黄昏町(九板)十七日目

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@hiiragi_r_t_d

【十七日目】 【魂8/力3/探索2】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2) #hollytk

2015-10-26 01:55:13
@hiiragi_r_t_d

「よい……しょ……っと」 わたしは壁の亀裂から外へと飛び出した。 「はぁー……」 最後にもう一度だけ花畑を振り返ってから、わたしは歩き始めた。 「今日は何に会えますかねー」 良い出会いがあるといいのですが。 01 #hollytk

2015-10-26 01:56:28
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顔を上げると、地平線の向こうまで続く道の上に誰かが立っている。 夕陽を背負った、人のシルエット。 「……?」「グルルルル……」「えっ」 目の前に、黒ずくめの少女が立っていた。鋭い目が、わたしを睨み付ける。 少女が、右腕を振りかぶる。その腕には、硬そうな鱗。 02 #hollytk

2015-10-26 01:58:31
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「この……っ」 わたしは額の眼を見開く。わたしの顔を睨み付ける少女の身体が、硬直した。 「……ふう」 危ないところだった。わたしは硬直した少女を押し倒し、馬乗りになって首に手をかける。 「喋れますよね。名乗ってもらっていいですか?」 03 #hollytk

2015-10-26 02:00:10
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少女はしばらく悔しそうに唇を噛んでいたが、しぶしぶ口を開いた。 「……ひかみ。アタシは緋上だ。」 「緋上さん。どうしてわたしを襲ってきたんですか?」 緋上さんは唇の端を釣り上げて笑う。 「ここで人間を殺すのに理由がいるのかよ?ほら、さっさと殺せ」 04 #hollytk

2015-10-26 02:02:12
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わたしは首に添えた手に力を込めようとして……やめた。 「あぁ?テメェ、殺しは初めてか?」 「確かに、生身の人間を殺すのは初めてです。でも、それが理由ではないですよ?」 「はぁ?」 「緋上さん。少し、お話ししませんか?」 「……は?」 05 #hollytk

2015-10-26 02:04:31
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「同じような境遇の女の子に会ったのは初めてなんですよね」 「……この金縛りを解いてくれたら、考えてやるよ」 「はい」 額の眼を閉じる。緋上さんが呆れたように肩を竦めた後、位置を入れ替えてわたしを押し倒すと馬乗りになった。 「こうなるとは思わなかったのか?」 06 #hollytk

2015-10-26 02:06:23
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「いやまあ、別にいいですよ。殺したければ殺せば」 わたしは鱗に覆われた緋上さんの右腕を掴み、自らの首に添える。 「この鱗をくれるなら、ですけれどね」 「……アンタ、変わってるな」 「そうですか?」 「普通はな、死ぬのが嫌だって泣き叫ぶもんだぜ」 07 #hollytk

2015-10-26 02:08:31
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「わたしはね、緋上さん。強くなりたいんですよ」 わたしは身体を起こし、緋上さんの顔を見詰める。 「強くなるためなら、死んでも構わない。緋上さんは違うんですか?」 「アタシは殺したいだけだ。クソッタレな奴をな」 08 #hollytk

2015-10-26 02:10:25
@hiiragi_r_t_d

緋上さんの鋭い目が、さらに鋭く細められる。 「この町の外に、殺したい奴がいるんだ。出口が見つかるまでは練習中ってわけさ」 「へー。頑張って下さいねー」 「コイツ……」 まあ、わたしには関係ない話ですし。 それよりも。 「……出口?」 09 #hollytk

2015-10-26 02:12:36
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緋上さんがニヤリと笑う。 「なんだ、知らねえのか?この町にはな、出口があるんだぜ」 「ふむふむ。で、何処にあるんですか?」 「それが分かったら苦労はしねえっつーの。見つけた奴はそこから出ていっちまうし」 「確かに」 まあ、わたしは出る気にはなれませんが。 10 #hollytk

