茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1512回「ジョン・ナッシュ氏と、映画ビューティフル・マインド」

脳科学者・茂木健一郎さんの5月25日の連続ツイート。 本日は、感想。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1512回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想。

2015-05-25 06:06:20
茂木健一郎 @kenichiromogi

数学者のジョン・ナッシュ氏とその妻がタクシーの交通事故で亡くなったというニュースに接し、たいへん驚くとともに、悲しい気持ちになった。おふたりのご冥福を、心からお祈りもうしあげます。

2015-05-25 06:07:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

ナッシュ氏の生涯を描いた映画『ビューティフル・マインド』で、忘れられないシーンがある。精神のバランスを崩したナッシュ氏は、さまざまな幻覚を見る。その中に、繰り返し現れる小さな女の子がいる。

2015-05-25 06:08:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

幻覚をありありと感じてしまう心の状態には、統合失調症などさまざまある。そのような場合、主観的には本当にあることと幻覚が区別つかなくなる。その結果、どうなるか。現実と幻覚の区別がない世界に適応し、そこから新たな解釈を立ち上げるしかない。

2015-05-25 06:09:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

「正常」、あるいは「典型的」な心の状態では、現実と幻覚は区別がつく。しかし、原理的な視点から見れば、「現実」は実は脳がつくりだした幻覚である。現実という幻覚が生存に好都合なように絵作り、味付けされているから私たちは生きているのであって、その境界が揺らぐと、たいへんだ。

2015-05-25 06:11:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

原理的には「現実」でさえ「幻覚」である世界の中で、心のバランスを保つための手がかりがある。映画『ビューティフル・マインド』では、ナッシュ氏が、自分が年をとるにもかかわらず、繰り返し見る女の子がずっと同じ年令であることに気づいて、それを手がかりに迷宮から逃れるという設定だった。

2015-05-25 06:12:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

「正気」と「狂気」の境は、往々にして相対的なもの。『ビューティフル・マインド』は、繰り返し自分の前に現れる女の子が永遠に同じ年令であることを手がかりに狂気の沼から正気へと抜け出るかすかな紐を描いたことで、心に残る映画となった。誰でも、紐を必要としている。紐は多くの場合論理である。

2015-05-25 06:14:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1512回「ジョン・ナッシュ氏と、映画ビューティフル・マインド」をテーマに、6つのツイートをお届けしました。

2015-05-25 06:15:37