@bci_さんの見た中国に於ける逆境と孤独が鍛える「文化」についてのまとめ

「逆境と孤独」は学歴と関係なしに詩才や歌才を形作るっていうお話。 誰にも言えない何かを貯め込んでいる人は、そういう自分を慰めるために何かを書いたり吐き出したりする必要があり、そういう必然を持っている(持て余している)人の能力資質というのは必然的に研ぎ澄まされていくものなのかな、って。 逆に、「孤独でもなく逆境でもなく貯め込んでる言いたい事があるわけでもない人」が書けないのは当たり前だよなあ、と妙に会心したなど。
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カラオケの小姐の詩

黒色中国 @bci_

昔、よく使っていた中国のカラオケ屋があるんですけど、あちらはキャバクラみたいなもので、客1人に女性が必ず1人つきます。私はただカラオケがやりたかっただけなので、女性は要らないんだけど、まぁ取り敢えずということで1人指名しないとダメなのですが、これが面倒で… @FromMargin

2015-05-04 22:16:32
黒色中国 @bci_

どうせ、横に座ってるだけなので、あんまり面倒ではな女子を毎回選んでいたんですけど、ある女子は私の横で、神妙な顔をしながら、ずっとケータイばっかりいじってる。こういうのはどの女子でも同じことなんですけど。まぁ、手間がかからないから、それでいいと思ってました @FromMargin

2015-05-04 22:19:22
黒色中国 @bci_

でも、その女子のケータイを操作する表情がどうも神妙すぎて気になる。どうせ彼氏にメール打ってるんだろうけど、集中力がスゴイので、ある日どうしても気になって「いつもケータイで何をしてるの?」と聞いてみたら、「…詩を書いています」とカラオケ小姐が答えられましたw @FromMargin

2015-05-04 22:21:28
黒色中国 @bci_

このカラオケ小姐は確か20代なかばぐらいだったと記憶しています。たぶん中学校しか出てない。あまりインテリとか本を読んでいるとか、そういう雰囲気でもない。ちょっと普通より美人なだけの、平凡な田舎娘なんですけど、ケータイで真面目に詩を書いているわけです。 @FromMargin

2015-05-04 22:22:59
黒色中国 @bci_

「詩を書いてる」って聞いた瞬間、私も友人もみんな歌うのをやめて、「どんな詩を書いてるの?」と聞いてみました。そしたら、詠み上げてくれて…でも意味がわからない。それでケータイの画面を見せてくれたら、両親と家族を想う、望郷の詩でした。で、これが1つだけじゃない @FromMargin

2015-05-04 22:25:17
黒色中国 @bci_

故郷を離れてから、もう5年ぐらいだったか、望郷の詩をずっと書き続けて、でも紙とかに書いていると面倒だから、ケータイのメールで書くようにした、と。別に誰にも送らないけど、メモ替わりに。それで他のも詠み上げてくれたけど、これがなかなかカッコイイのです。 @FromMargin

2015-05-04 22:27:18
黒色中国 @bci_

一つ詠み上げる度に、その意味とか解釈とか背景を教えてくれる。みんなでカラオケそっちのけで、背すじ伸ばして拝聴しましたw。小姐が言うには、日々の仕事が辛れとかで、望郷の念が高まった時は、その心を詩にしておくのだ、と。この小姐には「負けた」、と思いましたw @FromMargin

2015-05-04 22:29:53
黒色中国 @bci_

でも、そういうカラオケ小姐は珍しくなくて、随筆書いているとか、実は文学女子であるとか。みんな中卒、高卒なんですけど、中国人って学歴とか職業に関係なく、そうやって文学に自然と親しんだり、詩や随筆を書いたりするんだなぁ…と。中国人スゴイな、と感心しました。 @FromMargin

2015-05-04 22:32:48

銭ゲバのお姉さんの歌

黒色中国 @bci_

中国人の友人の姉は、もう60過ぎているんですけど、普通のどうしようもないオバサンで、小太りで、いつもメシのことか金のことで大騒ぎしているちょっと下品な感じで、如何にも中国人、っていう人で、あんまり好きじゃなかったけれど、なぜか会う機会が多かったのでした @FromMargin

