デス・オブ・アシカゲ -デスドレインエディション-
- kaeru_in_a_well
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アッパーガイオン、オミヤゲ・ストリート。黒いボロを着た痩身の男が人混みを掻き分け、進む。その口元には拘束具めいたマスク。一目でアッパー市民や観光客ではないとわかる、異様ななりだ。「浮浪者な?」「ケビーシを呼びましょう」「汚いです」周囲の人間が囁く。
2015-03-31 23:14:04人々はこの異様なアトモスフィアを発する浮浪者めいた男から距離をとる。モーセの海割り、または、チョップで紅海を割ったというニンジャ伝説を思わせる光景だ。しかし、そのような光景を意に介さず、反対側から向かってくる一団があった!
2015-03-31 23:14:35ブンズーブンズーブンズーブンズー!ブンズーブンズーブンズズブンズー!アッアッアッアアッ、アシカゲ・タクジ!ブンズーブンズーブンズーブンズー……現れたのはサイバーコンポを抱えた5人組のテクノサムライ!カチグミの次男である彼らは特にやる事も無く、日々こうして踊っているのだ!
2015-03-31 23:14:50全員、どぎつい色のサムライドレスに身を包み、片方の肩または両方の肩をはだけ、鍛え上げられた筋肉や、最新サイバネパーツで置換された腕などを見せびらかしている。彼らのテクノダンスは激しく、クローンヤクザ並の統一感を誇る。実際ダンスができて金も持っているので若い婦女子は入れ食いだ。
2015-03-31 23:15:50ブンズーブンズーブンズーブンズー!ブンズーブンズーブンズズブンズー!アッアッアッアアッ、アシカゲ・タクジ!ブンズーブンズーブンズーブンズー!アシカゲ・タクジ!アシカゲ・タクジ!アッアッアッアアッ、アシカゲ・タクージ!……5人は前進しながらダンスをする。だがボロ布浮浪者は退かない。
2015-03-31 23:16:01先頭のビッグチョンマゲが、無線IRCで停止合図を送った。後列2人が背負っていたサイバーコンポも、同時に止まる。彼の血筋はエド戦争に勝利したアシカゲ家のサムライであり、今はメガコーポの重役だ。アシカゲ・タクジは浮浪者に問う「……お前、誰よ?どこの家柄よ?エド戦争、戦ったワケ?」
2015-03-31 23:16:12ナムアミダブツ!尊大な態度!だがアッパーガイオンにおいてこのような発言はチャメシ・インシデントである。「俺のカラテ、喰らいたいの?」とアシカゲ。「ヘヘッ、面白え、やってみろよ」男は拘束具めいた格子マスク越しに、不敵な笑みを浮かべた。
2015-03-31 23:16:31「てめえええーッ!タクジ=サンを馬鹿にしやがったァーッ!?」後ろに控えていたテクノサムライの一人が、怒りを露にしながら歩み出る。だがアシカゲは彼をわざとらしく制止し、周囲の見物人たちを意識しながら、大見得を切った。ジュー・ジツを構えるアシカゲ!「イヤーッ!」そしてケリ・キック!
2015-03-31 23:16:52「グワーッ!?」これは何事か?確かにケリ・キックは命中した。だが弾き返されたのはアシカゲ・タクジ!呆然として地に転がるサムライ!この薄汚い浮浪者は、指ひとつ動かしてはいない。ボロ布の下には、その痩身に見合わぬ常人離れした筋肉が隠されており、その力だけで弾いたとしか思えなかった。
2015-03-31 23:17:13「ダッセ!」浮浪者は手を叩いて笑う。アシカゲは仲間の手を振り払いながら、相手の顔を見上げた。男と目が合った。そこには得体の知れぬ暗黒と喜色があった。アシカゲは失禁した。「何だ、てめえ……」「もう1回やってみろよ!今度は倒せるかもしれねえぜ!」男はニタニタ笑いながらアシカゲを見る。
2015-03-31 23:17:46アシカゲ・タクジは立ち上がり、再びジュー・ジツを構える。「今のはマグレですよ!」「タクジ=サン!やっちまってください!」テクノサムライ達が声援を送る。「イ、イヤーッ!」ストレートパンチ!そのカラテ段位は十段はあろう!カチグミ・トレーニングの賜物だ!「グワーッ!?」
2015-03-31 23:18:12しかし、またしてもアシカゲの攻撃は無効!鉄板めいた胸筋に阻まれたのだ!その上、浮浪者の胸元に直撃した拳には、謎めいたタール状の液体がべったりと付いている。「残念だったなあ、カッコつけられなくて」浮浪者が凶暴な笑みを浮かべたその瞬間!「グワーッ!?」アシカゲの拳が潰れた!
2015-03-31 23:18:51「「「「エッ」」」」唖然とする4人のテクノサムライの目の前で、アシカゲは苦痛にのたうつ。「グワーッ!グワーッ!手グワーッ!」それを無視し、男はオジギを繰り出した。「ドーモ、アッパーの皆さん。デスドレインです」デスドレインがオジギを終えた瞬間、タール状液体がアシカゲを飲み込んだ。
2015-03-31 23:19:14「イヤーッ!」アシカゲを飲み込んだタール状液体は一瞬で収縮!「アバーッ!」アシカゲを圧殺した!「アイエエエエエエ!」観光客が悲鳴をあげる!何が起こったかはわからない。とにかく人が死んだ!得体の知れぬ存在から逃げるために、人々は走り出す!テクノサムライとて例外ではない!
2015-03-31 23:19:45「アイエエエエエエ!」「アイエエエーエエー!」「アイエエエ!」「アイエーエーエー!」アシカゲ・タクジの取り巻きであった4人のテクノサムライ、ヒロシ、ポマ、シマズ、モダはそれぞれ東西南北に逃げた!自分達を待つブルタルな運命を知らずに……。
2015-03-31 23:19:55