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へっぽこ神話学徒が「マッドマックス 怒りのデス・ロード」をちょっとだけ考察してみました。最初のツイートが途中から始まってるけど許してね。
まず前提として、他の方の考察だが、「イモータン」は「イモータル（不死）」と「ウォータン（ヴォーダン）」をかけています。
また作中では、ウォー・ボーイズたちが死後「ヴァルハラ」に赴くと信じています。字幕では「英雄の館」とされていました。北欧神話で死後に英雄の魂が赴く館であり、ラグナロクという最終戦争において彼らは神々とともに戦うとされています。
というのを目にしたので、本作を観たわけです。その後自分なりに考察を施した結果が今回の内容です。
内容は主に二つに分かれて、北欧神話との対応と、神話学理論からの分析です。
腐れマーズ三等星
@p_pakira
あとジョーがヴォーダンなら、砦の地下水源はミーミルの泉で、フュリオサの右目はヴォーダンがミーミルの泉の番人に支払った対価だな
2015-07-14 12:12:23ヴォーダンはオーディンのゲルマン語名です。ここだけヴォーダンと書いてるのは、「イモータン」が「イモータル（不死）」と「ウォータン（ヴォーダン）」をかけてるからです。
＞ミーミルの泉は、北欧神話に登場する泉。ユグドラシルの3本に分かれた根のうち、霜の巨人の国へ伸びた根の根元にあり、知恵と知識が隠されているとされており、賢い巨人ミーミルが所有している。
＞知識を求めて訪ねてきたオーディンは、泉の水を一口飲みたいとミーミルに頼み、代価に片方の眼球を求められ、これに応じたため以来片目となった。（Wikipedia「ミーミルの泉」より）
腐れマーズ三等星
@p_pakira
ジョーの支配力に翳りが出始めているのが冒頭の水を降らせるシーンの群衆から読み取れると思うが、それはジョーの子が奇形であり、遺伝子が汚染されている疑いがあったことに（少なくとも宗教的思考のレベルで）ある。だからこそあれほど子産み女と「健康な」(perfect)赤子に執心だった。
2015-07-14 12:18:28
腐れマーズ三等星
@p_pakira
ジョー自身も呼吸器に異常があった。「欠けた」王の元では国が衰える、という信仰は世界中に見られる。そしてフレイザーによれば、王が衰弱・病により自然死すれば国（の霊）も同時に死ぬので、その前に新たな健康な王が前王を殺さねばならない。これが「王殺し」の因習。
2015-07-14 12:22:38パンフレットを確認したらジョーは呼吸器に異常があったわけではなく、ただ単に汚染した空気を吸うのを嫌っていたとのこと。ただし彼の胴体を見る限り、その体が健康体とは言い難いことに変わりはないと思われます。
腐れマーズ三等星
@p_pakira
そして、フレイザーが最初に目をつけたネミの森の祭司王の代替わりでは、新たな王は「逃げ出した奴隷」で、王の守る「金枝」を盗み取らなくてはならない。フュリオサはまさに「逃げ出した奴隷であり」、「金枝」にあたるのは子産み女たちだろう。
2015-07-14 12:24:47Ｊ・Ｇ・フレイザー『金枝編』（1890年）参照のこと。
以下に内容をかいつまんで書きますが、面倒ならば飛ばしてください。
イタリアのネミという地の森には祭司と王を兼ねる存在がおり、「金枝」（きんし）を守っている。逃げ出した奴隷が、その祭司王の守る「金枝」を折り、祭祀王を殺すことができれば、新たに祭祀王となれる、という因習があり、類似の「王殺し」の慣習が世界中に存在した。
フレイザーは、王は「国の霊魂」と深く関係するものであり、王が衰えると霊魂を介して国もまた衰える。そのため王が自然死すると国の霊魂もまた死んでしまうため、その前に新たに若く健康な王が、前王を殺してしまわなければならず、そのために先述したような王殺しの儀礼が存在する、と論じた。
腐れマーズ三等星
@p_pakira
ところで北欧神話では知と魔術の長オーディンは片目を、戦士の長チュールは片手を失っており、類似の神はインド・ヨーロッパ各民族にあるんだが、フュリオサはまさに右目と左手を失っており、これも見事に対応する。
2015-07-14 12:28:36
腐れマーズ三等星
@p_pakira
あ、あとフュリオサは最初左手がなく大隊長だったわけで、それはチュールと同じ戦士の長だ。しかし子産み女たちを奪い、右目を失ったことでオーディンにもなることができた。
