河童と焼き芋を食べた話

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齋藤虎之介 @tora404

芋掘りをした。畑に芋を植えていたので特に必要だとか、食べたいということはないのだけれど収穫はしないといけない。なぜ必要のない芋を植えたんだろう、と芋掘りをしながら考える。ゴロゴロと土の中から出てくる芋たち。よくよく考えると芋はそれほど好きではない。

2014-01-29 15:38:17
齋藤虎之介 @tora404

どう考えても芋を植える理由なんかないはずだけど、畑に芋があるんだから掘るしかない。ゴロゴロと土から出てくる芋たち、これ、どうすんだよ。と思いながら掘り続ける。隣の爺さんが通りかかり「おや、今年は芋を植えたのか?」と聞いてくる「ええ、まあ。物凄い豊作ですわ。」と答える。

2014-01-29 15:38:25
齋藤虎之介 @tora404

「ちょっとわけてくれんかね。」と言われたので10本程わけてあげた。しかし芋はまだまだ残っている。10月といっても芋掘りをしていると汗が噴き出してくる。雲ひとつない秋晴れの日に好きでもない芋をせっせと掘る。不毛だ。3分の2ほど掘り終えた所で休憩することにしたが弁当を持ってくるのを

2014-01-29 15:38:34
齋藤虎之介 @tora404

忘れてしまった。しかし幸か不幸か芋が大量にある。焼き芋にでもするか、と火を起こすことにした。畑のそばにある雑木林に入り、枯れ葉や枯れ木をせっせと集めた。これくらいでいいだろうと畑に戻ると河童がいた。川から大分離れたこんな畑に何の用だろうと思い恐る恐る声を掛けた。「何してるんだ。」

2014-01-29 15:38:43
齋藤虎之介 @tora404

「あぁ、これ今から食べるんですか?」「うん、そうだけど。弁当を忘れてしまってな焼き芋でも食べようかと。」河童はそれを聞いてもじもじしながら申し訳なさそうに「僕も一緒に食べていいですか?」と聞いてきた。「いいよ。でも河童なのに焼き芋食べるのか?魚とかキュウリじゃないのか?」

2014-01-29 15:38:52
齋藤虎之介 @tora404

「はい、基本そうなんですけど僕は芋が大好物で。河童の中でも結構珍しいんですよ。」「だろうな。ま、そこに座って待っとけや。今火をおこして焼くから。」「はい。わかりました。」といい河童は畑の側にあった岩の上に腰を下ろした。枯れ葉を置きその上に小枝その上に太い木を置いて

2014-01-29 15:39:23
齋藤虎之介 @tora404

焚き火の準備をしていると「あの、名前なんていうんですか?」と河童に聞かれた。河童に名前を教えるのはなんだか少し躊躇われたけれど、勘兵衛だと答えた。すると河童は、僕は木村です。という。「おいおい、やけに人間ぽい名前だな。最近の河童はみんなそうなのか?」

2014-01-29 15:39:35
齋藤虎之介 @tora404

「そうですね大体こんな感じですよ。同じ土地、同じ言語を使ってるんだから自然と同じような感じになるんじゃないですかね。」「ふーん、そうなんだ。河童って川に引きずったり尻子玉抜いたりと結構悪人なイメージあるんだけどな。」「あぁ、それ昔の話ですよ。

2014-01-29 15:39:46
齋藤虎之介 @tora404

いまそんなことしてる河童はほとんどいませんよ。稀ですね稀。」「まだいるにはいるんだ…。」「まあ老人だとか古い考えの河童ですね。人間にもいるんじゃないですか?古き良きをなんとかを守らないと!って頑なになってる人。

2014-01-29 15:39:56
齋藤虎之介 @tora404

時代と共に文化や風習も変わるんだから、それらと上手く融合して調和させる事によって伝統や文化、風習は残していくものだと思うんですけどね僕は」「木村、お前なんか凄いな。」勘兵衛は唖然としたが木村はあっさりと「そうですかね。こういう考え方は人間だけじゃないですよ。

2014-01-29 15:40:05
齋藤虎之介 @tora404

河童というか妖怪っていわれてる皆が大体そう考えてますよ。じゃないと時代のナミにおいてかれて生き残れないですからね。」「まあそうだけど。しっかりしてるんだな。」と言うと木村は照れくさそうに笑った。焚き火の火もいい塩梅に落ちて炭火がユラユラとオレンジ色に輝いている、

2014-01-29 15:40:17
齋藤虎之介 @tora404

丁度焼き芋をするにはベストの状態になっていた。芋を投入ししばし待つ。「さっきの話だけど妖怪っていわれてる皆って言ったけど、河童以外の妖怪も結構いるもんなのか?俺は今日木村に会うまで妖怪なんか見たことなかったぞ。」「ええ、どこにでもいますよ。

