編集者から見た現場の表現萎縮

『マンガ論争』シリーズ担当編集者でもある 奈良原士郎さん(bue1975)の編集現場の萎縮効果の実体験ツイートをまとめました。
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奈良原士郎 @bue1975

http://tinyurl.com/26wbnct 今回も漫画家の方々が声を上げてくれました。ちばてつやさんは発言の中で、現場の萎縮効果を心配しています。せっかくなんで、実際に起こった「萎縮」のお話をしましょう #hijitsuzai

2010-12-01 17:33:02
奈良原士郎 @bue1975

萎縮効果は、出版の世界ではまず経営陣や編集部などの管理サイドから始まります。最初に来るのは「抗議」や「呼び出し」です。 #hijitsuzai

2010-12-01 17:36:13
奈良原士郎 @bue1975

僕も色々な抗議などを受けました。具体的なお話は相手もあることなので避けさせていただきますが、何度も色々なところに呼び出されて「説明」をしました。最初はこちらが悪いかどうかわからないので「謝罪」ではありません。 #hijitsuzai

2010-12-01 17:37:58
奈良原士郎 @bue1975

こうした「説明」は、仮に僕があずかり知らぬところで起こった事や、判断不能なことであったとしても、ある程度地位のある人間が行かなければ話になりません。僕は前の会社では「課長」「編集長」「副編」などの肩書きをもらっていたので、こういう役割は多かった。 #hijitsuzai

2010-12-01 17:40:43
奈良原士郎 @bue1975

そうするとまあ、特に個人相手だと、猛烈な抗議を受けるんですね。「人でなし」「人殺し」「人間の屑」など(笑 こっちが悪ければまあ仕方が無いのですが、少なくとも法的には問題が無い場合も多くありました。中には完全な言いがかりも少なくありませんでした。#hijitsuzai

2010-12-01 17:43:45
奈良原士郎 @bue1975

こう激烈な言葉をぶつけられると、実際傷つきます。「人殺し!」ですよ。そんな言葉をぶつけられて、こっちのどこがどう悪いのかわからない場合は特に大ダメージです。 #hijitsuzai

2010-12-01 17:46:03
奈良原士郎 @bue1975

今回の青少年条例案が通ると、こうした経験を都庁、さらには警察ですることが増える。僕は実際に体験していませんが、長年エロマンガ編集に携わっていた方(塩山さんの本(http://tinyurl.com/2u73cwt)などを読むと解りやすいです。#hijitsuzai

2010-12-01 17:50:15
奈良原士郎 @bue1975

さらにいうと、現場の責任者クラスの時間を著しく奪うわけです。早出・徹夜が当たり前の時間の無い職種・職責者の時間を奪う、イコール会社組織としては大損です。少なからず心に傷を負いますから、これも能率ダウンに大きく寄与します。 #hijitsuzai

2010-12-01 17:52:29
奈良原士郎 @bue1975

そうなったら、もうそれ以降は「抗議を受けないように」「お上に目をつけられないように」は当然考えますよね。やっていられない。#hijitsuzai

2010-12-01 17:54:45
奈良原士郎 @bue1975

もちろん、そのリスクを侵しても「売れる」「価値がある」という判断があれば突っ込みます。少なくともその気持ちはみんなが覚えているはずです。でも、それは滅多に発動しない。よっぽどのネタじゃないと無理です。 #hijitsuzai

2010-12-01 17:55:53
奈良原士郎 @bue1975

これは今自分がやっているような対芸能事務所ネタや、以前やっていたゲームのような対メーカーネタでも同じ事が言えます。抗議を受け「馬鹿野郎やんのかコラ」と言えないシチュエーションはあまりに多い。じっと我慢を数時間。このつらさは中々解ってもらえない。 #hijitsuzai

2010-12-01 17:59:16
奈良原士郎 @bue1975

本当に辛いし時間がもったいない。だから編集者はそうしたネタ・表現を避けます。ここから先は同じ事が起きます。編集者は作家に「馬鹿野郎こんな事書いたらどうなるかわかってるのかボケ」と。編集者にそう言われれば作家も萎縮します。 #hijitsuzai

2010-12-01 18:02:04
奈良原士郎 @bue1975

これにて一度「引っかかった」ネタ・表現は一巻の終わり。今回の青少年条例案が通ると、「引っかかり」の法的に認められる範囲が著しく広がることになるでしょう。 #hijitsuzai

2010-12-01 18:04:15
奈良原士郎 @bue1975

これまでは解釈や表現方法の問題、ということで、話し合い(裁判)で解決する事も可能でした。でも、法的な拘束力を持たれてしまうとそれは相当難しい。こっちの常套手段は「確かにそうかもしれないが、これは”法的に認められた表現だ”」というものがあったんです。#hijitsuzai

2010-12-01 18:09:06
奈良原士郎 @bue1975

このように萎縮効果というものはすでに相当強烈な形であります。編集者などは一応壁となる存在で罵られるのも慣れている方(笑 ですので、まあ一時的な傷ですみますが、繊細な方の多い作家などクリエイターは一発で潰れてしまってもまったくおかしくありません。 #hijitsuzai

2010-12-01 18:12:31
奈良原士郎 @bue1975

「萎縮効果」を馬鹿にする人も多いようです。「気合が入っていない」という意見もあるでしょう。でも、現実は大変なんですよ。#hijitsuzai

2010-12-01 18:16:35
奈良原士郎 @bue1975

だって表現するということは、少なからず誰かを傷つけることなんです。百人を傷つけることで十万人を満足させるとでもいいましょうか。どんな表現にも傷つく人はいる。当然「抗議」はあるんです。 #hijitsuzai

2010-12-01 18:18:00
奈良原士郎 @bue1975

最初からそういうものなんですよ「表現」って。全ての作品・商品がリスクを背負っている。でも多くの人が面白いと思うのなら「表現」するんです。そうすれば多くの人が楽しめるし、我々や作家は生きていける。「表現の自由」におんぶに抱っこなんです。 #hijitsuzai

2010-12-01 18:23:27
奈良原士郎 @bue1975

今回の青少年条例改定案は、その最後の砦を奪うに等しい。少なくとも改定案を見る限りその可能性は確実にある。「萎縮効果」とは、相当危険なものである。僕はそう考えています。今現在「萎縮している」者として。乱文失礼いたしました。 #hijitsuzai

2010-12-01 18:28:19
奈良原士郎 @bue1975

携帯電話を買ってもらえない子供が携帯電話で話しているシーンを見て傷つく。極論ではそんなことだってあるわけです。でも、だからといってそれを規制するのか? そういう議論だと思います。その意味での有害度はエロも違法行為も携帯電話も同価値です RT @pocochica:

2010-12-01 20:27:09
葉月 博規 @aku_HAZ

鬱病が酷かった時期、何やってもダメなキャラに自分を重ねては傷ついた。だが作品を恨んだことはない。規制など余計なお世話。RT@bue1975携帯電話を買ってもらえない子が携帯電話で話しているシーンを見て傷つく。極論ではそんなことだってあるわけです。だからといってそれを規制するのか?

2010-12-01 20:44:02