《記憶》

まー @marble223

→記憶が蘇ってきた。そう。あの秘密を、二度と思い出したくない記憶。忘れようとしても忘れられない。あれはそう、高校2年の夏だった。僕は委員会があり遅く帰るところだった。部活帰りの出口とバッタリ昇降口で会い、一緒に帰る途中だった。学校から駅に向かう途中にある橋を渡ろうとしたら、

まー @marble223

後ろからチャリで田上が声を掛けてきた。「今、帰りか？」見ると後ろに女が居る。あ、この子が田上の彼女か。「どーも」「マミ、こいつらが…」「知ってるよ〜生徒会長と出口くんでしょ。どーも」「今日は委員会が長引いて、今帰りだよ」「俺は部活帰り」「俺らはカラオケ帰り〜〜！なっ」

まー @marble223

「歌い過ぎたよね〜〜何時間だっけ？」「3時間半（笑）」「いいよなぁ〜俺も彼女欲しい〜〜」「おまえ、モテんじゃん」「だよね、でも俺ってみんなのモノだから〜〜」「ウザっ」そんな話をしながら橋を渡り切ろうとしていたら、いきなり橋の下から人が現れたのだ。「うるせーぞ！おまえら」

まー @marble223

「いこーぜ。ほら」男はブツブツ言いながら引き返していった。「あたし、もう帰らなきゃ！あ、タっちゃん！送らなくていいよ！これ借りてくね！」と、マミは田上から自転車を奪い、サッサと帰って行った。「置いてかれてやんの」「うっせーな！」そう言うと、田上はポケットからタバコを出した。

まー @marble223

「おまえらもいる？」「もらっちゃおっかな」「どうぞ」「マイセンかぁ〜〜俺はマルボロとかが好きなんだけど」「中平は？」「…ない」「は？」「吸った事がない」「え？そーなの？」「みんな吸ってんの？」「さぁ、でもみんな一度は吸った事あんじゃね？」「試してみれば？」「いや、僕は…」「そりゃ

まー @marble223

生徒会長だもんな」「生徒会長はマズイよな、そーいや中平、進路とか考えてんの？」「中平は医者だろ。当然」医者じゃなきゃダメなのか？僕は…。僕にも選ぶ権利があってもいいじゃないか。医者の息子だから医者になるのが当然なんて…。僕は田上のタバコを取ってライターで火をつけた。一口吸ってみた

まー @marble223

ゲホッゴホッ「バカ！そんなに吸い込むやつが居るかよ！」「おいっ！誰かこっちに来るぜ！」僕たちは慌ててタバコを橋の下に投げ捨てた。誰か来る。近づいて来たのは梨田だった。「なんだ、カズかよ」「よぉ！今帰り？」しかし、梨田はチラッとこっちを見ただけで自転車を止めもせず走って行ってしま

まー @marble223

った。「なんだ？あいつ」「暗いからわかんなかったかな」「さぁ」「うわっ、こんな時間じゃねーかよ！急いで帰らなきゃ」僕たちがビックリしたのは翌日のニュースを見た時だった。ホームレスが河川敷で焼死体で発見されたニュースが、テレビで流れていた。それは昨夜僕たちが居たあの橋のある付近

まー @marble223

だった。ニュースによるとタバコの不始末が原因か⁉︎と流れていた。僕は顔から血の気が引いた。ま、まさか。僕は学校に行ったが、出口は朝練、田上は朝彼女と学校と登校すべく迎えに行ってるのか、ニュースを知らないのか普段と変わりなかった。あ、梨田。僕はそれとなく梨田に話しかけた。

まー @marble223

「なに？」「おまえさ、昨日の夜。橋んトコでさ…」「橋？俺、橋なんか通ったかなぁ」「あれ？人違いだったかな。あ、いいんだ。ごめん」「朝練がキツくてさ、すでに眠さマックスだよ（笑）」梨田じゃなかったのかな。あれは。そう言えば、あいつが無視するわけないもんな。しかし、僕はタバコの火を

まー @marble223

消した覚えはなく、おそらくあのホームレスは…。僕は誰にも言わなかった。そう。確証はないじゃないか。だって本当にホームレス自身がタバコを吸って、始末を忘れ火事になった可能性だってあるんだから。と、自分に言い聞かせたのだ。忘れよう。この事は。僕はあの日まで忘れていたのだ。

まー @marble223

「おいっ！中平！大丈夫か？」「あ、すまん」今更、なんでこんな物が…。僕は梨田が持ってるデジカメを睨んだ。「この動画なんだけどさ」「その前に、ちょっと聞いていいか？」「ん？」「おまえさ、一体誰なんだ？」梨田はビックリししたが、すぐに表情が変わった。「…やはりな」そう言って梨田は

