マグロ・サンダーボルト #5

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ケジメは後でいい。質問に答えろ。どうやって奴に爆弾を装着した」チバが無慈悲に言い放つ。「別な野郎と取り違えたんです。ラッキー・ジェイクって名の、ケチな賞金首です。気絶してる所を……」ウェイダが事実を語る。「……取り違えた?」チバが怪訝な表情を作り、グンバイで口元を隠す。 47

2014-05-28 00:03:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アマクダリ秘密基地の3Dモニタに、ジェイクの断片的データが表示される。重サイバネの犯罪者。脅威度軽微。アマクダリが動くまでもない小物。だがそれ以前にどう見ても日本人ではない。「豚でも見分けがつくぞ。もう少しマシな嘘をついたらどうだ」「それが……担当者がラリっていたとしか…」 48

2014-05-28 00:09:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チバは、俄にはウェイダの真意を汲み取れなかった。(((仕事中にラリっているような奴が、ニンジャスレイヤーに爆弾を装着できるとでも思っているのか……?)))グンバイで口元を隠したまま、戦略チャブの斜め前にいるアガメムノンを見やる。参謀も判断を保留し、硬い表情で首を横に振った。 49

2014-05-28 00:16:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チバは、俄にはウェイダの真意を汲み取れなかった。(((仕事中にラリっているような奴が、ニンジャスレイヤーに爆弾を装着できるとでも思っているのか……?)))グンバイで口元を隠したまま、戦略チャブの斜め前にいるアガメムノンを見やる。参謀も判断を保留し、硬い表情で首を横に振った。 49

2014-05-28 14:15:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……まあいい、顛末はあとで聞く」チバはネヴァーモアを指先で招き、葉巻をくわえた。いずれにせよニンジャスレイヤー爆殺寸前は事実だ。掌がじっとりと汗ばむ。ウェイダの鬼気迫るテンションが、チバにまで伝染していた。いまやアマクダリ司令室にも、張りつめた異様なアトモスフィアが漂う。 50

2014-05-28 14:23:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ラオモトに倣い、チバは部下の野心を尊重する。野心が無ければ、ヤクザは勤まらぬからだ。しかしそれは同時に、忠誠心によって支えられねばならぬ。ウェイダの反応はシリアスだ。だが何かが引っかかる。(((ウェイダの所にエージェントを送って、締め上げるか……)))チバは葉巻を燻らせた。 51

2014-05-28 14:27:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい、ウェイダ=サン。既にアクシスを載せたヘリが現地へ出動中だ。お前はこちらに奴のナビ情報とバイタル情報を流し続けろ、いいな」チバが命ずる。ウェイダは了解する。だが彼の目と心は戦闘画面のウィンドブラストを祈るように見つめていた。(((殺れ…!殺れ…!殺ってくれ……!))) 52

2014-05-28 14:33:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウェイダ=サンを殺れだと!?」急カーブを切りながらヤクザカマロを激走させるハシバは、片手でIRC通話を行う!彼はアベの待つ非合法ショップに向かわず、Uターンした。何故か?脳内を泳ぐ2匹のサイバーイルカが、アベも彼を待ち構えて殺そうとしている、と、危険を報せてくれたからだ。 53

2014-05-28 14:42:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ああ、そうだ。ハシバ=サン、何やら今夜、あンたのクランがザワついてるらしいじゃねえか。同盟相手に声かけてY-14かき集めたり、イキのいい傭兵がいねえか聞き回ってる……だろ?』IRCの相手は、ハシバが密かに接触を持っていたマン・オブ・ウォー・ヤクザクランの顔役、ゲンダチだ。 54

2014-05-28 14:46:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「詳細は知らねえ。ウェイダ=サンがついにトチ狂ったんだろ。でもな、止める奴なんか誰もいねえ。上から順番に、みんな狂ってくのさ。フザけた話だろ……」ハシバは交差点でドリフトをしくじり、老婆を跳ね飛ばした。「アイエエエ!」『なら好都合だな、あンたにとっても、我々にとっても……』 55

2014-05-28 14:52:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((……ファック!)))ハシバは急停車しハンドルを叩いた。『どうした、怖じ気づいたか?』「少し待ってくれ」ハシバは車から降り、重金属酸性雨の中に立ち、愛車の車体後方のヘコみを確認して激昂した。「アイエ……救急車…」「スッゾコラー!」ハシバは倒れた老婆を射殺!「アバーッ!」 56

