デッド・バレット・アレステッド・ブッダ #4
「救えた。全部救った。でも死んじゃうの?」ブッダは声を震わせサムズアップした。「ああ……良かった。俺が生きて……殺して……どれも無駄じゃなかったんだな」彼は笑った。「ありがとう」彼女は鼻水を啜りながら、最後まで忠実なるブッダの剣として戦った勇敢な戦士の肩を抱き、別れを告げた。46
2015-04-19 18:34:24「ジェイク=サン……」セキトリは呼びかけた。「俺は最初、あんたのこと……嫌いだったよ。いや、何の感情も抱いてなかったよ。……自分とは違う、絶対に解り合えない奴らのひとりだとおもってた。でも……全部変わったんだ。急に。0が1になるみたいに……」 47
2015-04-19 18:38:52スモトリは不法滞在ガイジンに好意を伝えるために、笑った。「あんたがいて、俺の魂は救われたんだ…これからニルヴァーナへ行くよ」「そりゃ良かった。でも悪いな、俺は」ジェイクは何度も頷きながら言った。「こういうのはどうも、苦手でね。そうだな、俺はきっと、ニルヴァーナにゃ入れないよ」48
2015-04-19 18:43:20「ゴボーッ!」セキトリは吐血した。「……ああ、ジェイク=サン、あんたに会えて良かった。……きっとそれにも、意味があったんだ。あんたの魂にも救いあれ……あんたはまだ、このマッポーの荒野をさまよい続けるんだな。でも大丈夫だ、あんたは正しい判断をしたんだ。いつだって、また戻れるよ」49
2015-04-19 18:46:18「死んじゃった」コナミがぽつりと言った。周囲には無数の死体が転がっていた。舞い散った2億円の万札は、血に塗れ、もはや拾い集めるすべもなかった。「ジェイク、じゃあ、逃げようか。ブッダの仕事は終わり。まだ1億円あるでしょ?」「そうだな」ジェイクは思案した。結局は八方塞がりだった。51
2015-04-19 18:52:54そのとき、駐車場側に面した巨大なガラス窓の向こうから、ゴゴウという轟音が聞こえた。何か巨大な物体が降下し、火花を散らしながら、着陸しようとしていた。脱出用のジャンボジェット機が到着したのだ。犯人と人質、たった2人を運ぶためだけに調達された、白く巨大な鋼鉄のエア・プレイン。 52
2015-04-19 18:55:16打ち捨てられた廃工場で、行動の意味も解らず稼動を続ける末端マシナリめいて、それは到着した。ジェイクは精神の無重力感を味わった、自分がこの世界に瞬く1個の01の電子スパークであるかのような感覚を味わった。己、隣接する座標、そして全方向に無限に広がり回転する巨大なマトリクス。 53
2015-04-19 18:59:42「なんだ、俺のラッキー・ナンバーだよ」ジェイクは赤く染まったコートを脱ぎながら笑う。機体にペイントされた文字列はオキナワ航空の非番OKINAWA-777便。彼の肩にも、ネオ・ロポンギのカジノで打った極彩色パチンコの赤く魅惑的なLEDデジ数列が、幸運の象徴として刻まれていた。 54
2015-04-19 19:05:36「どうすンの?」「まだ俺のブッダでいてくれ」ジェイクが言った。彼はセキトリの背中に吊るされた犯人の死体から、特徴的なフルフェイス・ヘルムを奪って被り、白い防刃テクノコートも奪った。ジェイクは立てこもり犯になった。「これも持っててくれ」そしてブッダの懐に、銃を一挺捩じ込んだ。 55
2015-04-19 19:09:12「オキナワ?」「そうだよ」ジェイクが笑った。八方塞がりのアウトローは1億を持って駐車場へ歩いた。『動きがありましたドスエ。ついに犯人は人質とジェットへ……オキナワで解放の見込み』上空をTVヘリが旋回する。犯人は手に直結銃。麻袋を被ったブッダも、ツナギの中に拳銃を忍ばせていた。56
2015-04-19 19:16:05ゴアまみれのモールでは、まだオスモウ・ウェスタンが鳴り響いている。犯人と人質を乗せたジャンボジェットは、静かに離陸を開始し、ネオサイタマから飛び立った。 57
2015-04-19 19:23:40(親愛なる読者の皆さんへ:我々は57番の投稿ミス可能性を示唆するツイートに驚き、即座にタイプ担当者に連絡を取ったところ、たぶんタイプが速すぎサーバ側でエラーが生じたとの事でした。これは重篤なツイート成功確認ミスであり、深くおわびします。担当者はケジメしたので、ごあんしんください)
2015-04-19 19:32:08