デッド・バレット・アレステッド・ブッダ #1
ジェイクはサイバネ嗅覚の閾値を上げながら、この窮地を切り抜け、かつカネを得る手を考え続ける。ブッダを逮捕したという男は、モール中心部のUNIX制御室に陣取り、狂った店内放送を続けている。後方には反ブッダ軍。正面駐車場にはNSPD。前門のタイガー、後門のバッファローめいた状況。22
2015-03-23 23:24:26「スッゾコラー!」先頭を進むアウトローが不意にヤクザスラングで威嚇した。マグロの頭が廃棄されたコンテナの横に、人影を見たからだ。だがコケシマート作業服を着たその男は、廃棄されたマグロの頭にむしゃぶりつき続ける。シャグッ!シャグッ!シャグッ!「アッコラー!」怒号も意に介さない。23
2015-03-23 23:31:26「店内を案内しろ!3億円が持ち去られちまうだろうが!」アウトローが銃口を突きつけ接近。ハッカーを失った今、彼らに残された選択肢は限られているのだ。だが「貴方、待て」ジェイクが何かに気づく。「心音スキャンが…!」次の瞬間、先頭アウトローは見た。コケシマート作業員の胸の大穴を! 24
2015-03-23 23:39:11作業服は血塗れ。死体じみたその顔は、目と口から奇怪な炎めいた光を発している!まるでズンビーだ!「ARRRRRGH!」マグロ生首を放り捨て、アウトローに襲いかかる!「アイエエエエエ!」BLAMBLAMBLAM!一斉射撃!だが死なぬ!「庶子!」「アバーッ!」ヘッドショット射殺! 25
2015-03-23 23:44:52「驚かせやがって!」アウトローが作業員の死体を蹴る。「このモールで何が起こってやがる」ススムが作業員の死体から冷静にID帽子を剥ぎ取り、被る。ラッキー・ジェイクは脱出の手を思案し、冷や汗を垂らしながらZBR煙草を吹かした。ピガガガー!直後、作業員のIRCトランシーバが鳴る。 26
2015-03-23 23:57:53異様なアトモスフィアが場を圧する。3人のアウトローは剣呑な目つきで互いの顔を見合わせ、ススムがトランシーバを握った。「ハイ、モシモシ、モシモシ……!」ススムの眉間に大粒の汗が滲む。「ハイ、ハイ……何だって……!」全員がごくりと唾を呑む。「コメ・エリア、コメ・エリアだな……」 27
2015-03-24 00:04:28「一体どうなってやがる、身代金3億円はどうなった」アウトローがススムに問う。「身代金3億円はすでに運びこまれた……」ススムの顔はトーフのように蒼白していた。「このズンビーめいた作業員は?」ジェイクが問う。「わからん」ススムはかぶりを振る。「だがマート中に山ほどいるらしい」 28
2015-03-24 00:11:19IRCトランシーバーが告げた内容は、衝撃的なものだった。通信の相手は、ラッキー・ジェイクらと同様、身代金3億円を狙って潜入したハック&スラッシュの一団であった。……先客がいたのだ。だが彼らもまた正体不明のゾンビーに襲撃され、コメ・エリアに追いつめられたという。 29
2015-03-24 00:17:48果たして3億円はいまどこに。すでに犯人の手に渡ったのか。ジャンボジェットは着陸できるのか。謎が謎を呼ぶ。アウトローたちのニューロンでは処理し切れない、巨大な陰謀の影……!その中で導き出される明確なアンサー。ゾンビーは頭を撃てば死ぬ。弾丸で奴らを殺し、3億円を奪い、逃げねば。 30
2015-03-24 00:25:22ガガガー!IRCトランシーバーの電池が切れる。断末魔めいたノイズ音声が届く。「……いいか、気をつけろ……ニン……ジ……」「おい、待て、今なんて言った!」ススムが叫んだ直後、スモトリ作業員ゾンビーが2人掛かりでロック扉を破り、2ダース近い餓えた作業員ゾンビが雪崩れこんで来た。 31
2015-03-24 00:32:17「クソッタレめ!」アウトローの1人が、温存していたまっさらの重金属弾ピストルをススムに放り渡した。次の瞬間、BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!3人のアウトローは一斉に銃弾をバラ撒き、エレベータリフトへ逃げる! 32
2015-03-24 00:35:39「アイエエエエ!」コケシマート作業員は失禁しながら店内階段を転げ落ち、「フルツ」と書かれた製品陳列棚の前で止まった。 その目は恐怖に見開かれている。ノイズ混じりの店内放送は、立てこもり犯の狂った主張を繰り返す。NSPDは正面駐車場を滑走路にするという必死の呼びかけを続ける。 34
2015-03-24 00:46:20がらんとしたマート店内。そこかしこが血塗れ。通常営業時と同じライトアップ光量が、事態の異様さを浮き彫りにする。すぐ横には頭をショットガンで破壊されたゾンビー作業員の死体が転がる。「アイエエエエエ!」だがこの作業員を真に恐れさせていたのは、威圧的に歩み寄るひとりの男であった。 35
2015-03-24 00:50:48「アイエエエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!?貴方は、3億円を運び込んだ政府のエージェントだと思ってたのに……!ナンデ!?」哀れな作業員は叫んだ。そう、目の前に立つ男の装束……明らかにニンジャのそれだ!「アノヨへの手みやげに教えてやろう。立て」ニンジャは嘲笑うように言った。 36
2015-03-24 00:56:40「ハイ」作業員は立ち上がる。「私の名前はサクリファイサーです。もう生き残りもほとんどいないので、貴方のことは念入りに殺します」ニンジャが高圧的にアイサツした。「ナンデ!?」「楽しみのためです」そして「イイイヤアアアーッ!」両腕を複雑に動かし、不気味なカラテシャウトを発する! 37
2015-03-24 01:02:27「イヤーッ!」ニンジャのチョップ突きが胸を貫通し、作業員の心臓を引き抜く!「アバーッ!?」「サクリファイス・ケン!イヤーッ!」それを作業員の口に押し込む!心臓が緑色に燃え上がり、一瞬にして哀れな犠牲者の頭部を内側から焼き尽くした!「アバーッ!」そして新たなゾンビーが生まれた。38
2015-03-24 01:09:22ナムアミダブツ!何たる無慈悲かつ恐るべきジツか!「アバーッ……」新たなゾンビーへと変わった作業員は、肉を求めてヨタヨタと歩き出した。頭の内側から不気味な緑色の光を発しながら。「ウワーッハッハッハハハハハハハハハ!」サクリファイサーはヤギ型の不気味なメンポから哄笑を漏らした。 39
2015-03-24 01:16:49SMAAAAASH!次の瞬間、前方のロック扉が体当たりによって強引に押し開けられ、ゾンビーの大群に追われる血みどろの重武装アウトロー3人組が、この食品売場へと転がりこんできた。そしてホールの突き当たりにいるニンジャと目が合った。「ヤギ前後」ラッキー・ジェイクは死を覚悟した。 40
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