けた可能性があるというもので、これを根拠として原子力プラントを再稼働させる条件に極端に高い耐震安全尤度を要求しています。このシナリオは規制委員会自身による追加調査で否定されました。しかしその後も、彼らの態度は変わりません。

2013-12-14 20:40:48
Flying Zebra @f_zebra

過酷事故に対する安全性を高めるために極端な耐震尤度を要求する合理的根拠は既に失われていますが、そもそも彼らには合理的、科学的な判断が求められているわけではなく、どんな理由であれ原子炉の稼働を阻止してさえいれば責任を追及されることはない仕組みになっています。

2013-12-14 20:44:01
Flying Zebra @f_zebra

一方、ひとたび原子炉の稼働を認めてしまえば、その後もし事故でも起これば稼働を認めた責任を厳しく追及されるという立場です。経済への影響などは考慮「しない」ことが明確に求められており、どんなに不合理であろうと何とか難癖を付けて審査を引き延ばすという動機は大いにあります。

2013-12-14 20:47:49
Flying Zebra @f_zebra

現在の日本の原子炉に対する安全基準、そしてそれを運用している規制当局の方針は間違いなく世界一「厳しい」ものですが、アメリカやフランス、IAEAなどの規制に対する考え方の根本にある「合理性」が著しく欠落しているため、極めてバランスの悪いものになってしまっています。

2013-12-14 20:52:57
Flying Zebra @f_zebra

規制委員会がどれだけ頑張っても、来年度中には複数の原子炉が再起動するでしょう。そのとき、世界一厳しい規制の下に運用される日本の原子力発電は、残念ながら世界一「安全」とは言えません。合理性の欠如は、間違いなく安全性を阻害します。

2013-12-14 20:56:57
Flying Zebra @f_zebra

それでも、事業者や関連業界の努力によって、わが国の原子力発電は非合理的な規制の下でも非常に高い安全性を実現できています。少なくとも、原子炉を動かさずに火力発電に頼った綱渡りのエネルギー供給を続けている現状は、原子炉を動かすよりも遙かに危険です。

2013-12-14 21:02:55
Flying Zebra @f_zebra

そもそも人類が、そしてわが国が原子力という扱いの難しいエネルギーの利用に挑戦し、何とか実用化に漕ぎ着けてきたのは、エネルギーの供給不安や化石燃料に依存するエネルギー戦略のリスクが、原子力利用という大きなリスクよりもさらに大きかったからです。

2013-12-14 21:43:08
Flying Zebra @f_zebra

原子力開発が始まった当初に心配されていた化石資源枯渇のリスクについては、採掘技術の向上、非在来型資源の利用技術などによってかなり緩和、つまり先送りできるようになりました。一方、大量のCO2排出による気候変動という新たなリスクが明らかになっています。

2013-12-14 21:43:55
Flying Zebra @f_zebra

震災以降、日本では政府も国民も気候変動の問題については意図的に目を逸らし、真剣に考えることから逃げ続けています。合理的に考えれば、この問題を先送りすることは将来の世代に原子力利用などとは比べものにならない大きなリスクを背負わせることになるのは明らかです。

2013-12-14 21:49:50
Flying Zebra @f_zebra

ところが、リスクを定量的に比較した結果というのは往々にして自分の直感と異なるため、素直に受け入れられない人も多いようです。そもそも、マスメディアを含め世論の多数派はリスク比較の作業を全くしないまま形成されているように見受けられます。

2013-12-14 21:51:33
Flying Zebra @f_zebra

世界の指導者達も最近まで、気候変動の問題の巨大さは認識しつつも、現実的な対処があまりに困難なため直面することから逃げていました。1997年の京都議定書は大きな一歩ではありましたが、アメリカや中国が加わらなかったこともあり不完全なものになっていました。

2013-12-14 21:55:40
Flying Zebra @f_zebra

京都議定書の第二約束期間が終わる2020年代以降の枠組みを考える段になって、ようやく重い腰を上げ、アメリカも中国も動き始めています。これまでEUと並んで先頭を走っていた日本はここに来て急に後ろ向きになり、世界から取り残されつつあります。

2013-12-14 22:00:37
Flying Zebra @f_zebra

日本以外の国々が必ずしも合理的な意思決定をしているわけではありませんが、合理的であろうとする姿勢を自ら放棄し、合理的な「安全」よりも心情的な「安心」を優先するような愚策を政府が率先して行うような現状は、非常に危ういと感じます。

2013-12-14 22:16:09
Flying Zebra @f_zebra

原子力に対する忌避が合理的でなかったとしても、国民の選択として敢えて脱原子力を目指すというのはもちろん可能です。ただ、原子力のオプションを捨てることによるデメリットを精査しないまま、将来の世代に大きな影響を与える決定をしてしまうことは余りに無責任です。

2013-12-14 22:21:57
Flying Zebra @f_zebra

原子力の利用に特有のリスクがあり、廃棄物の処分問題など、未解決の問題が残っていることも事実です。技術的な課題はほぼ解決されていますが、合意形成という政治的な側面は今後どの国でもますます困難になるでしょう。

2013-12-14 22:29:45
Flying Zebra @f_zebra

一方、温暖化ガスの排出による気候変動は将来にわたって、期待値で比較すれば原子力災害よりも遙かに甚大な被害を地球規模でもたらします。それを技術的に防止することは不可能ではないかもしれませんが、現状では目処すら立っておらず、もちろん合意形成も全くできていません。

2013-12-14 22:30:50
Flying Zebra @f_zebra

不確実性の高い気候変動のリスク以外にも、エネルギーのほとんどを輸入に頼っている日本においてはエネルギーの安定供給が脅かされるというより確定的なリスクも存在します。実際にショートが起こらなくても、その危険が高まるだけで経済は大きな打撃を受けます。

2013-12-14 22:33:36
Flying Zebra @f_zebra

今現在は実際に電力供給が不足しており、せっかくの円安局面に製造業が自由な生産計画を立てられない事態が継続しています。大規模停電が起きなくても、生産活動は現実に制限を受けており、経済に直接的に悪影響を及ぼし続けています。

2013-12-14 22:36:55
Flying Zebra @f_zebra

言うまでもなく(でも気付かない人も多いような…)、経済の足が引っ張られることは国民の生命と安全に対する大きなリスクです。一般に豊かな国ほど平均的に人が健康に長生きできることは容易に理解できるでしょう。「経済より安全」などというのが如何に空虚かも。

2013-12-14 22:39:35
Flying Zebra @f_zebra

この2年間、日本は震災後の緊急安全対策を済ませた原子炉のほとんどを止めたまま遣り繰りしてきました。これは、私たちの「安全」にどの程度寄与してきたのでしょうか。そもそも、仮に原子炉を動かし続けていた場合と比較して現在は「より安全」な社会なのでしょうか。

2013-12-14 22:44:20
Flying Zebra @f_zebra

繰り返しになりますが、リスクについては合理的、定量的に検討した結果はしばしば私たちの直感とは食い違います。私たちの直感は、極端に発生頻度が小さく、でも被害規模は極端に大きいというハザードを正しく「感じる」ことはできません。

2013-12-14 22:47:30
Flying Zebra @f_zebra

子供達、そして子孫が生きて行く将来の社会の方向性を考える際には、不確かな直感だけに頼るのではなく、合理的なリスク評価に基づき、少しでも安全で豊かな社会の基盤を残すのが、現在の大人が果たすべき責任ではないでしょうか。

2013-12-14 22:49:35