2015-05-04 22:37:20
黒色中国 @bci_

友人と会うと、この姉もいるとか、どうせだからメシ食ってけ、みたいな。テレビはいつも反日の戦争ドラマで、それをこの友人の姉と一緒にゲラゲラ笑いながら見て、ご飯食べて、酒のんで、友人の姉はいつも日本の不動産とか投資の話ばっかり聞いてくる、そういう感じの人でした @FromMargin

2015-05-04 22:39:48
黒色中国 @bci_

この姉さんと一緒に食事をしている時に、私の趣味の釣りの話になり、そういえば姉さんは趣味はないのか、と聞くと、「歌が趣味だ」と。カラオケが好きなんだろう…と思っていたら、そうではないと。ちょっと歌ってくれたけど、本物の歌手みたいに上手くて、驚きました @FromMargin

2015-05-04 22:41:17
黒色中国 @bci_

「あんたは、中国のスーザン・ボイルか!」とツッコミたくなるぐらいw。でも、どうしてそんなに上手いのか、と聞いてみたら、この人は若い時に文革で遠い田舎に下放されていた。10年ぐらい、上海に戻ってこれなかった。趣味なんか何もできない…そういう青春を過ごしていた @FromMargin

2015-05-04 22:43:55
黒色中国 @bci_

何にもない田舎で、文革中だから大した私物もない。欲しくても買えない。変な趣味とかやってたら批判させられる。そこで、気を紛らわすために、歌い始めた。文革時代は、革命歌だったら歌っても良かったので。歌詞の内容は好きじゃなかったけど、とにかく声を出したかった @FromMargin

2015-05-04 22:45:51
黒色中国 @bci_

上海に戻ってから、国営の工場で働き始めて、そこで歌の活動があったとか。戻ってからは革命歌じゃなくて、民謡を歌い始めた。最近の新しい歌はカラオケ用で歌いやすいけどあんなのは歌じゃないんだ、と。中国の伝統的な民謡は、高度な歌唱方法が必要なんだ、と言ってました @FromMargin

2015-05-04 22:48:34
黒色中国 @bci_

銭ゲバのお姉さんにそういう過去があって、それで奇跡のような美声を持っているとは知らなかった。それは天性の才能というよりも、文革時代に孤独と絶望に悩み、失われた青春を取り戻そうとする情熱が、彼女の歌声を鍛えたのではないか…彼女の歌を聞いて、そう感じました。 @FromMargin

2015-05-04 22:53:33
黒色中国 @bci_

この人は上海の人だったので、文革がなかったら、上海の繁栄の中で、楽しい青春時代を過ごしたはずなのですね。でも、10代から20代までの10年間、ずっと何もない田舎で農作業ばっかりやらされていた。そういう逆境と孤独が鍛える「文化」が中国にはあるのだなぁ、と。 @FromMargin

2015-05-04 22:56:15
黒色中国 @bci_

杜甫も、色々人生上手く行かなくて詩を書く。私の好きな廖亦武は天安門事件で迫害を受けて『中国低層訪談録』を書いた。逆境や不幸が文化を育てるものならば、中国社会には非常に豊かな「文化的土壌」があるw。嫌味でも中国アゲでもなく、中国は「文化大国」だと思いますw @FromMargin

2015-05-04 23:01:27
加藤AZUKI @azukiglg

黒色中国さんの一連の話を耳を欹てて聞いててふと思ったこと。 誰かに求められてとか、成果を得たくてとかでなく、「当人の中で必要だから、当人が充足を得られればそれで満足だから」という動機でそれをしてる人は、大抵、研ぎ澄まされすぎてうまくなってるんだよなあ。

2015-05-04 22:44:42
転倒小心 @tentousho

@azukiglg あ、ちょうど似たこと考えてたよ。小説家になろう出身の人の中に時折それでいい感じに仕上がってる人がいてさ

2015-05-04 22:46:03
加藤AZUKI @azukiglg

その意味では、「観客やクライアントに媚びることを考えないクリエイター」の中には稀に怪物がいる。 ボカロ黎明期に発掘された人達なんかはそうだったかもな。

2015-05-04 22:45:55