【実況】 キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー #6(発掘)
「それはどういう……」ギンイチは年配マッポの背中に問いかけようとした。彼はもう茶の間へ戻るところだった。衝撃!何たる職務怠慢!「出動無しですか?いいんですか?」若マッポも質問するが、年配マッポが「書き物!」と叱責すると、すぐに気持ちを切り替え、再びスズリで墨を磨りはじめた。
2010-11-05 23:20:14「そんな!タスケテクダサイ!ニンジャがたくさんの人を殺しているんだ!早くしないと、もっとたくさんの人が……」ギンイチが言い募るが、年配マッポは険しい顔で首を振るだけだった。「ニンジャっていうのはな。まあ、いろいろ難しいんだ。そのうちわかる。残念だが、帰ンなさい」
2010-11-05 23:29:54ピシャリ、と音を立てて、茶の間の障子戸が閉まった。ギンイチはすがるような目で若マッポを見た。だが、もはや若マッポはその表情から人間らしさを自ら拭い去り、機械的にスズリで墨を磨るばかりであった。「帰りなさい」 ギンイチを見ずに言った。上司の命令は絶対なのだ。
2010-11-05 23:37:45ギンイチはよろよろとムコウミズ・ストリートをあてもなく歩く。霧のような重金属含有雨が降り出し、行きかう人々はトレンチコートの襟をかきあわせて、足早に通り過ぎていく。「重複すると不利益」と書かれたネオンサインが雨水を受けてバチバチと音を立てる。
2010-11-05 23:53:43上空ではどこかの企業のチャーターヘリがヒュンヒュンと音を立てて飛んでゆく。バリキ・ドリンクの空き瓶が転がってきて、ギンイチの靴のつま先に当たって、止まる。編み笠をかぶった電子浮浪者たちはマイコ・センターの看板を手に持って、雨の中、棒立ちになっている。そうして日銭を稼ぐのだ。
2010-11-06 00:03:26#NJSLYR 「重複すると不利益」 それにしても実にマッポーですね 恐ろしい。ナムアミダブツ! ノヽ(・w・ )ノヾ
2010-11-06 00:04:23ギンイチは自問した。どうしてイチジクは自分の前にあらわれたのだろう。どうして自分は「反射神経ストーム」、あの無機質な高揚、電子タンクの残像の世界から、進んではみ出したのだろう……そして、どうして? ……だからって、どうして、こんなひどい結末を、運命は用意して、待っていたんだろう?
2010-11-06 00:09:40気づけばギンイチはアスファルトに膝から崩れ落ちていた。こうしている間にもあの異常ニンジャは無意味な殺戮を続けていることだろう。いずれその魔の手はイチジクに及ぶ。そしてギンイチは何もできない。それを止める手立てを持たない。今では道行く人々もまばらだ。電車が終わったからだ。
2010-11-06 00:16:23どの道、声をかける手立てもない。助けを求めたところで、進んで見ず知らずの人を殺人鬼から助けようとする者などいるわけがない。いたとして、あのニンジャに勝てるわけがない。……ハッポー塞がりの絶望であった。ギンイチの胸中に、次第に悲愴な決意が育ちつつあった。
2010-11-06 00:19:50戻ろう。「ヨタモノ」に戻って、イチジクを助けるんだ。そして殺されよう。後悔を引きずって惨めに生き続けるよりは、美しい記憶でこの人生を閉じてやろう。素敵な女の子に話しかけられて、心揺さぶられる音楽に触れた。あとは素敵な女の子のために命を投げ出して、この記憶を永遠のものとしよう。
2010-11-06 00:24:44雨の中、ツカツカと歩いてきた男が、うずくまるギンイチの前で立ち止まった。泥水が撥ねた。進路を妨害してしまった。「スミマセン」ギンイチはよろめきながら立ち上がった。脇に退いたが、男は行かなかった。ハンチング帽を目深にかぶった男は、低く問うた。「さっき『ニンジャ』と言ったのはお前か」
2010-11-06 00:30:26「アイエエ……」ギンイチは震えて後ずさった。男はさらに一歩近づいた。「お前だな。確かにお前の声だった。……『ニンジャ』。『ヨタモノ』。間違いないな」
2010-11-06 00:35:42#NJSLYR 少年がすべての希望を断たれて、そして、自分を捨てて最後の勇気を振り絞った時に現れる。これぞまさにヒーロー。溜めに溜めた甲斐があったというものですね。
2010-11-06 00:37:55「ア、アイエエ……」ギンイチはさらに後ずさった。男はさらに一歩近づいた。ギンイチの背中にモジョ・ガレットのセルフサービス屋台がぶつかり、横倒しになったが、男は意に介さなかった。「『ヨタモノ』にニンジャがいるのだな?」
2010-11-06 00:39:51ギンイチはからからの喉から声を絞り出した。「タスケテください、タスケテ……僕には何にもできないんです……」涙が溢れ出した。男はハイともイイエとも言わなかった。ただ、その瞳は、ゾッとするようなマッポー的表情を浮かび上がらせていた。憎悪と……愉悦!
2010-11-06 00:45:12