2014-01-29 15:40:40
齋藤虎之介 @tora404

友達にあかなめと小豆あらいとかまいたちがいますよ。」「あかなめって本当にいたんだ…。」「人間が妖怪を見ないのと同じで、妖怪も人間を見ないんですよ。」「そうなのか!」勘兵衛は驚いた。「ええ、だから妖怪の中には人間なんかいない、いるわけないっていう奴もいますし。

2014-01-29 15:40:51
齋藤虎之介 @tora404

大抵の妖怪は人間を信じていませんよ。」「いや、だってあかなめなんか人間の家の風呂場にくるじゃないか。」「それも人間の家だと思ってないんですよ。誰か違う妖怪の家だと思ってるんですよ。

2014-01-29 15:41:01
齋藤虎之介 @tora404

多分僕ら妖怪と人間は丁度いいバランスでお互い物理的にも間接的にも干渉せずに暮らしてるんじゃないですかね。存在が見えないのか、何かの力で偶然に見ることが出来ないのか、それはわからないですけど。」「でも、じゃあ何で俺とお前はこうして話をしているんだ?

2014-01-29 15:41:10
齋藤虎之介 @tora404

というか何でお前はそんな事を知ってるんだ?」「多分僕が人間が見える体質だからじゃないですかね。それに反応して勘兵衛さんにも見えると。うまく説明出来ませんけど。それから何で気付いたかって言うと経験ですかね。人間と妖怪の観察をしていてそうなんじゃないかなって。

2014-01-29 15:41:19
齋藤虎之介 @tora404

お互い物凄く微妙な距離で生活してるんですよ。もう少しで人間と妖怪が鉢合わせる!っていう時でも絶妙のタイミングでどちらかがいなくなる。すれ違ってもお互い気づかない時もありましたよ。元々そこにないものあるわけがないと信じ込んでいたら、そこにあっても見えなくなるんじゃないでしょうかね。

2014-01-29 15:41:35
齋藤虎之介 @tora404

引き戸だと思って引いたり押したりしても全然開かなくて、鍵閉まってんのか?と思ったら引き戸だった。みたいな。ちょっと違いますけど。」「へーそういうもんなのかあ。初めて聞いたなそんな話。」「人間と妖怪お互い思っているよりも直ぐ側で暮らしてますよ。」芋が焼けたので2人で食べる。

2014-01-29 15:41:44
齋藤虎之介 @tora404

熱々の芋を半分に割ってみると金色した芋が美味しそうな匂いを辺り一面に振り撒いた。なかなか良く焼けた。河童の木村はハフハフと実に美味しそうに芋を食べていた。「勘兵衛さんは芋を作って暮らしてるんですか?」と木村から質問される。「いや何でも作るよ。キュウリ、ナス、トマト、

2014-01-29 15:41:53
齋藤虎之介 @tora404

でもやっぱり米が一番かな。主食だし一番高く売れるから。」「へーそうなんですか。なんで芋を作ったんですか?」「うーんそれわからないんだよ。さっき考えてたんだけどなんで芋を作ったのか思い出せないんだ。」と言うと「なんですかそれ」とケラケラ笑った。

2014-01-29 15:42:03
齋藤虎之介 @tora404

勘兵衛もなんだか可笑しくなって木村と一緒にケラケラ笑った。「人間って結構食べるの大変そうじゃないですか。だから計画的に農作物を作ってるのかと思ってましたよ。」「まあ大抵の人間はそうだと思うよ。俺が少し変なのかもな。」「芋が好きな河童の僕と少し似てるかもしれませんね。」

2014-01-29 15:42:12
齋藤虎之介 @tora404

そしてまた2人でケラケラ笑った。「そうだ、そんなに芋が好きなら少し持っていくか?」と勘兵衛が聞くと芋を食べる手を止め一瞬嬉しそうな表情になった木村だっだが「ありがとうございます。でも、僕火を使えないから。河童なので一応火が怖いんです。」

2014-01-29 15:42:30
齋藤虎之介 @tora404

「そうかそうだよな。じゃまた食べたくなったら来いよ。また一緒に食べよう。」「え!本当ですか?いいんですか?」「うん、いつでも大丈夫だよ。」「じゃ、今度お礼に魚持って行きますね。」木村が嬉しそうに答える。そうしてまた一緒に焼き芋を食べようと約束し2人は別れた。

2014-01-29 15:42:39
齋藤虎之介 @tora404

今度は焼き芋と焼き魚パーティーだな。そうだ酒も飲めるのか聞いといたらよかったな。そう思うと楽しみで、芋なんか面倒くせえなと思っていた勘兵衛だったが今は作ってよかったと思えた。こんなことになるなら隣の爺さんにあげるんじゃなかったな。おわり。

2014-01-29 15:42:53