素々素数々数エピソード＃１「貴方と私」

しゃら山くさ蔵 @ayamadng2

【ウラゲロスのなんか】

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――7時ジャスト。ほうっておいたら五月蝿く鳴くのだろう、セミ型の目覚まし時計を止める。カーテンの隙間からは、眩しい朝日が漏れ出ている。私はダブルのベッドから起き出て、ぐーっと伸びをする。うん、目覚めは良好。手櫛で寝癖を軽く整えて、部屋を出る。まずは朝ごはんだ。

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ミニサラダ、ベーコンとスクランブルエッグ、トーストは2枚。我が家の朝は洋の食卓だ。食後のコーヒーまできっちりといただいて、両手を合わせてごちそうさま。時計を見れば、7時17分。食器を片して洗面所へ。顔を洗って歯を磨いて、部屋に戻る。

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着ていたパジャマは、ベッドの上に畳まれている。今の私は制服姿だ。希望崎学園に入学してから、もう2年が経とうとしている。最初は「着られている」と苦笑されたこの制服も、もうすっかり馴染んでいる……はずだ。高校生活にも慣れて、ほんのりと、軽く、お化粧もする。

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髪を2つの三つ編みにして、スカートは、ちょっと迷って3回折る。いつもは2回なんだけど、今日はそんな気分なんだ。……さて。壁掛け時計曰く、7時47分。家を出なければいけない時間まで、ちょっとある。身支度は終えた。スクールバッグの中も、昨日のうちに準備OK。よって、最後の“儀式”だ。

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姿見の前に立ち、カバーの布を上げる。鏡面に私の全身が映る。そして、頭にそっと手を乗せる。167cm。女子としては、ちょっと高いかな。けれど、53kg。結構、頑張ってるつもりだ。帰り道で私を誘惑する某31のアイス屋に耐え続けた成果だ。……それもこれも、全ては“貴方”の為。

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手を胸元に移す。79cm。あんまり大きくないけれど。腰、53cm。こっちは努力の甲斐もあって、中々引き締まっている。手を下にスライドして、83cm。こちらも、大きすぎずでいい感じなんじゃないかな、とやや自賛。……うん。今日の私も、しっかりと私だ。“貴方”の為の、2人だけの為の私。

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仕上げだ。恐る恐る――私の顔の横、控えめに作るピースサイン。胸がどきどきと高鳴る。その手を反転、口元に寄せて、薬指を足してスリーピース。ちょっと決めすぎかも。頬が熱くなるのが分かる。そして指を開いて、小さく手を振りながら、ぱあっと全力の笑顔っ！

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……よしっ！今日の私も絶好調。“貴方”に相応しい私かの確認は、恥ずかしくて、くすぐったくて、むずむずする三拍子。高鳴った鼓動も、まだ収まってない。……でも、嫌じゃない。この甘やかな感覚に、身を委ねたいとすら思う。いつか他のみんなも、“貴方”を想う幸せに、気付いてくれたらいいな。

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「――やばっ」視界の端、壁掛け時計が、もう時間ギリギリだって教えてくれる。いけないいけない。つい没入してしまった。掛け布を戻し、バッグを掴んで、電気を消して。部屋を出る寸前、ちらっと振り返って。「……いってきます」ニコッと微笑み、急いで家を出る。7時59分。今日が始まる。

しゃら山くさ蔵 @ayamadng2

【ウラゲロスに続く】