就活生高尾の不実

欲張った結果がコレか。
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就活生高尾bot @Entry4you

あと何回だ? カレンダーを見るのが怖い。 時計を見るのが怖い。 一週間が早い。 一日が早い。 一時間が早い。 一分一秒が怖い。 明日の予定を確認する家族からのメッセージ。いやでも残りの時間を意識する。 オレはあと3時間で22歳になる。 真ちゃんとバスケできるのはあと何回だ?

2015-11-20 21:03:21
就活生高尾bot @Entry4you

今日も拍子抜けするほどいつも通り。オレん中だけ焦りと絶望が募ってく。ボロボロの体を横たえて、緑間のシュート練習をただ見ていた。…49、50。 「帰るぞ、高尾」 オレ達は7年前から止まってる。 「うん」 オレ達は7年前から止めている。時間の流れも周囲の変化にも気付かないフリをして。

2015-11-20 21:06:33
就活生高尾bot @Entry4you

体育館を後にする。駐車場の冷えた外気が頬を撫でた。一日が終わる。 「もうすぐ引退だね」 「ああ」 「もちっと何かねーの」 「最後まで人事を尽くす、それだけだ」 「ま・どーせ勝つしな」 「高尾」 真ちゃんに睨まれた。しかめた顔は嫌悪半分、痛心半分ってとこか。 「ホントのことじゃん」

2015-11-20 21:10:11
就活生高尾bot @Entry4you

日本でプレイしてるキセキの世代は緑間だけ。誰も真ちゃんに勝てない。毎年ウチの大学の独り勝ち。 「真ちゃんはさ、」 帝光の再来、なんて言う人もいる。 「やっぱ慣れてんの、こーゆー状況」 「高尾」 助手席のドアを開けてエース様を中へ通す。 「オレはもうワケわかんなくなっちゃってんの」

2015-11-20 21:15:05
就活生高尾bot @Entry4you

「何のためにバスケやってんのか、とか。今までの練習は何だったんだろ、とか。オレ必要なんかな、とか」 キーをを回しつつ、横目で隣の存在を確かめる。相棒は溜息をつきながらメガネを押し上げた。 「何が言いたいのだよ。20文字以内で簡潔に纏めろ」 「今日…じゃねー、明日か。真ちゃん、」

2015-11-20 21:20:09
就活生高尾bot @Entry4you

「0時ぴったしに誕生日祝って♡」 真ちゃんは目をぱちくりさせたあと、妙に神妙な面持ちで頷いた。

2015-11-20 21:25:04

 
 
 

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就活生高尾bot @Entry4you

5分前行動。真ちゃんらしい。オレは1コールで電話を取った。 「マジでかかってきたしw」 「祝えと言ったのはお前だろう。さっさと降りてこい、寒いのだよ!」 「・・・へ!?」 もしやとカーテンを開けると、家の前にナイトキャップを被った大男が立っていた。 もちろん、緑間真太郎君である。

2015-11-20 23:55:06
就活生高尾bot @Entry4you

「おめでとう」 ムスッとした顔で祝辞が贈られた。真ちゃん最高。時計を見ながら律儀に0時ピッタリに言うのも、眠くてフキゲンなのも、パジャマ姿なのも、全部ツボ。笑い止まんねぇ。 「電話で良かったのにw」 「なら最初からそう言うのだよ」 「わざわざ来てくれちゃうとかフツー思わねーよw」

2015-11-21 00:00:25
就活生高尾bot @Entry4you

「あー、笑った。笑った。最高のプレゼントだわ。あんがと。元気出た」 明日も練習だ。じゃあ、と上げた片手を掴まれた。 「待て。今日のお前は…いや、もっと前からか。様子がおかしかったのだよ」 「し、真ちゃん!寒ぃし話なら明日に…」 緑間は舌打ちしながら脱いだコートをオレの頭に被せた。

2015-11-21 00:05:02
就活生高尾bot @Entry4you

「寝間着姿で出てくるからだ、バカめ」 観念して高そうなコートにくるまる。 「引退さびしーなーって…そんだけ」 「高尾、オレもお前と同じチームに行くと決めた」 長年付き合ってんのに緑間とは上手く会話のキャッチボールができない。パスなら通んのに…って、え? 今何つったよ!?

2015-11-21 00:10:05
就活生高尾bot @Entry4you

「聞いてねーよ!?」 「今、初めて言ったからな。本当は明日言う予定だったが、お前の様子が変だったから急遽予定を早めたのだよ」 進路を踏み外したエース様はなぜかドヤ顔だ。 「お前っ…アメリカのチームとか、もっとすげーとこからスカウト来てたよな!?」 「断ったのだよ」 「はぁ!?」

2015-11-21 00:15:08
就活生高尾bot @Entry4you

マジかよ… こりゃ大学でバスケやめるつもりなこと言うしかねーわ。ちょ、ちょい待ってくれよ! オレにも心の準備っつーもんが… 頭を抱えてうんうん唸っても言葉が見つかんねぇ。 「高尾、」 「今度は何だよ!! (今キャパオーバーなんですけど!)」 「“オレは必要なのか”と言ったな」

2015-11-21 00:20:07
就活生高尾bot @Entry4you

「お前は必要だ」 真ちゃんはオレの前に左手を差し出した。 「これからも共に人事を尽くしてくれるか」

2015-11-21 00:25:02
就活生高尾bot @Entry4you

無理だ。不可能でしょ。こんなん絶対ムリ。ズリーよ、真ちゃん。 言えない。言えるわけがない。 「ははっ…マジ最高のプレゼントだわ」 嘘でもいいから、一瞬でもいいから、欲しい。その手触りを確かめたい。 「ありがとう、真ちゃん」 いけないと思いながら、オレは相棒の手を握ってしまった。

2015-11-21 00:30:08

 
 
 

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