2014-05-28 15:00:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシバは何事も無かったかのように愛車に乗り込み、ネクタイの乱れを直してから、アクセルを踏み込んだ。ギャギャギャギャ!ヤクザカマロは急発進!その目的地はサムライヘルム・オブ・デス・ヤクザクランの事務所ビルだ!「待たせたな、ゲンダチ=サン。ジジイを殺す。やってやろうじゃねえか」 57

2014-05-28 15:05:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ、ああ、そうだ」ハシバは頷き、提示される条件に合意する。ゲンダチは、ハシバが待遇に不満を持つ腕利きグレーターヤクザである事を知っている。だがそれは、少し前までの話だ。いつの間にか垂れてきた鼻血を拭いつつ運転するハシバを見れば、ゲンダチもこの計画を思いとどまっただろう。 58

2014-05-28 15:12:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ほとぼりが冷めるまでオキナワ潜伏は可能だな?」だがIRC音声通信を聞く限り、ハシバは完璧なヤクザで、どんなに困難で非道なビズもやり遂げると思わせる凄みがあった。「そうか、女を連れてってもいいな…?」ハシバはサイバーグラスをかけたメルの白い裸体と鮮烈なリップを脳裏に描いた。 59

2014-05-28 15:17:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「…よしわかった。だが、ウェイダ=サンは強敵だぜ。サイボーグでカラテが蘇りやがった」ハシバは煙草を吹かした。カマロは時速100キロで破滅へ突っ走った。「奴の胸は俺のパンチだけじゃなく、弾も弾き返す。無理だって言ってんじゃねえさ、より確実にビズをやるためだ。いい武器はねえのか」60

2014-05-28 15:24:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「直結型ヤクザガン…AY77か?75?悪くねえな」車を飛ばすハシバの目と脳には、暗闇に浮かぶネオン文字が飛び込み、過ぎ去ってゆく。「それを青ストライプスーツのY-14が持ってくる?4人?そうだな、十分だ……!」アクセルを踏み込む。カマロは二匹のイルカを伴って夜の闇に消えた。 61

2014-05-28 15:31:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方その頃、遠く離れたパンキチ・ハイウェイでは、デッドヒートが最高潮を迎えようとしていた。時速100キロで走り戦い続ける2人のニンジャを祝福するかのように、再び重金属酸性雨が降り始める。……遠雷の音。ナンシーとの合流地点、そしてアマクダリの放った武装ヘリが刻一刻と近づく! 62

2014-05-28 15:41:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」死神の右フックが叩き込まれる!「グワーッ!」ウィンドブラストに痛打!だが彼は歯を食いしばり走行姿勢を立て直すと、逆にチャージ攻撃を仕掛けた。「イヤーッ!」「グワーッ!」死神の上体が揺れ、側壁側へと押される。泥臭い攻撃だが、それは走行ペースとスタミナを確実に奪う。63

2014-05-28 15:47:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーが押し返し、走行車線を右へと移動する。ウィンドブラストの肩のワン・インチ横を、中央分離帯のネオンカンバンがかすめる。接触は即、敗北を意味する!「イヤーッ!」ウィンドブラストは睨み返し、死神の背中にカラテフック強打!「グワーッ!」 64

2014-05-28 15:53:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

両者は再び中央車線へと戻り、並走し、睨み合う。最後の心理戦だ。見えぬカラテが激突する。体力が限界へと近づく。熾烈なイクサである。……サイバネティクスが発展し、外見も、記憶すらも、もはや自己と他者の境界線を引く保証とはならぬ未来……そこではカラテこそが己を己たらしめるのだ! 65 

2014-05-28 15:57:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

両者ともに、この一撃で敵を殺す覚悟を決めた!先に仕掛けたのはウィンドブラスト!「イヤーッ!」跳躍!後頭部を狙った回転カラテキックだ!蹴り足をエメラルド色のオーラが纏う!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの背中に縄のような筋肉が浮き上がり、渾身の力を籠めたチョップを振り下ろす! 66

2014-05-28 16:05:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」ウィンドブラストは空中で目を剥いた。時間が静止したかの如き、奇妙な浮遊感が彼を包んだ。彼は自らの蹴り足がチョップ切断された事を、そして己のカラテの完全敗北を悟った。だが不思議と、後悔も恐怖も無かった。己にニンジャスレイヤーは殺せなかった。ただそれだけの事だった。67

2014-05-28 16:14:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして世界の速度は急加速した。片脚を失ったウィンドブラストは着地に失敗し、時速100キロの上体で転倒。全身をアスファルトに削り取られながら、血みどろで後方へと猛スピードで転がってゆき、スリリングなサーフミュージックを再生し続ける装甲ヤクザベンツのフロントガラスへと激突した。 68

2014-05-28 16:20:17