#fish1

ツイッター連作、その1。
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大谷良太 @nanaseriver2009

(大きな何かが終わった。)そう、彼女は考える。(燃え残ったこれは、黒い芯?)レタスのサラダと、海の描かれた切手。汚れたグラス。書き終えた手紙に封をするように、読み終えた手紙を鍵付きの心に仕舞う。今、窓外は午前の明るさ。古い港町。市庁舎の真っ白な時計台は光を受けて。#fish1

2015-02-14 22:25:22
大谷良太 @nanaseriver2009

キャベツが重要だった。いつも二番手の犬が、その朝は大きく蚤のように跳ねて。必要なだけの滋養と、少し効き過ぎたくらいの塩分。それにいつだって過度だった我々の笑い。――小母さんの顔に浮んでいたのは、端的な不安だ。磊落な髭面の彼の襟首、そこには女物のスカーフが巻かれている。#fish1

2015-02-14 22:27:53
大谷良太 @nanaseriver2009

彼女はいつだって、甲高い笑い声を。白い皿の縁には、ぐんにゃりとした光。(午後になって届いた、これはタール?)対いの席で彼は怒っている、激怒している。やがて発つだろう。バター・ナイフで、我々が塗りたくっている“充溢”。たとえ君たちに、戻って来る積もりが最早ないとしても。#fish1

2015-02-16 04:08:02
大谷良太 @nanaseriver2009

それでも歌っている、黄金色の朝。月曜日にこっそりと潜む怪物。簡単な零落と、そうでもないものと。我々が啜っている冷めたミルク・スープ。彼女が集めている観念的な薪。今、誰かがやって来て、激しくドアを叩いたら。何が飛び出すだろうか。きっと初めて、ここが森じゃないと気付く。#fish1

2015-02-17 16:29:32
大谷良太 @nanaseriver2009

深く降った先に闇がある。危険な匂いのする“手紙”。半ば曇った窓の前に立ち、私は雨垂れを聴く。(まだ眠っている本質。私は容れ物を探している。)木製のトレーの上、ボタンやプラスチック片、細々とした粗相まで並べて。香ばしく明るい昼は、やがてやって来る。ヒーターが唸っている。#fish1

2015-02-19 11:49:47
大谷良太 @nanaseriver2009

大きな影を踏む金曜日。“切ない物語”の手前で、日本語を爆発させる。ませた子供の笑いと、ささやかな“彼女”の意志を埋め立てて行くローラー。晩冬の風の中、私は自転車を漕いでいる。これは何年前の、いや、何十年前の“メッセージ”。いつも遅れてやって来る希望を、網状に組織して。#fish1

2015-02-20 12:12:07
大谷良太 @nanaseriver2009

そして立っている街角。コートの襟を立てて、腕は空虚を抱くように構えて。今別れて来たばかりの眼差し。“自分に足りていないもの”をぼんやりと考える。(ここでにやけたくなるのは何故か。)恐らく、疲労しているのだろう。信号が青に変わる。ぎゅっと踏み締める。(しかし、何を?)#fish1

2015-02-24 11:45:16
大谷良太 @nanaseriver2009

言葉には終わりがないのだ。いつも下る階段を下りながら、そう気が付く。黄砂の降る季節になっても、変わらず古い眩暈の中にいる日々。「号外」と朱筆されたチラシ、尋ね人、尋ね猫。「“淋しさ”ってね、二人でいると倍加するのさ。」渡るべき橋もなく、帰るべき部屋も、既にない午後。#fish1

2015-02-25 11:29:47
大谷良太 @nanaseriver2009

輝く物質。暗がりで、やはり凍えている怪物。帰って行くのだ、それは逃げることでもなく…。草笛を咥えた“子供”が、誤って撃ち殺した。テーブルに用意されていたのは、冷たい食事。十年、二十年が過ぎた後、君は都市で、同じ風を聴くだろう。陥った悪い状態――呻吟している、君の獣。#fish1

2015-02-28 15:59:04
大谷良太 @nanaseriver2009

約束の雨が降る、十三番通り。見慣れない表札。扉口に腰掛けている老人。大きな“子供”を連れて。君が履いていた長靴。それが踏んだ砂利。(全て五年前の光景だ。)後日、何事もなかったように、私はその手紙を封印した。今朝、何故思い出している?ロー、ローラ。私の冬、私だけの少女。#fish1

2015-03-01 11:35:45