2015-10-26 02:14:25
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「他にも教えてくださいよ、この町の事」 「……ったく、仕方ねえな。話してやるからあっち行こうぜ」 緋上さんは立ち上がり、わたしに手を貸して立ち上がらせた。 「ありがとうございます」 わたしは服の埃を払いながら、緋上さんの異形を観察する。 11 #hollytk

2015-10-26 02:16:32
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わたしの前を歩く緋上さんの異形は、見える範囲では二つ。 右腕を覆い、ブレザーの袖をボロボロに破っている鱗。タートルネックの首元からも、チラチラと覗いている。 それから、ダチョウのように伸びた脚。膝から下が分厚い皮膚に覆われ、長く伸びた三本の指で歩いている。 12 #hollytk

2015-10-26 02:18:48
@hiiragi_r_t_d

「その足、速いんですね。さっきは驚いてしまいました」 緋上さんは肩を竦める。 「金縛りされちゃあ意味ねえけどな」 「まあ、そうなんですけど」 目を睨まれていなければ、金縛りは失敗していただろう。……教えないけど。 「よし、ここら辺でいいだろ。適当に座れや」 13 #hollytk

2015-10-26 02:20:19
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わたしと緋上さんは路肩のブロックに腰掛け、情報交換をした。 三角座りのわたしからは病院について。大きく脚を投げ出して座る緋上さんからは、町と異形の仕組みについて。 「そういえば、そのブレザーって制服ですよね。何年生ですか?」 「アタシは高三だ。テメエは?」 14 #hollytk

2015-10-26 02:22:29
@hiiragi_r_t_d

わたしは白いセーラー服の胸元に結んだ、黒いスカーフを弄びながら答える。 「わたしは高二です。なので後輩ですね」 「ふぅーん。黒いスカーフなんて珍しいな。どこの高校?」 「私立千籾高校。センパイの真っ黒なブレザーよりは珍しくないんじゃないですか?」 15 #hollytk

2015-10-26 02:24:48
@hiiragi_r_t_d

「待て待て、センパイはやめろ!アタシの事は緋上でいいぜ」 「分かりました。緋上……さん」 「さん付けも無しな!」 緋上さんは鬼の首を取ったようにニヤニヤと笑っている。 「緋上……緋上。……満足ですか?」 「おう!耳真っ赤だぜ!」 「うるさいですね!」 16 #hollytk

2015-10-26 02:26:12
@hiiragi_r_t_d

さてと、と緋上が立ち上がる。ズボンの砂埃を払いながら、何でもないように言う。 「そろそろ夕陽が沈む。その眼で殺してくれよ」 わたしも立ち上がり、スカートの砂埃を払う。 「いいですよ」 この眼は強い異形だと、緋上は言っていた。彼女の目的にも、きっと役に立つ。 17 #hollytk

2015-10-26 02:28:18
@hiiragi_r_t_d

「……また、会えますか?」 「今度はアタシが勝つ。覚えとけよ?」 「わたしも強くなりますから。負けませんよ?」 わたしと緋上は笑みを交わした。 額の眼が開く。緋上の身体が、不自然に硬直する。 「それでは、さようなら。ああ、あと」 18 #hollytk

2015-10-26 02:30:42
@hiiragi_r_t_d

「わたしが友達を呼び捨てにしたの、緋上が初めてなんですよ?また会いましょうね」 緋上が何か言い出す前に、わたしは彼女を終わらせた。 黒ずくめの身体がアスファルトの路面へと仰向けに倒れ込む。 その顔は、楽しそうに笑っていた。 19 #hollytk

2015-10-26 02:32:36
@hiiragi_r_t_d

──────── 【十七日目】 【生存】 【魂+1】 【魂9/力3/探索2】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2) 20 #hollytk

2015-10-26 02:36:20
@hiiragi_r_t_d

[町]「グルルルル…」低い呻り声。瞬きの間に、その影は君の目の前に迫った。速い。《力3以上で勝利【魂+1】、力2以下で死亡【魂-1/異形『獣足(探索+1、力+1)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-10-26 02:36:32