まー @marble223

僕に動画を見せた。「俺もこいつが誰かを知りたい」そう言って見せられた動画は、教室から梨田を撮ってるらしきモノだった。「誰って、撮影者は先生じゃねぇの？先生のデジカメだろ？」「いや、それはわかる。俺が聞きたいのはこいつだよ」そう言って動画を指差した。指先の向こうに映ってるのは…

まー @marble223

そこには、カメラに向かってくる誰かの姿が映っていた。「俺は知りたいんだよ。中平。真実を。全てを」「…何か飲んでもいいか？」「なら、店を変えようか」「そうだな」僕たちは店を出た。「この店でいいか？なかなか、いい雰囲気の店なんだ。静かだし」そう言って梨田の馴染みの小料理屋に入った

まー @marble223

「まなみさん、適当につまみ作ってくれる？あ、俺はいつものやつ。中平何飲む？」「あ、じゃあ。梅酒ロックを」女将さんがハイハイって言いながら、小鉢をいくつか出してくれた。梨田には焼酎のお湯割りだ。「さっきの続きの話なんだが。中平、お前何か知ってるだろ？」「何をだよ」「この時計だよ」

まー @marble223

梨田が動画を指差した。そこに映ってる奴の腕の腕時計がボヤけているが、見て取れた。「これ、確かお前が自慢してたやつじゃん。高校入学の時に親父に買ってもらった限定もんの腕時計だって」「限定もんっつっても、これだけって数じゃないし、僕だって証拠にはならないぜ」「いや、おまえのだよ。

まー @marble223

だってさ、見てみろよ」時計のバンド部分に小さなロゴが入ってるのが見えた。会長。僕はフッと笑みを漏らした。「梨田。お前なんだな」「ああ、そうだよ」僕は全てを話す時が来たことを知った。「これはお前がイタズラしたんだからな（笑）」「そうだったよな。お前が生徒会長になった時に俺が書いた

まー @marble223

んだったよな（笑）あん時、お前めちゃくちゃ怒ったよな〜」「当たり前だろう！油性マジックで書きやがって消えやしなかったんだぞ」「ごめん、ごめん」「お前さ、学校辞めてから、1度だけ僕に会ったの覚えてるか？」「いや」「やっぱりな」「実は俺、あの事件前後、ちょっと記憶が曖昧なトコがあって

まー @marble223

「僕は高校編入試験を受けて別の高校に行ったんだが、ある日、偶然お前を駅で見かけたから声をかけたんだ…」「うん」「そしたら、お前が俺はカズじゃないよ。カイだって。そう言って行ってしまったんだ」「カイ？」「あぁ。確かにそう言った。でも、顔はお前だったけど雰囲気が違うかったから人違い

まー @marble223

だと思って立ち去ったんだ」「カイ…」「その時、僕はわかったんだ」「何を？」「あの時のお前はカイだったんだなって」「あの時の？」「そう。お前も薄々はわかってたんじゃね？気づかないふりをしていただけなんじゃねぇの？」「何に？」「お前の中には、もう一人の人格がいることを」

まー @marble223

【嫉妬】「何て目をしやがる！ムカつくんだよ！お前のその目が！」そう男が言ってぼくを殴った。ぼくは殴られ過ぎて瞼が晴れ上がり視界が悪くなった目で、じっと男を見上げた。我慢するんだ。ぼくが我慢すればカズは殴られないんだ。「やめて！あなた！子供に手をあげないで！」「うるせー！金出せ！

まー @marble223

財布ごと渡せよ！」「待って！」「うるせーんだよ！」女が殴られている。「何だよ！クソガキ！」そう言って男はぼくに缶ビールを投げ、足で蹴り上げて外に出て行った。「カズ、ごめんね。ごめんね」女は泣きながらぼくの身体にすがった。ぼくは意識を失った。気がつくと、ぼくはテレビを観ながらママと

まー @marble223

ご飯を食べていた。「あの人はしばらく帰って来ないから安心して食べなさい」そう言ってママは笑った。何故かぼくは身体中が痛かった。あの人って言うのはママの彼氏だ。ぼくはあの人が嫌いだ。いつもママを泣かせるんだ。「ママ…明日は幼稚園に行ける？ぼく幼稚園に行きたい」「ダメよ、カズお熱が

まー @marble223

あるから行けないわ」「ぼく元気だよ。はるかちゃんやたくみくんと遊ぶ約束してるんだよ」「お熱が下がったら…」そう言うとママはまた泣き出した。「ねぇ、ママ。もうすぐ運動会だよね。ぼくねかけっこの練習するって、たくみくんと約束したんだよ」「カズくん、運動会はもう終わったのよ」「なんで？

まー @marble223

まだだよ！だってぼくこの前約束したもん！」「カズ！ごめんね！ママが、ママがもっと強かったら…」ママはぼくをギュッてしてくれた。「なんで謝るの？ママ、明日から練習したら、まだ間に合うよ。ぼくね、いっぱい練習して一等になるよ！そしたらママ笑ってくれる？」「カズ…」「ママ笑って」