2015-07-14 12:35:41チュール(Tyr)はここに書かれているように北欧の戦士神でありながら、その片手をフェンリルという大狼に食われて失っています。
ユグドラシルは良く知られた「世界樹」で、ラグナロクという最終戦争において、その根をニーズヘグという蛇がかじり、世界樹を倒してしまう。
以上のように、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が北欧神話をかなり忠実に踏襲して作品に組み入れています。
何かあったらコメントとかリプライとかでご指摘いただければ幸いです。
内容に誤りなどがありましたら申し訳ありません。
9/6追記
「『メイキング・オブ・マッドマックス』読んだ！」より
https://www.google.co.jp/webhp?sourceid=chrome-instant&ion=1&espv=2&ie=UTF-8#q=ギディ 教育係 マッドマックス
a crawler
@a_chromed
さっきのMy nane is Max.の話も良かったし、この人のマッドマックスFRの感想おもしろいなあ。ミス・ギディへのちょっとした考察 『メイキング・オブ・マッドマックス』読んだ！ - 沼の見える街 numagasa.hatenablog.com/entry/2015/08/…
2015-08-31 21:52:27
a crawler
@a_chromed
＞『彼女はその場で即座に殺されてもおかしくなかったはず。でも、とりあえずジョーは彼女を生かしておいた。そこがなんだか面白いんですよね。ジョーのような悪人が、これほど手ひどく裏切られてもなお、「知」を司る人間を簡単には殺せなかったという事実に、何か作り手のメッセージを感じます。』
2015-08-31 21:53:32
a crawler
@a_chromed
＞『狂気と暴力の世界にあってもなお、（不気味ですらあるような）強い力を持ち続ける「知」。その表象としてのミス・ギディの存在に、ジョージ・ミラー監督の「知性」に対する深い信頼（と畏怖）を見て取ることができるように思います。』
2015-08-31 21:54:25
a crawler
@a_chromed
＞『本書でも脚本家のニコ・ラソウリスが、「この世界に少しでも健全な精神をもたらす者がいるとしたら、それは鉄馬の女たちしかいない」と宣言していました。長い時間を生きた人間そのものこそが、「知」であり「力」であるというような一貫した思想が作り手たちにあるのでしょう。』
2015-08-31 21:58:02
a crawler
@a_chromed
「知」は「力」なりっていうことであれば、イモータン・ジョーもまさしくそれを体現してたもんなあ。 知をもって人々を支配する存在として。 ただの暴力をもって圧し付けるだけの恐怖政治とは全く違うんだよな。 そこが恐ろしいところでもある
2015-08-31 22:03:35 まとめると、ジョーの5人の「子産み女たち」(Wives)の教育係を、ミス・ギディ（序盤でジョーにショットガンぷっぱなした老女）が務めていて、彼女が作中の「知」を象徴する人物ではないか？ということ。ジョーの妻たちの部屋には本や机などが揃っており、彼女たちには教育が施されていたであろうことが推察される。
また、それは恐らく「鉄馬の女たち」にも当てはまるであろうこと、そしてイモータン・ジョーもまた、「知」の力により民衆を支配していたであろうこと、が作中の描写からうかがえる。
腐れマーズ三等星
@p_pakira
そうかＦＲの老婆たちは旧世界の知を代表する存在なのか。鉄馬の女たちは人工衛星などについて知っていたし、シタデルで妻たちの部屋には本や机など勉強道具が置いてあったが、そこで教師役をしていたのは恐らくジョーの老いた妻だろう。
2015-08-31 22:18:53
a crawler
@a_chromed
@p_pakira たしかどこかのインタビュー（ニンジャのやつではない）で、ミラー監督がミス・ギディはワイブズ達の教育役で彼女達の考え方に大きな影響を与えているって話してた記憶。だから人工衛星の話にも乗れたってことらしい
2015-08-31 22:35:20
腐れマーズ三等星
@p_pakira
以前ヴァルハラやイモータンの名前、加えて外見的特徴や槍めいたものを持っていること、からＦＲにおける北欧神話との関係を考えた、ジョーは槍持つ老いた隻眼の知の神オーディンに類似していると指摘したが、ジョーは水耕栽培や宗教的統治方法などを知っているために知の独占者と言えるかもしれん
2015-08-31 22:25:25