- bottle_gatari
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今夜は「鹿娘」と「虚空太鼓」の二編をやるよ。ちなみに、暫く放置していたのは妖怪の時計をいじってたとかそういうのじゃないからネ。邪推はよくない。
2014-08-01 22:33:49昔、深山の奥で立派な女房がお産をして女児を産んだが、女房は産後の病気で死ぬことがわかったので、その場を通りかかった鹿の角に嬰兒を結び付けて離した。その後、女房は死んでしまった。
2014-08-01 22:39:00嬰児を託された鹿は、ある山里に住む爺様婆様の所に行った。爺婆には子供がいなかったので、この児を育てることにし、鹿が連れて来たから鹿娘(或いは鹿姫)と名付けた。鹿娘は成長し、とても美しい娘になった。
2014-08-01 22:41:49爺様婆様が死んだ後、鹿娘は里辺に下り、長者の家で竈の火焚女になった。しかしある日、その家の和子様(わこさま:長者の息子)が鹿娘を見染めてしまい、病気になってしまった。
2014-08-01 22:44:47すると、長者の家にある老婆がやってきた(この老婆は古蛙であったか鹿であったか)。老婆は、三つの試みを見事成し遂げた娘を和子様の花嫁とすれば、病気は治るだろうと言った。
2014-08-01 22:48:06三つの試みとはすなわち 雀の止まった梅の枝を、雀が止まったまま手折る事ができる娘 引綿の上を新しい草履で歩き、草履に綿を引き絡めない娘 水の上を渡ることが出来る娘 の三つであった。
2014-08-01 22:51:24噂を聞き、村々から数多くの娘がやって来たが、誰もその試みを成し遂げられるものはいなかった。そして最後に、竈の火焚女であった鹿娘が、この三つの試みを首尾よく成し遂げた。
2014-08-01 22:53:54◎「鹿姫」は瓶詰妖怪にも登録されているけど、ちょっと妖怪とは違うかもしれない…。まるで灰かぶり姫みたいなお話だったネ。でもこれは「梗概」つまりあらすじだけしか載ってないんだ。だから別の本や資料に、もっと別の形で載ってるかもネ。◎
2014-08-01 22:59:27この話は、中堅青年講習会に行った折、同志から聞いた話である。青年は私(宮本)にその話を真面目に語って下すったが、もう七年も前でうろ覚えの所もある。
2014-08-01 23:07:40昔。その時をはっきり知ることは出来ないが、かなり古い時代のことである。上方から下ってきた軽業師の船が、この瀬戸にかかったのは風の強い夕方であった。しかし急ぐ旅だったので、少々の時化であれこれ言ってはいられなかった。
2014-08-01 23:09:59瀬戸の荒潮に乗りかかった時、瀬戸は嵐と潮流のために波立ち騒いでいた。不慣れな海の上で潮の流れに乗せられた船は、今や転覆しようとしていた。
2014-08-01 23:11:38船上の人々は必死になって救いを求めた。力の限り太鼓を叩き、鉦を鳴らした。けれども夕暮れの海面は暗く、太鼓の音は潮騒に消えて、陸からは何の音沙汰もなかった。彼らはこうして、瀬戸の海に太鼓を叩きながら沈んでいったのである。
2014-08-01 23:13:41これについて、友はこんな意味のことを言った。 事実、今でも夏の夜になると太鼓の音が聞こえる。これを小松の方から聞くと、対岸の大畠の方に聞こえる。また大畠の方で聞くと、小松の方に聞こえる。船で音の出処を探しに行くと、何処からとも無く聞こえてくる。音は至って単調で、高低も何もない。
2014-08-01 23:17:29海にふさわしい怪談めいた話である。私(宮本)は何回となくこの瀬戸を渡った。けれども未だそれを聞く機会を持たぬ。(終わり)
2014-08-01 23:18:59◎全国各地を歩きまわり、フィールドワークを積み重ねた民俗学者・宮本常一先生の報告だネ。民俗学の雑誌での報告だけど、とても読みやすい文章だったネ。◎
2014-08-01 23:22:04さて、ちょっと駆け足だったけど、今夜はこれでオシマイ。次からはもっと頻繁に更新したいから、もうちょっと頑張るよ。それじゃあネ、バイバイ!
2014-08-01 23:24:05