ビッグコミックスピリッツ25号の特集記事(美味しんぼ)に書かれている安斎育郎氏の文章を読んで 高岡滋さんのコメント

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高岡 滋 @st7q

①第一の専門が疫学・公衆衛生学ではない私でも、ビッグコミックスピリッツ25号の特集記事に書かれている安斎育郎氏の文章を読んで、この方は疫学や公衆衛生学に相当疎い方と感じざるをえなかった。

2014-05-22 20:07:37
高岡 滋 @st7q

②まず、鼻血や倦怠感に関する統計を事故の前後で比較しなければ、増えているのかどうかわからないという趣旨の記載があるが、これは間違い。時間的比較のみならず場所での比較などがおこなわれる。もし安斎氏の主張が正しければ、公害被害は決して明らかにならないことになる。

2014-05-22 20:07:57
高岡 滋 @st7q

③そして、安斎氏が鼻血や倦怠感のデータについて承知していないとのべた後に、バイアスという言葉が使用されている。ここでバイアスという言葉は因果関係の文脈で語られており、この場面では、バイアスは心理学用語ではなく統計学用語、疫学用語であり、指標の系統的な誤差を指す。

2014-05-22 20:10:24
高岡 滋 @st7q

④したがって、バイアスという言葉は、データが存在して初めて考察可能となるものであり、安斎氏がおこなっているように、データが収集されていない時点で、バイアスについて何かが強く推察できるかのよう述べられるべきものではない。また、データ採集後も定量的に述べられるべきである。

2014-05-22 20:11:57
高岡 滋 @st7q

⑤系統的誤差としてのバイアスを考察、克服するために統計学、疫学が用いられるのであり、それが適用される前から何かのバイアスについて分かったような発言をするのは専門家としては反則である。よほど疫学を知らないか、御用学者ぐらいでないとこのようなバイアスの語り方はできないと思う。

2014-05-22 20:12:20
高岡 滋 @st7q

⑥もしも、述べられた安斎氏の統計学、疫学に対する理解が正しいものであるならば、現実の環境汚染による健康影響は不可知のものとして、闇に葬られることになる…自動的に。これは東電と環境省にとっては、願ってもない「お言葉」である。

2014-05-22 20:14:37
高岡 滋 @st7q

⑦そして、個人差はあるとしながらも一度に1シーベルト以下で倦怠感は起きないというのは、どこにその科学的根拠、データもしくは文書が存在するのであろうか。その根拠を具体的に示される必要があると思う。

2014-05-22 20:15:08
高岡 滋 @st7q

⑧自覚症状は、一般的に特異度が低いかもしれないが、調査内容により感度が高いことも低いこともある。どちらにしても、倦怠感を含む自覚症状も疫学的考察の対象となりうる。

2014-05-22 20:15:30
高岡 滋 @st7q

⑨自覚症状による調査で、より鋭敏な結果が出る可能性もあり、地域保健法などの法律に基づいて調査が可能であるにも関わらず、行政や行政につき従う学者らは自覚症状を調査しようとしない。

2014-05-22 20:16:22
高岡 滋 @st7q

⑩私は、2011年の事故直後に福島県が健康調査をすると発表したときに、行政は自覚症状を調査項目に入れないだろうと予測したが、実際、そのとおりになった。曝露(被曝)側の情報だけとって調査したことにするのである。そうすれば、健康障害の実態は表に出ないことになる。

2014-05-22 20:17:02
高岡 滋 @st7q

⑪実際にチェルノブイリで1シーベルトよりもかなり低い被曝を受けた子供たちに鼻血や倦怠感が増えているというデータがある。また、自覚症状を個々に調べた研究を前提としなくとも、安斎氏の見解が間違っている可能性のほうが高い。

2014-05-22 20:17:26
高岡 滋 @st7q

⑫100mSv以上で癌死が増加するというコンセンサスがある。その一方で、倦怠感は一度に1Sv浴びないとおこらない(=増えないの意)というのは奇妙だ。そもそも、まともな公衆衛生学の専門家は、こんなに簡単に「ない」とか「絶対ありません」(野口邦和氏)とか言ったりはしない。

2014-05-22 20:18:36
高岡 滋 @st7q

⑬安斎氏に悪意はないのかもしれないが、いずれにしても、このような安斎氏の発言を国・環境省は大歓迎しているに違いない。一石二鳥あるいは三鳥、四鳥である。反原発の専門家と考えられている人の主張が、御用学者でも言うに憚られる内容になっているからである。

2014-05-22 20:20:36
高岡 滋 @st7q

⑭ところで、安斎氏が1Svという数字を出すのは、「確定的影響」を念頭においているためだろう。しかし、確定的影響として想定されているものは(造血障害→血小板減少などの機序による)出血(hemorrhage)であり、鼻血(nasal bleeding)とは異なる。

2014-05-22 20:21:15
高岡 滋 @st7q

⑮これらは些末な問題ではない。揚げ足取りをするつもりもない。本質的問題である。科学としての問題と同時に倫理的な問題を孕んでいる。このような発言が第一人者によってなされる「放射線防護学」の存在意義を疑わざるをえない。

2014-05-22 20:21:43
高岡 滋 @st7q

⑯長年の反原発を貫いた安斎氏の姿勢は貴重なものである。しかし、国民に大きな誤解を与えうる発言が多くの人々に伝えられたことに対して沈黙するならば、私達もその責任を問われかねない。今後安斎氏が健康障害についてコメントされるおつもりなら、一から出直されることをお勧めしたい。

2014-05-22 20:22:34